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ウケるゼ
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アタルの作るオムライスは、玉ねぎ少なめでマッシュルームが入っていて、うちの母親のとは違っていたが、味は凄く美味しかった。
ケチャップのいい薫りが狭い部屋に充満すると、さらに満腹になる。
「はぁ~食ったな~。ごちそうさん。」
食べ終わった皿の上で、両手を合わせてアタルに言うと、ニコニコした顔でこっちを見る。
「どうだ?」
「すっげぇ美味かった。」
そう言ってやると、満面の笑みを浮かべる。
「この後、どっか行く?行きたい所とか・・・」
アタルに言われて困った。
俺って東京に対する憧れとかなくて、今まで来ることすら想像していなかったから。ずっと地元で暮らしていくものだと思ってたんだ。
「・・・う~ん」と悩んでいると、「まあ、今日は疲れただろうし、この辺散歩がてら買い出し行って良しにするか?」と言われた。
「そうだな、アタルが暮らしてるこの辺を見る方が面白いかも。ここは都会っぽくないもんな。」
「だろ!?オレたちの田舎とさほど変わらないんだよな。」
そういうと食べ終わった皿を片付ける。
「あ、俺も手伝う。」と言って流しに運んだ皿を洗おうとした。
スポンジに洗剤を垂らして泡立てると、横にいたアタルが俺の袖に手を掛ける。
「・・ん?」
アタルの顔を見る。すると「袖、まくらないと濡れるから。」と言ってTシャツの袖を折ってくれた。
「・・あ、りがと・・」
ちょっとだけ照れる。
普段何気なくボディタッチはしていたが、あの告白で俺の中の何かが変わった気がする。
些細な指の触れ合いも、今は物凄く意識してしまい、どこかぎこちない。
「勇人が洗ったら、オレが拭いていくな。」
「うん」
台所で肩を並べて、二人が食器を洗う姿なんて、特におかしくないのかもしれないが、今の俺にとっては、デートするようなドキドキ感を味わってしまう。
アタルは俺に告白したことを忘れているんだろうな。
白いフキンで皿を磨く姿を見ては、ちょっと寂しくなった。何かを期待していた訳じゃないけど、なんて言うか・・・・・
「ここから歩いて10分ぐらいの所に商店街あるから、そこで晩の食材買う。あ、途中に公園あるからさぁ、アイスでも買って食おうぜ。」
アタルが嬉しそうに言うから、俺のモヤッとした気持ちは飛んだ。
暫くは部屋の中で話していた俺達。
大学の事とか、地元にいる同級生の話とか・・・
「そういえば、あいつ、会った?」
胡座をかいてのけ反る様に聞くと「あいつって?」と不思議そうな顔をした。
「菊地、菊地 優香だよ。服飾の専門学校へ行くって・・・アタルの学校と近いって喜んでた。」
「ああ、・・・菊地な、・・・メールもらった。けど、会ってないよ。」
コタツ兼勉強机を抱える様にして、俺を見ると言ったが、なんとなく違和感があって。
「そういえばアイツ、アタルの事狙ってたんだよな。東京に行くの楽しみにしてたもん。」
要らぬ世話かも知れないけど、一応言っておく。
あんまり好きな女じゃないけど、スタイルはいいし、アタルとはお似合いかも。
「菊地の事は、・・・いいから、お前の方はどうなんだよ。彼女とか、出来た?」
「・・・え?」
少し間があいた。
さっきも思ったけど、やはりアタルは俺に告白したことを忘れている。
「ンなの、出来るわけねぇじゃん。まだ入学して一月足らずでさぁ。・・・お前は?モテてんだろ、相変わらず。」
「・・・・まさか。」
「そお?」
「東京にどんだけのイケメンが要ると思ってるんだよ。オレなんて田舎でしかモテないっての!」
笑いながら言うアタルに、自分でもイケメンって思ってたんだとわかった俺だったが、互いに女の子の話をするあたり、完全に俺の事は頭に無くなったと思った。
少しの自虐とハニカミと、ちょっと寂しい気持ちを持ちながら、アタルと外に出る。
