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ライバルは、男だゼ

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どんより曇った空は、周りの景色を暗くする。そんな空を眺めながらも、何故か俺の気分だけは晴れていた。
アタルが帰ってくるという日は、バイトも休みにしてもらい、店長の無言の圧力にも負けず今日という日を迎えた。

「ホントに仲がいいのねぇ。先月も会ったばかりでしょ!? アタル君、東京で彼女とかいないのかしら。……ねぇ!?」
背後で、母親が洗濯物を畳みながら言うが、仲のいいという言葉を別の意味に受け止めている俺は、自分の顔が赤くならない様に外に目をやって誤魔化した。

庭の紫陽花も普段なら気にしないのに、今日ばかりは光って見える。

「アタルは勉強大変なんだよ。実習もあるし、美容院のバイトも始めるって言ってた。」
俺が母親に言うと、「そうなんだ~」と納得する。
アタルは俺が好きなんだよ。なんて口が裂けても言えないが、この間の事で俺たちは両想いなんだと分かって、気持ち的には付き合っている事になる。ただ、普通の男女の遠距離恋愛とは違う様な気もするが。


暫くするとメールが来て、駅で待ち合わせをする事になった。何となく気分がソワソワして落ち着かない。遠恋の奴らの気持ちが何となく分かるような気がして、胸がキュウンと疼く。

「昼はアタルと食うから、もしかしたら晩メシも食って来るかも。」
「分かったわ、晩は早めに連絡してね。支度があるから。」

「うん、じゃあ行って来る。」

母親にそう言うと、オレは玄関から出て自転車に跨る。
駅で待ち合わせ。そう思ったら、アタルが東京へ行く日の場面が甦り、少しだけ切ない気持ちになった。

あの時、俺が駅に行っていなければ、二度と会うことが出来なくなってたかもしれない。アタルが俺を好きだと言って、俺はなんにも答えることが出来なかった。けど、東京へ遊びに来いと言われ、あんな事になって.....

風を受け、そんな事を考えながら自転車を漕いでいたら、あっという間に駅に着く。

土曜日の昼前だから、田舎でも人通りが多く、待ち合わせ場所にいるアタルの姿を探す。

あ、っと、後ろ姿に気付いて、声を掛けようとしたら、アタルの体の陰からピンク色の髪をした子が現れた。

俺がまじまじと見ていると、その子も俺に気付いたみたいで、アタルの顔を覗くと指でこちらの方を指して知らせていた。

振り向くアタル。

一瞬目が合うと、顔が綻ぶのが分かる。


俺に近寄ると、「久しぶり」と言ったが、何故かピンクの髪をした子も隣りに来て。

「アタルのボーイフレンドの修斗です。よろしく」と、俺に微笑んだ。



………ボーイフレンド!?

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