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心はいつも一緒...だゼ?

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腰に力の入らないまま、修斗の待つ部屋に戻った俺は、「おかえり~」と明るく言われて「お、おう…」と口ごもってしまった。

歌い疲れたのか、修斗はマイクを置いてテーブルの上のメニューを見ているが、俺の方にも別のメニューを寄越すと「お腹減らない?」と聞いてくる。

「う、ウーン、、、なんか腹一杯。修斗くんたのみなよ。」
俺はさっきので、身体の熱が籠ったまま、とても食事なんか喉を通りそうにない。修斗にメニューを戻すと、椅子に座ってもたれ掛かった。

「お待たせー」 
ドアが開くとアタルは平常時の顔つきで戻って来る。俺の顔は見なかったが、なんかスッキリしていた。

「アタルは何か食べる?」と修斗が聞いて、チラリとメニューを覗いたが、「いいや、まだ腹は減らない。」と言った。

俺と一緒。

「じゃあ僕は、たこ焼き頼もうっと。」
そう言ってフロントに電話を入れる修斗の見えない所で、俺はアタルと視線を交わす。
アタルが恥ずかしそうに笑みを浮かべると、俺もにやっとだらしない顔で見てしまった。



結局たこ焼きを一口ずつ貰い、一曲ずつ歌った俺とアタルは、修斗を連れて駅前のロータリー行きのバスに乗り込んだ。

帰りのバスの中では、アタルが俺の隣に座る。
言葉は発しないが、僅かに当たった腕をそのままにして、小さく躍る胸の鼓動はそっと聞かれないようにしたまま。


「じゃあ、帰るな!?」
アタルが自宅の側を通るバス乗り場を指さすと言った。
修斗は俺の肩をポンと叩くと、「今日はありがとう、楽しかったよ。また遊んで。」と言ってピンクの髪を掻き上げると笑った。

俺は二人の顔を名残惜しそうにみたが、「うん、またな。じゃあ、俺はここで...。」と、軽く手を上げて背中を向けた。

今生の別れじゃないのに、ものすごく後ろ髪を引かれる思いで駅の方に向かって歩く。

アタルが何か言うんじゃないかと思ったけど、修斗の手前もあるし、どんな言葉を掛けたらいいのか分からないんだろう。じっと耳を澄ますけど、雑踏に紛れた車の音しか聞こえて来なかった。


数時間前に来た道を戻って行く俺は、その背中に哀愁という名の重しを背負って、重い足でペダルを漕いだ。


「ただいま~、腹減ったー」
玄関を開けると声を掛けて台所へと行く。

「あら、晩ご飯も食べて来るのかと思った。電話してって言ったのに。……」

「あ、ゴメン。忘れてた。ラーメンでもいいよ俺。」
テーブルの上に乗っている漬物をパクリとつまんで言うと、母親が「ちゃんと作るわよ~。」と笑う。

すっかり忘れてた。
アタルがあんな事するから頭ン中のモノ消えちゃったんだよ。ホントにもう~

「どうだった?アタルくん変わりなかった?彼女出来たって言ってなかった?」
矢継ぎ早に母親が質問して来ると、急に現実に引き戻される気がする。

アタルは男で、カッコよくて優しい。とっくの昔にカノジョがいてもおかしくない。なのに、俺なんかの事が好きだと言い、あんな事まで...


「先にシャワーしてきていい?」
「ええ、その間にご飯作っておくから。」

台所を後にして風呂場へ向かうと、洗面所の鏡の前に立ち自分の口元を見る。アタルの口の中に俺のが……

あんな事、、、

思い出したら堪らなくなる。
俺もアタルに触りたかった。

心は近くにあるのに、身体が遠いって...
なんか切ないな。


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