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新展開
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それなりに楽しい休日を過ごした俺だったが、やはりトンちゃんとの距離は縮まる事もなく、送ってくれるというので俺のアパートを目指して二人で歩く。まだ早い時間だったが、明日の夕方には東京へ向かうというし、長居をして困らせる訳にもいかない。俺って意外と聞き分けがいい?まあ、トンちゃんに嫌われたくないから、なんだけど。
「もうソコを曲がったらアパートだし、ここでいいよ。トンちゃんも帰り気を付けてね。」
「....ああ、うん、....またゆっくり遊びに行こう。近くに居るのに何もしてやれなくて悪かったな。」
少し肩を落としていうから、俺は逆に申し訳ないと思ってしまう。近くに来たのは俺のわがままで、別にトンちゃんを頼りたい訳じゃない。
「俺の方こそ、またご飯作りに行くからさ、一緒に食べよう。」
「うん、ありがとう。じゃあな、勉強も頑張って。」
「うん、おやすみなさい。」
そう云って二人は別れた。
トンちゃんの後ろ姿を見送りながら、胸の奥のモヤモヤは晴れないままだったが、まだ大阪に来て間もないし距離を近付けるのはこれからと、気を取り直して方向転換するとアパートに向かって歩き出す。
ひとりになると途端に心細くなる。
---そろそろ友達作らないとな~
祐斗という大きな存在がいなくなった今、改めて自分のコミュニケーション力の無さに愕然とする。
高校時代、ホントに祐斗に助けられたな...........。なんて感傷に浸っている場合じゃないが、本気で友人とバイト先をみつけないと俺の学生生活は暗いものとなりそう。
日曜日は、朝からバイト情報のサイトを片っ端から見てみたが、飲食業界のチェーン店での仕事がほとんど。
接客業とか、出来る気がしねぇ..............。
ベッドに寝転んで天井を見上げたが、なんだか腹の虫が泣き出して。
そういえば朝はヨーグルトを食べたきり。昨日の朝のトンちゃんの手料理が懐かしい。とはいっても、サラダと目玉焼きを作ってくれたぐらいなんだけど。
---コンビニに行くか
起き上がると、デニムのシャツとカーデガンを羽織って、下は紺のチェックのパンツを身にまといポケットに財布とスマホを突っ込むと部屋を出た。
もうすぐ5月。季節は確実に変化しているのに、俺はと云えば何の変化もない。
時折首筋に冷たい風が当たり、肩を竦め乍ら近くのコンビニに入った。
今日はあの人の姿は見えない。ひとつ先輩の中条さん。まあ、気さくな感じだったけど、学校ではちょっとした有名人らしかった。俺は知らないけれど、入学早々の喧嘩はやっぱり目立つよな。
大阪に来て初めて言葉を交わした大学の先輩だし、貴重な存在ではあるが俺には荷が重い。付き合い方が分からないし。
顔が見えない事もあって、呑気にお菓子を物色していると背中に人の気配を感じた。
「ちゃんとご飯を食べや。」
背後からそう云われて、びっくりして振り返る。
「............中条、さん?」
さっきまでいなかったのに、コンビニの制服を着たカレが俺の横でニコニコと笑っている。
「ぇ、......居たんですか?」なんて失礼な事を云ってしまえば、カレはキョトンとした顔で「おったよ、裏の部屋でモニター見とってんけど、キミの姿が見えたからさ。」と、これまた涼やかな笑顔で云った。
「ぁ、......そうですか。......ちゃんとご飯は食べますよ。これはおやつですから。」
「そうか。けど、コンビニの弁当も飽きるんちゃうん?自分で作ったりしてる?」
「.....作ります、ちゃんと。」
何も作れないと思われるのは癪に障るので、ちょっと胸を張ってしまった。
「それは偉いな~。けど、料理はオレの方が上手いと思うで。」
「........それは、........どうしてですか?俺も中々の出来だと思うんですけど。」
少しカチンときてしまって、俺にしては強気の発言だったと思う。なのに中条さんはニヤッと笑うと「ほな、料理対決しよか?」と言い出した。
思ってもみないその言葉に、俺はカゴを持ったまま呆然としてしまう。
「もうソコを曲がったらアパートだし、ここでいいよ。トンちゃんも帰り気を付けてね。」
「....ああ、うん、....またゆっくり遊びに行こう。近くに居るのに何もしてやれなくて悪かったな。」
少し肩を落としていうから、俺は逆に申し訳ないと思ってしまう。近くに来たのは俺のわがままで、別にトンちゃんを頼りたい訳じゃない。
「俺の方こそ、またご飯作りに行くからさ、一緒に食べよう。」
「うん、ありがとう。じゃあな、勉強も頑張って。」
「うん、おやすみなさい。」
そう云って二人は別れた。
トンちゃんの後ろ姿を見送りながら、胸の奥のモヤモヤは晴れないままだったが、まだ大阪に来て間もないし距離を近付けるのはこれからと、気を取り直して方向転換するとアパートに向かって歩き出す。
ひとりになると途端に心細くなる。
---そろそろ友達作らないとな~
祐斗という大きな存在がいなくなった今、改めて自分のコミュニケーション力の無さに愕然とする。
高校時代、ホントに祐斗に助けられたな...........。なんて感傷に浸っている場合じゃないが、本気で友人とバイト先をみつけないと俺の学生生活は暗いものとなりそう。
日曜日は、朝からバイト情報のサイトを片っ端から見てみたが、飲食業界のチェーン店での仕事がほとんど。
接客業とか、出来る気がしねぇ..............。
ベッドに寝転んで天井を見上げたが、なんだか腹の虫が泣き出して。
そういえば朝はヨーグルトを食べたきり。昨日の朝のトンちゃんの手料理が懐かしい。とはいっても、サラダと目玉焼きを作ってくれたぐらいなんだけど。
---コンビニに行くか
起き上がると、デニムのシャツとカーデガンを羽織って、下は紺のチェックのパンツを身にまといポケットに財布とスマホを突っ込むと部屋を出た。
もうすぐ5月。季節は確実に変化しているのに、俺はと云えば何の変化もない。
時折首筋に冷たい風が当たり、肩を竦め乍ら近くのコンビニに入った。
今日はあの人の姿は見えない。ひとつ先輩の中条さん。まあ、気さくな感じだったけど、学校ではちょっとした有名人らしかった。俺は知らないけれど、入学早々の喧嘩はやっぱり目立つよな。
大阪に来て初めて言葉を交わした大学の先輩だし、貴重な存在ではあるが俺には荷が重い。付き合い方が分からないし。
顔が見えない事もあって、呑気にお菓子を物色していると背中に人の気配を感じた。
「ちゃんとご飯を食べや。」
背後からそう云われて、びっくりして振り返る。
「............中条、さん?」
さっきまでいなかったのに、コンビニの制服を着たカレが俺の横でニコニコと笑っている。
「ぇ、......居たんですか?」なんて失礼な事を云ってしまえば、カレはキョトンとした顔で「おったよ、裏の部屋でモニター見とってんけど、キミの姿が見えたからさ。」と、これまた涼やかな笑顔で云った。
「ぁ、......そうですか。......ちゃんとご飯は食べますよ。これはおやつですから。」
「そうか。けど、コンビニの弁当も飽きるんちゃうん?自分で作ったりしてる?」
「.....作ります、ちゃんと。」
何も作れないと思われるのは癪に障るので、ちょっと胸を張ってしまった。
「それは偉いな~。けど、料理はオレの方が上手いと思うで。」
「........それは、........どうしてですか?俺も中々の出来だと思うんですけど。」
少しカチンときてしまって、俺にしては強気の発言だったと思う。なのに中条さんはニヤッと笑うと「ほな、料理対決しよか?」と言い出した。
思ってもみないその言葉に、俺はカゴを持ったまま呆然としてしまう。
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