[ジセイタイになった俺]

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43 何度でも引き合うよ 2

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 自席について、今朝は野嶋さんの顔を見ていない事に気付く。
いつもなら俺より早く席に着いていて朝の挨拶をしてくれるのに。

「おはようございます。」

「あ、おはようございます。」

野嶋さんの代わりに挨拶をくれたのは奥の席にいた佐川さん。
先週から来ている派遣の娘だった。

「野嶋さん、今日は欠勤だそうです。さっき電話がありましたけど、声が出てなくてかなりキツそうでしたね。」
そう云うと心配そうに眉を下げた。

「そうなんだ、珍しいな彼女が病欠だなんて。ここへ来て初めてかも。」
「えっ、そうなんですか?大丈夫でしょうか、ひとり暮らしだって云ってたけど・・・。」

「あぁ、・・・病院へ行けるといいが。・・・」

普段、そこに居るはずの人がいないというのは、こんなにも景色を変えてしまうものなのか。
恵が居なくなったマンションの部屋みたいだな。なんて一瞬だけ俺の意識は仕事から離れる。

「まあ、明日元気に出社してくれればいいけど。佐川さん、フォローお願いしますね。」
「あ、はい。頑張ります。」

気を取り直して目の前のパソコンを立ち上げると、先ずはメールのチェックをする。
取引先と軽くやり取りをしながら今後の打ち合わせをすると、添付ファイルを開いた。
先日の失態から、俺は念入りに取引先の状況を把握するようになった。二度とあんな思いは御免だ。それに、甘えたい気持ちを受け止めてくれる恵は俺の前から姿を消した。
とはいえ、本当は上のフロアに行けば顔を見る事も話す事も出来るんだけど・・・。
でも、アイツが時間をくれと云って、俺はそれを待つより他はなかった。

もう一度恵が俺を信用してくれるまで、男の俺の傍に居てもいいと思ってくれるまでは、じっと我慢するつもりだ。

「あ、そういえば田代さんが出社してくる前に誰か来ていましたよ。本田さんが親し気に話してましたけど、田代さんに用があったみたい。」

急に思い出したのか、佐川さんはパチンと音をたてて自分の掌を叩くと俺に云った。

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