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切ないゼ.....

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五月も終わるというのに、毎日をどう過ごしていたのか分からない程、俺はアタルの事が気になっていた。寝る頃になると、余計にアイツの顔が浮かんでは消えて....。

  顔が浮かんでくると俺の下腹部がモヤッとしてきて.....重症だと思う。
あの日以来、頭も身体も可笑しくなっている。



* * * 
大学の授業が終わり、コンビニのバイトを始めた俺だったが、ボンヤリする事もあってオーナーから睨まれている。それもこれも、アタルのせいだ。

あんな事するから・・・
最近は男が近寄って来る度に、思考停止になる様で。きっとあの日の記憶が俺にそうさせるんだよ。


今日なんて、バイト仲間の石井くんが俺の隣で補充しているだけで、緊張しちまった。
潰した段ボールを渡す時、何気なく触れた親指に電気が走った。様な気がして、飛び退いたら…。
あっちもビックリして、変な空気になっちゃって.....

もう、全部アタルが悪いんだ!


「勇人、電話!! 携帯の電源入っていないそうよ!」
2階の自分の部屋で、アタルに腹を立てながら机に向かっていたら、下で母親が叫んだ。

「はあ!?家電に掛かってんの?もう、誰だよ!」と、仕方なく降りて行けば、「ほら、アタルくん。」と言って受話器を渡された。

_ え?アタル~  

俺の気持ちが通じたのか。気にしてばかりで声を聞いていなかったし…余計にアタルが恋しくなった。本当は怒っている訳じゃなくて、会いたかったのかも。

「はい、俺。」

「あ、勇人元気?携帯の電源入れとけよな!恥ずかしいだろ、家電なんか.....」

久しぶりのアタルの声。
ちょっとドキリとした。が、わざと「なんか用か?」って言ってしまう。

「あのさ、次の土曜日に帰るから、会える?」
弾ける様な声が響いて、俺の胸はドクンと鳴った。

アタルが帰ってくる!

そんな事が凄く嬉しい俺って....




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