17 / 25
心はいつも一緒...だゼ?
しおりを挟む
腰に力の入らないまま、修斗の待つ部屋に戻った俺は、「おかえり~」と明るく言われて「お、おう…」と口ごもってしまった。
歌い疲れたのか、修斗はマイクを置いてテーブルの上のメニューを見ているが、俺の方にも別のメニューを寄越すと「お腹減らない?」と聞いてくる。
「う、ウーン、、、なんか腹一杯。修斗くんたのみなよ。」
俺はさっきので、身体の熱が籠ったまま、とても食事なんか喉を通りそうにない。修斗にメニューを戻すと、椅子に座ってもたれ掛かった。
「お待たせー」
ドアが開くとアタルは平常時の顔つきで戻って来る。俺の顔は見なかったが、なんかスッキリしていた。
「アタルは何か食べる?」と修斗が聞いて、チラリとメニューを覗いたが、「いいや、まだ腹は減らない。」と言った。
俺と一緒。
「じゃあ僕は、たこ焼き頼もうっと。」
そう言ってフロントに電話を入れる修斗の見えない所で、俺はアタルと視線を交わす。
アタルが恥ずかしそうに笑みを浮かべると、俺もにやっとだらしない顔で見てしまった。
結局たこ焼きを一口ずつ貰い、一曲ずつ歌った俺とアタルは、修斗を連れて駅前のロータリー行きのバスに乗り込んだ。
帰りのバスの中では、アタルが俺の隣に座る。
言葉は発しないが、僅かに当たった腕をそのままにして、小さく躍る胸の鼓動はそっと聞かれないようにしたまま。
「じゃあ、帰るな!?」
アタルが自宅の側を通るバス乗り場を指さすと言った。
修斗は俺の肩をポンと叩くと、「今日はありがとう、楽しかったよ。また遊んで。」と言ってピンクの髪を掻き上げると笑った。
俺は二人の顔を名残惜しそうにみたが、「うん、またな。じゃあ、俺はここで...。」と、軽く手を上げて背中を向けた。
今生の別れじゃないのに、ものすごく後ろ髪を引かれる思いで駅の方に向かって歩く。
アタルが何か言うんじゃないかと思ったけど、修斗の手前もあるし、どんな言葉を掛けたらいいのか分からないんだろう。じっと耳を澄ますけど、雑踏に紛れた車の音しか聞こえて来なかった。
数時間前に来た道を戻って行く俺は、その背中に哀愁という名の重しを背負って、重い足でペダルを漕いだ。
「ただいま~、腹減ったー」
玄関を開けると声を掛けて台所へと行く。
「あら、晩ご飯も食べて来るのかと思った。電話してって言ったのに。……」
「あ、ゴメン。忘れてた。ラーメンでもいいよ俺。」
テーブルの上に乗っている漬物をパクリとつまんで言うと、母親が「ちゃんと作るわよ~。」と笑う。
すっかり忘れてた。
アタルがあんな事するから頭ン中のモノ消えちゃったんだよ。ホントにもう~
「どうだった?アタルくん変わりなかった?彼女出来たって言ってなかった?」
矢継ぎ早に母親が質問して来ると、急に現実に引き戻される気がする。
アタルは男で、カッコよくて優しい。とっくの昔にカノジョがいてもおかしくない。なのに、俺なんかの事が好きだと言い、あんな事まで...
「先にシャワーしてきていい?」
「ええ、その間にご飯作っておくから。」
台所を後にして風呂場へ向かうと、洗面所の鏡の前に立ち自分の口元を見る。アタルの口の中に俺のが……
あんな事、、、
思い出したら堪らなくなる。
俺もアタルに触りたかった。
心は近くにあるのに、身体が遠いって...
なんか切ないな。
歌い疲れたのか、修斗はマイクを置いてテーブルの上のメニューを見ているが、俺の方にも別のメニューを寄越すと「お腹減らない?」と聞いてくる。
「う、ウーン、、、なんか腹一杯。修斗くんたのみなよ。」
俺はさっきので、身体の熱が籠ったまま、とても食事なんか喉を通りそうにない。修斗にメニューを戻すと、椅子に座ってもたれ掛かった。
「お待たせー」
ドアが開くとアタルは平常時の顔つきで戻って来る。俺の顔は見なかったが、なんかスッキリしていた。
「アタルは何か食べる?」と修斗が聞いて、チラリとメニューを覗いたが、「いいや、まだ腹は減らない。」と言った。
俺と一緒。
「じゃあ僕は、たこ焼き頼もうっと。」
そう言ってフロントに電話を入れる修斗の見えない所で、俺はアタルと視線を交わす。
アタルが恥ずかしそうに笑みを浮かべると、俺もにやっとだらしない顔で見てしまった。
結局たこ焼きを一口ずつ貰い、一曲ずつ歌った俺とアタルは、修斗を連れて駅前のロータリー行きのバスに乗り込んだ。
帰りのバスの中では、アタルが俺の隣に座る。
言葉は発しないが、僅かに当たった腕をそのままにして、小さく躍る胸の鼓動はそっと聞かれないようにしたまま。
「じゃあ、帰るな!?」
アタルが自宅の側を通るバス乗り場を指さすと言った。
修斗は俺の肩をポンと叩くと、「今日はありがとう、楽しかったよ。また遊んで。」と言ってピンクの髪を掻き上げると笑った。
俺は二人の顔を名残惜しそうにみたが、「うん、またな。じゃあ、俺はここで...。」と、軽く手を上げて背中を向けた。
今生の別れじゃないのに、ものすごく後ろ髪を引かれる思いで駅の方に向かって歩く。
アタルが何か言うんじゃないかと思ったけど、修斗の手前もあるし、どんな言葉を掛けたらいいのか分からないんだろう。じっと耳を澄ますけど、雑踏に紛れた車の音しか聞こえて来なかった。
数時間前に来た道を戻って行く俺は、その背中に哀愁という名の重しを背負って、重い足でペダルを漕いだ。
「ただいま~、腹減ったー」
玄関を開けると声を掛けて台所へと行く。
「あら、晩ご飯も食べて来るのかと思った。電話してって言ったのに。……」
「あ、ゴメン。忘れてた。ラーメンでもいいよ俺。」
テーブルの上に乗っている漬物をパクリとつまんで言うと、母親が「ちゃんと作るわよ~。」と笑う。
すっかり忘れてた。
アタルがあんな事するから頭ン中のモノ消えちゃったんだよ。ホントにもう~
「どうだった?アタルくん変わりなかった?彼女出来たって言ってなかった?」
矢継ぎ早に母親が質問して来ると、急に現実に引き戻される気がする。
アタルは男で、カッコよくて優しい。とっくの昔にカノジョがいてもおかしくない。なのに、俺なんかの事が好きだと言い、あんな事まで...
「先にシャワーしてきていい?」
「ええ、その間にご飯作っておくから。」
台所を後にして風呂場へ向かうと、洗面所の鏡の前に立ち自分の口元を見る。アタルの口の中に俺のが……
あんな事、、、
思い出したら堪らなくなる。
俺もアタルに触りたかった。
心は近くにあるのに、身体が遠いって...
なんか切ないな。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル
こじらせた処女
BL
とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。
若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる