[ジセイタイになった俺]

itti(イッチ)

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17 弱まる磁力 1-17

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  風呂から出てくると、携帯電話の着信メロディが流れていて、腰にバスタオル一枚で慌てて出る俺。

「はい、俺。」

「あ、風呂だった?」

「うん、今出たところ。」

「そうか、ちゃんと頭拭けよ!?」

「ああ、拭いてる、、、ってか、子供か!…恵は?もう風呂はいった?」

「入ったよ。で、今から寝ようと思ってた。真琴がメールくれてたから、珍しいなって思ったんだ。仕事でドジったんじゃないのかと思ってさ~。」

恵の声が俺の耳に心地よい振動をくれて、ずっと聴いていたい心境だった。ドジった、なんて変な事心配させたのか…

「バカだな~、俺がやらかす訳ないだろ!明日も早いから、お前も寝ろよ。」

「うん、そうする。じゃあな、おやすみ。」

「おやすみ。」



暫くスマホの画面に眼を落とす。
離れる度に思う事。俺と恵を繋いでいるものは何だ!?
愛、だと言いたいけれど………

Tシャツと下穿きで、ベッドに潜り込んだ。
キッチリとメイクされたベッドシーツが身体に馴染むまでの間、資料に目を通す。
枕を抱えてうつ伏せで見ていると、自然に瞼が重くなり、知らないうちに意識は遠のいた。



朝、バイキングの朝食を取りながら、今頃神谷くんは豪華な朝メシを食っているんだろうな、なんてぼんやりと想像する。
この仕事をやっている限り、大抵はこのパターン。豪華な朝メシには縁が無い。


午前のうちに2社を廻り、あとは午後もう1社廻れば東京に戻れる。

昼は定食屋で済ませ、担当者の時間に合わせて少しカフェで時間を潰す。
場所柄なのか、若い大学生風の客も多くて、俺は思わず好みのタイプを探してしまう。

テーブルに置かれたノートと教科書で、レポートに追われる学生か、と眼をやれば、その子も俺の視線が気になったのかこちらを見た。

染めた事の無い黒髪は、綺麗に天使の輪が現れている。太い眉も手入れはしていなさそうで、素朴な、それでいて顔立ちはカッコイイ。
鼻筋が通り、切れ長の目が印象的。俺が大学生なら声をかけるのにな…、なんて。

ほんの少しの間、絡んだ視線が俺にそんな事を想像させた。







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