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52 何度でも引き合うよ 11
しおりを挟むくちづけを交わしながら互いのものを扱き合うと、もうそれだけで満たされた気になる。
額を擦りつけ、手の動きが更に激しくなると高まりは絶頂に達した。くぅーっと唸ったかと思えば、全身が痺れる様にピクピクと痙攣し、腹の上に散った白濁を目にしてホッとした表情を浮かべた。
「はは、.....なんか嬉しい。」
「え?」
「恵がこうして俺の隣に居るって事が。恵はもっとシたいだろうけど、準備とかしてないし.....。」
「そんな事.....、僕は真琴とベッドで横たわるだけでもいいんだ。それだけでも幸せを感じるよ。」
「うん、....ありがとう。俺も、だけど.......。」
「僕らはまだまだ一緒に居られるんだ。ゆっくり進もうよ。」
うん、と頷くと恵の頬にくちびるを当てた。
それからゆっくり上体を起こし、互いの残骸を拭い去る。少しだけ気恥ずかしい。電気が煌々とついた部屋で、こんなに感情に任せて抱き合うなんて、年甲斐もないなと思いながらも幸せを噛み締めた。
「さ、、晩飯にしようか?!」
「そうだな。」
ついでにジャージに着替えると、二人してキッチンへと戻って行く。
時々顔を見合わせては微笑みあって、幸せな気分のまま料理が出来上がるとそれをテーブルに並べた。
簡単な料理。それでも二人で食べれば美味しいご馳走になる。
「ん、美味いよ、コレ。」
俺が目を見開いて恵を見つめる。お世辞じゃなくて、本当に美味しかった。
「良かった。真琴が気に入ってくれて....。実は料理をするのは久々で。」
恵は少しだけ俯き加減に云った。
離れている間何処に居たのか、俺は訊いてはいなかった。
「恵の事だから、友達や先輩のところに居るんだと思ってたんだ。本当は探し回りたかったけど、でも、俺も勇気がなくて....。どこで過ごしてたんだ?」
「......実は後輩の家に。大学の後輩で二つ先の駅に住んでた奴がいて、丁度彼女と別れたばかりで寂しかったんだろうな。すんなり受け入れてくれた。」
そう云うと俺の目を見てバツが悪そうに笑った。
「そうか.......、じゃあ、外食してたんだ?」
「いやそれが、.....その後輩は料理人でさ。僕が出る幕なんてないんだ。それに作ろうとすると色々煩くて。きっと、そこが彼女にはウザかったんじゃないかな。僕が女の子でもそう思っちゃうよ。」
「ははは、それはちょっと可哀想だな。カレにしたらこだわりがあるんだろうに。....でもまあ、美味いものを食ってたんなら安心した。」
俺は、恵が頼ったのがその後輩で良かったと思った。他の誰かに迷惑がられてたら申し訳ない。恵が悪い訳じゃないのに。
「恵、それで、.....帰ってきてくれるんだよな?!」
確かめるように顔を覗き込んで訊く俺に、「もちろんだよ。明日後輩のところに置いてある荷物を持ってくるよ。」と云う。そして、そっと俺の手を取ると「僕はずっとここに居て良いんだよね?!」と見つめてくる。
「当たり前だよ。ここは恵と俺の家だ。どちらが欠けたってダメなんだ。だから、.......ずっとここで、俺と一緒に居て欲しい。」
......唐突に云ってしまったが、これはまるでプロポーズじゃないか?
一瞬の静まりの後で、ひとりハッとして気づいた。
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