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庇護欲
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抗うわけでも無く、かといって俺の気持ちを100パーセント受け入れてくれたのでもなく、俺の下でトンちゃんは熱い息を吐きながら身悶えている。身体に走る快感の渦に、ただ飲み込まれているだけかもしれないが、今の俺はそれで十分だった。
自分の衝動を抑えられず、相手の気持ちも何も考えず、ただ欲望に負けて身体を繋げる事だけに必死。
俺の十分滾ったものを狭い後孔に挿入して、初めこそ痛そうに顔を歪めていたのに、すっかり慣れた今は自分からいい所に当たる様に腰を振っている。その姿に、浅はかな俺は興奮を倍増させて喜んでいた。
事後は多少の申し訳なさもあり、シャワーを浴びるとしばらくは顔を見れなかった。もちろん何て言葉を掛けたらいいのか分からない。
キッチンで水を飲んでいると、トンちゃんの方から声が掛かる。
「ハルキ、……お腹減ったね?」
「……え?」
一瞬戸惑う。そんな普通の言葉が出てくるとは。俺は少し間をおいて「うん」と答えた。
すると、トンちゃんが「ご飯、食べようか。せっかくハルキが作ってくれたんだし」と云う。
「あ、……うん、いいよ」
その一言を言うと、漸くトンちゃんの表情を見る事ができた。
俺は謝る事も出来ず、かといって平気な顔も出来ない。なんとなく照れ隠しの様に「味噌汁あっためるね」と言うのがやっとだった。
食事中もごく普通の会話をする。明日の授業の話とか、夏休みに東京に戻るのか、とか。
いつの間にか、日常の空気の中に居る時間が過ぎて、気付けばもう夕日が沈む時間になっていた。
「ご飯が遅かったから、まだお腹が減らないね。ハルキは明日一限からだろ、早めにアパートに戻る?オレはちょっと仕事の準備をしたい」
「......あ、うん、そうだね。俺も腹は減ってないし。今日はもう帰るよ、トンちゃんもゆっくりしたいだろうから。......また来てもいい?」
横目でトンちゃんの顔を見ながら訊いた。
俺の言葉に、少し間を置いてから頷くと「休日、時間が取れたらね。多分平日は寝に帰って来るのがやっとだし、ハルキもバイトがあるから、あんまり無理しないで。メール、くれたら返事する」
「うん、分かった。トンちゃんも身体壊さない様に頑張って。メールするから」
玄関で見送られて、にこやかに別れると、俺はトンちゃんのマンションを後にした。
今日のバイトは休みで、アパートに帰る途中でコンビニに寄ると、夜に食べる用の弁当とお菓子やジュースを買い込む。本当に腹は減っていなくて、なんだか胸がいっぱいという感じがずっとしていた。
明日の準備だけ済ませると、ベッドに寝転んで天井を仰ぐ。
蛍光灯の光が眩しくて、掌で目を覆うと、今日のトンちゃんの姿が頭に浮かんだ。
そっと瞼を閉じて反芻する様にあの感覚を思い起こす。と、身体の奥が粟立つように身震いして、この手でトンちゃんを抱いた感触が蘇って来た。高校生の時に抱いたトンちゃんの身体が、ずっと頭の何処かに残っていたが、今はもう思い出せなくて、今日、二度目に抱いた感触が強烈過ぎて上書きされてしまった。
トンちゃんは相変わらず綺麗だった。年の差を感じさせるのはスーツ姿の時だけだ。大人で、優しい口調で、包容力があって。そんなトンちゃんも好きだが、俺の下で顔を上気させて喘いだ表情も愛おしくなる。本当は、毎日でもそんなトンちゃんを見ていたい。
自分の衝動を抑えられず、相手の気持ちも何も考えず、ただ欲望に負けて身体を繋げる事だけに必死。
俺の十分滾ったものを狭い後孔に挿入して、初めこそ痛そうに顔を歪めていたのに、すっかり慣れた今は自分からいい所に当たる様に腰を振っている。その姿に、浅はかな俺は興奮を倍増させて喜んでいた。
事後は多少の申し訳なさもあり、シャワーを浴びるとしばらくは顔を見れなかった。もちろん何て言葉を掛けたらいいのか分からない。
キッチンで水を飲んでいると、トンちゃんの方から声が掛かる。
「ハルキ、……お腹減ったね?」
「……え?」
一瞬戸惑う。そんな普通の言葉が出てくるとは。俺は少し間をおいて「うん」と答えた。
すると、トンちゃんが「ご飯、食べようか。せっかくハルキが作ってくれたんだし」と云う。
「あ、……うん、いいよ」
その一言を言うと、漸くトンちゃんの表情を見る事ができた。
俺は謝る事も出来ず、かといって平気な顔も出来ない。なんとなく照れ隠しの様に「味噌汁あっためるね」と言うのがやっとだった。
食事中もごく普通の会話をする。明日の授業の話とか、夏休みに東京に戻るのか、とか。
いつの間にか、日常の空気の中に居る時間が過ぎて、気付けばもう夕日が沈む時間になっていた。
「ご飯が遅かったから、まだお腹が減らないね。ハルキは明日一限からだろ、早めにアパートに戻る?オレはちょっと仕事の準備をしたい」
「......あ、うん、そうだね。俺も腹は減ってないし。今日はもう帰るよ、トンちゃんもゆっくりしたいだろうから。......また来てもいい?」
横目でトンちゃんの顔を見ながら訊いた。
俺の言葉に、少し間を置いてから頷くと「休日、時間が取れたらね。多分平日は寝に帰って来るのがやっとだし、ハルキもバイトがあるから、あんまり無理しないで。メール、くれたら返事する」
「うん、分かった。トンちゃんも身体壊さない様に頑張って。メールするから」
玄関で見送られて、にこやかに別れると、俺はトンちゃんのマンションを後にした。
今日のバイトは休みで、アパートに帰る途中でコンビニに寄ると、夜に食べる用の弁当とお菓子やジュースを買い込む。本当に腹は減っていなくて、なんだか胸がいっぱいという感じがずっとしていた。
明日の準備だけ済ませると、ベッドに寝転んで天井を仰ぐ。
蛍光灯の光が眩しくて、掌で目を覆うと、今日のトンちゃんの姿が頭に浮かんだ。
そっと瞼を閉じて反芻する様にあの感覚を思い起こす。と、身体の奥が粟立つように身震いして、この手でトンちゃんを抱いた感触が蘇って来た。高校生の時に抱いたトンちゃんの身体が、ずっと頭の何処かに残っていたが、今はもう思い出せなくて、今日、二度目に抱いた感触が強烈過ぎて上書きされてしまった。
トンちゃんは相変わらず綺麗だった。年の差を感じさせるのはスーツ姿の時だけだ。大人で、優しい口調で、包容力があって。そんなトンちゃんも好きだが、俺の下で顔を上気させて喘いだ表情も愛おしくなる。本当は、毎日でもそんなトンちゃんを見ていたい。
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