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長身イケメン登場
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「いやいや、まずいよ、それは……。男ひとりの部屋に泊まるなんてさ。何処か近くのホテルでも」
「えー、だって私、そんなにお金持ってきてないし、祐二さん従兄じゃないですか」
困った事を言うと、祐二は額に手を当てて項垂れる。この無防備な顔を見ると、なんとも強くは言えなくて。
暫く二人の間に沈黙が続き、ふと顔を上げた祐二は、おもむろに携帯を出すと電話を掛け始めた。
「あ、すみません、奥村ですが。……あの、今夜泊めて貰いたい人が居るんですが。水野さん、大丈夫ですか?」
電話の相手は、祐二の先輩の水野という女性。同じ会社に勤めているが、母親の謎を探る為に力を貸してくれた人物だった。
「えーっ、何よいきなり。奥村くんの部屋に泊めてあげなよー。」
思った通りの返答に、「それが、従妹の女の子が北海道から来てて、真壁美乃利さんというのですが」と言ったところで「あ~、あの従妹さん?やだ、早く言ってよ、私会いたかったのよね。いいよいいよ、泊めてあげるから」と、明るい声で返って来た。
――ひょっとして、水野さんの好奇心に火を付けてしまったかも――
祐二は、水野に頼んだのは間違いだったか、と思ったが、この際仕方がない「すみませんが、宜しくお願いします」と頼むと、また電話すると言い携帯を閉じた。
「あの、……水野さんて?……ひょっとして祐二さんのカノジョさん?」
美乃利がおかしな事を言うので、「違う違う、会社の先輩。……あの、例の真壁のおじいさんの姉を探す時に手伝ってくれた」と言うと、あー、と納得したように頷く。
水野さんには本当に助けられた。母の葬儀の事もだし、自分の生い立ちに関わる祖父の姉が見つかったのも水野さんのお陰。ひとつ年上だが頼りになる女性だと、祐二は感謝していた。
「それじゃ、待ち合わせ場所に行く?僕も行っていいんだよね」
「はい、お願いします。」
美乃利は笑顔に戻ると立ち上がった。
祐二のマンションから出て大通りに向かうと、開けた駐車場とカラフルなのぼり旗が見えてきた。
ドラッグストアの扉付近に出入りする人を見ると、長身の男性が立っている。遠目に見ても一際大きな男は、スラッとしたスタイルの良さとシンプルなファッションで目立っていた。
「あの人ですね」
祐二は美乃利に言うと、駐車場を横切って行った。
長身の男に「すみません、佐伯さんですか?」と声を掛ける美乃利。茶髪の髪を風になびかせながら笑顔を向けると、「ああ、美乃利ちゃん?どうもどうも、凛華の兄の薫です」と、会釈をする。顔立ちのハッキリした爽やかな笑顔だった。
美乃利の後ろに居た祐二も、こんにちは、と挨拶をする。祐二もけして背が低くはないが、173センチから見ると、180センチ以上の男は見上げなければいけなかった。
「こちらは従兄の奥村祐二さんで、この近くに住んでいるんです。」と、祐二の事を紹介すると、薫の顔がパッと明るくなった。
「そうですか、近くに。……奇遇ですね。何処かで顔合わせてるかも、ですね」
薫はまじまじと祐二の顔を見ると言い、イケメンの圧にたじろぐ祐二だった。
「このドラッグストア、たまに来てますからね」
もし出会っていたら絶対覚えていそうだな、と祐二は思う。
「佐伯さん、今日はお時間頂いてすみません。早速ですが岬志保さんについて伺いたいのですが」
気が急くのか、美乃利は唐突に質問する。薫は、苦笑いしつつも祐二の方を見ながら頷いた。
「えー、だって私、そんなにお金持ってきてないし、祐二さん従兄じゃないですか」
困った事を言うと、祐二は額に手を当てて項垂れる。この無防備な顔を見ると、なんとも強くは言えなくて。
暫く二人の間に沈黙が続き、ふと顔を上げた祐二は、おもむろに携帯を出すと電話を掛け始めた。
「あ、すみません、奥村ですが。……あの、今夜泊めて貰いたい人が居るんですが。水野さん、大丈夫ですか?」
電話の相手は、祐二の先輩の水野という女性。同じ会社に勤めているが、母親の謎を探る為に力を貸してくれた人物だった。
「えーっ、何よいきなり。奥村くんの部屋に泊めてあげなよー。」
思った通りの返答に、「それが、従妹の女の子が北海道から来てて、真壁美乃利さんというのですが」と言ったところで「あ~、あの従妹さん?やだ、早く言ってよ、私会いたかったのよね。いいよいいよ、泊めてあげるから」と、明るい声で返って来た。
――ひょっとして、水野さんの好奇心に火を付けてしまったかも――
祐二は、水野に頼んだのは間違いだったか、と思ったが、この際仕方がない「すみませんが、宜しくお願いします」と頼むと、また電話すると言い携帯を閉じた。
「あの、……水野さんて?……ひょっとして祐二さんのカノジョさん?」
美乃利がおかしな事を言うので、「違う違う、会社の先輩。……あの、例の真壁のおじいさんの姉を探す時に手伝ってくれた」と言うと、あー、と納得したように頷く。
水野さんには本当に助けられた。母の葬儀の事もだし、自分の生い立ちに関わる祖父の姉が見つかったのも水野さんのお陰。ひとつ年上だが頼りになる女性だと、祐二は感謝していた。
「それじゃ、待ち合わせ場所に行く?僕も行っていいんだよね」
「はい、お願いします。」
美乃利は笑顔に戻ると立ち上がった。
祐二のマンションから出て大通りに向かうと、開けた駐車場とカラフルなのぼり旗が見えてきた。
ドラッグストアの扉付近に出入りする人を見ると、長身の男性が立っている。遠目に見ても一際大きな男は、スラッとしたスタイルの良さとシンプルなファッションで目立っていた。
「あの人ですね」
祐二は美乃利に言うと、駐車場を横切って行った。
長身の男に「すみません、佐伯さんですか?」と声を掛ける美乃利。茶髪の髪を風になびかせながら笑顔を向けると、「ああ、美乃利ちゃん?どうもどうも、凛華の兄の薫です」と、会釈をする。顔立ちのハッキリした爽やかな笑顔だった。
美乃利の後ろに居た祐二も、こんにちは、と挨拶をする。祐二もけして背が低くはないが、173センチから見ると、180センチ以上の男は見上げなければいけなかった。
「こちらは従兄の奥村祐二さんで、この近くに住んでいるんです。」と、祐二の事を紹介すると、薫の顔がパッと明るくなった。
「そうですか、近くに。……奇遇ですね。何処かで顔合わせてるかも、ですね」
薫はまじまじと祐二の顔を見ると言い、イケメンの圧にたじろぐ祐二だった。
「このドラッグストア、たまに来てますからね」
もし出会っていたら絶対覚えていそうだな、と祐二は思う。
「佐伯さん、今日はお時間頂いてすみません。早速ですが岬志保さんについて伺いたいのですが」
気が急くのか、美乃利は唐突に質問する。薫は、苦笑いしつつも祐二の方を見ながら頷いた。
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