頬に当たる風は、ここも田舎も変わらないのに、あの頃とは気持ちが変わっていると思ったら、俺の中でアタルの事が'好き'だという気持ちに気づいて、ひとりでウケた。
ケチャップのいい薫りが狭い部屋に充満すると、さらに満腹になる。
「はぁ~食ったな~。ごちそうさん。」
食べ終わった皿の上で、両手を合わせてアタルに言うと、ニコニコした顔でこっちを見る。
「どうだ?」
「すっげぇ美味かった。」
そう言ってやると、満面の笑みを浮かべる。
「この後、どっか行く?行きたい所とか・・・」
アタルに言われて困った。
俺って東京に対する憧れとかなくて、今まで来ることすら想像していなかったから。ずっと地元で暮らしていくものだと思ってたんだ。
「・・・う~ん」と悩んでいると、「まあ、今日は疲れただろうし、この辺散歩がてら買い出し行って良しにするか?」と言われた。
「そうだな、アタルが暮らしてるこの辺を見る方が面白いかも。ここは都会っぽくないもんな。」
「だろ!?オレたちの田舎とさほど変わらないんだよな。」
そういうと食べ終わった皿を片付ける。
「あ、俺も手伝う。」と言って流しに運んだ皿を洗おうとした。
スポンジに洗剤を垂らして泡立てると、横にいたアタルが俺の袖に手を掛ける。
「・・ん?」
アタルの顔を見る。すると「袖、まくらないと濡れるから。」と言ってTシャツの袖を折ってくれた。
「・・あ、りがと・・」
ちょっとだけ照れる。
普段何気なくボディタッチはしていたが、あの告白で俺の中の何かが変わった気がする。
些細な指の触れ合いも、今は物凄く意識してしまい、どこかぎこちない。
「勇人が洗ったら、オレが拭いていくな。」
「うん」
台所で肩を並べて、二人が食器を洗う姿なんて、特におかしくないのかもしれないが、今の俺にとっては、デートするようなドキドキ感を味わってしまう。
アタルは俺に告白したことを忘れているんだろうな。
白いフキンで皿を磨く姿を見ては、ちょっと寂しくなった。何かを期待していた訳じゃないけど、なんて言うか・・・・・
「ここから歩いて10分ぐらいの所に商店街あるから、そこで晩の食材買う。あ、途中に公園あるからさぁ、アイスでも買って食おうぜ。」
アタルが嬉しそうに言うから、俺のモヤッとした気持ちは飛んだ。
暫くは部屋の中で話していた俺達。
大学の事とか、地元にいる同級生の話とか・・・
「そういえば、あいつ、会った?」
胡座をかいてのけ反る様に聞くと「あいつって?」と不思議そうな顔をした。
「菊地、菊地 優香だよ。服飾の専門学校へ行くって・・・アタルの学校と近いって喜んでた。」
「ああ、・・・菊地な、・・・メールもらった。けど、会ってないよ。」
コタツ兼勉強机を抱える様にして、俺を見ると言ったが、なんとなく違和感があって。
「そういえばアイツ、アタルの事狙ってたんだよな。東京に行くの楽しみにしてたもん。」
要らぬ世話かも知れないけど、一応言っておく。
あんまり好きな女じゃないけど、スタイルはいいし、アタルとはお似合いかも。
「菊地の事は、・・・いいから、お前の方はどうなんだよ。彼女とか、出来た?」
「・・・え?」
少し間があいた。
さっきも思ったけど、やはりアタルは俺に告白したことを忘れている。
「ンなの、出来るわけねぇじゃん。まだ入学して一月足らずでさぁ。・・・お前は?モテてんだろ、相変わらず。」
「・・・・まさか。」
「そお?」
「東京にどんだけのイケメンが要ると思ってるんだよ。オレなんて田舎でしかモテないっての!」
笑いながら言うアタルに、自分でもイケメンって思ってたんだとわかった俺だったが、互いに女の子の話をするあたり、完全に俺の事は頭に無くなったと思った。
少しの自虐とハニカミと、ちょっと寂しい気持ちを持ちながら、アタルと外に出る。
頬に当たる風は、ここも田舎も変わらないのに、あの頃とは気持ちが変わっていると思ったら、俺の中でアタルの事が'好き'だという気持ちに気づいて、ひとりでウケた。
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