70 / 105
ふたりだけの夜
しおりを挟む
前に祐斗に訊かれた事がある。
トンちゃんと一緒に寝た事はあるのかって.......。もちろん子供時代の話。
あの離れの部屋に住む様になってから、そういえば一緒に寝る事はしなかったな。部屋は別々にあったし、隣だし。わざわざ一緒の布団で寝るなんて、ガキっぽくて嫌だったし恥ずかしかったんだ。
なのに、今夜は一緒の布団で寝る事を期待している自分がいた。
「風呂に入ってこいよ。その間に布団を用意しておく。」
「え?ベッドで寝るんじゃないの?二人で寝られそうだよ?」
俺は慌ててそう云ってしまう。魂胆がミエミエだと思われるかも.....。
「流石にハルキの体格じゃぁ無理。それにセミダブルだよ?」
「だって、俺と祐斗はセミダブルで寝れたよ?トンちゃんとだって。」
「..........ムリだから。いいから風呂に入っておいで。」
折角一緒に寝られると思ったのに、俺の夢は儚くも敗れてしまった。
仕方なく浴室へ行くと湯船に浸かった。此処にトンちゃんも毎日浸かっているのかと思うと、なんだか変な気分になってくる。東京の家でも同じ風呂に入ってたのに、あの時は他に家族も使ってたし。こんな気持ちにはならなかった。
ボディーソープやシャンプーを使えば、同じ匂いがして嬉しくなる。
俺だけがバカみたいに浮かれているが、今夜はこの部屋に二人きり。
トンちゃんは俺を警戒していない様だ。あんな酷い事をしてしまったけど、アレはなかった事にされているのだろうか?
「お先に」と云って部屋に戻った俺がトンちゃんに声を掛ける。
トンちゃんはベッドの横に布団を一組敷いてくれていた。
「あ、.....ハルキはこっちのベッドを使って。」
「え?布団の方じゃ?」
「デッカイんだからこっちじゃ狭いよ、きっと。」
「......まぁ、うん、じゃあそうする。」
「ちゃんとシーツも掛け布団カバーも変えておいたからな。」
そんなの変えなくても良かったのに、と思ったが「ありがとう」とだけ云っておいた。
トンちゃんの匂いが.........
「じゃあ、風呂に入って来るから。ハルキは先に寝てていいよ。」
そう云われたが、なんだか寝る気にはなれなかった。せっかくふたりなのに........。
俺は返事だけすると、トンちゃんが風呂へ行ったのを見届けて部屋の中を散策する。
といってもワンルームだし、見えるものはそんなにないが、ちょっと机の引き出しとかを見てみたい衝動に駆られた。いけない事だとは重々承知している。が、離れている間のトンちゃんの世界がどんな風になっているのかを知りたかった。
仕事ばかりの毎日らしいが、ちょっとエロい本とかDVDとか隠していないか興味が湧く。
それとなく深い引き出しを開けてみると、何やらバインダーが入っていて、背表紙には難しい建築用語が書かれている。手に取ってめくってみたが、サッパリ分からなかった。
---なんだ~、エロはなしか~
ちょっとガッカリして、俺は冷蔵庫から水を取り出すとコップに注いで飲み干す。
トンちゃんに恋人の影は無さそう。それに、少し痩せた所を見ると本当に仕事が大変なんだと思う。
やはり、俺が食事の世話をしてやるのが一番いいと思った。
風呂から出てきたトンちゃんに、もう一度俺が食事を作りに来るからと伝えると、ちょっと困った顔をした。
「オレの事より自分の事を気にしなよ。これから勉強も難しくなるし、ハルキは大学に入って何をしようと思ったのか、遊ぶために来たんじゃないだろ?」
そんな風に云われてしまうと返す言葉がない。俺の不純な動機は本人に悟られてはいけないのだから。
トンちゃんと一緒に寝た事はあるのかって.......。もちろん子供時代の話。
あの離れの部屋に住む様になってから、そういえば一緒に寝る事はしなかったな。部屋は別々にあったし、隣だし。わざわざ一緒の布団で寝るなんて、ガキっぽくて嫌だったし恥ずかしかったんだ。
なのに、今夜は一緒の布団で寝る事を期待している自分がいた。
「風呂に入ってこいよ。その間に布団を用意しておく。」
「え?ベッドで寝るんじゃないの?二人で寝られそうだよ?」
俺は慌ててそう云ってしまう。魂胆がミエミエだと思われるかも.....。
「流石にハルキの体格じゃぁ無理。それにセミダブルだよ?」
「だって、俺と祐斗はセミダブルで寝れたよ?トンちゃんとだって。」
「..........ムリだから。いいから風呂に入っておいで。」
折角一緒に寝られると思ったのに、俺の夢は儚くも敗れてしまった。
仕方なく浴室へ行くと湯船に浸かった。此処にトンちゃんも毎日浸かっているのかと思うと、なんだか変な気分になってくる。東京の家でも同じ風呂に入ってたのに、あの時は他に家族も使ってたし。こんな気持ちにはならなかった。
ボディーソープやシャンプーを使えば、同じ匂いがして嬉しくなる。
俺だけがバカみたいに浮かれているが、今夜はこの部屋に二人きり。
トンちゃんは俺を警戒していない様だ。あんな酷い事をしてしまったけど、アレはなかった事にされているのだろうか?
「お先に」と云って部屋に戻った俺がトンちゃんに声を掛ける。
トンちゃんはベッドの横に布団を一組敷いてくれていた。
「あ、.....ハルキはこっちのベッドを使って。」
「え?布団の方じゃ?」
「デッカイんだからこっちじゃ狭いよ、きっと。」
「......まぁ、うん、じゃあそうする。」
「ちゃんとシーツも掛け布団カバーも変えておいたからな。」
そんなの変えなくても良かったのに、と思ったが「ありがとう」とだけ云っておいた。
トンちゃんの匂いが.........
「じゃあ、風呂に入って来るから。ハルキは先に寝てていいよ。」
そう云われたが、なんだか寝る気にはなれなかった。せっかくふたりなのに........。
俺は返事だけすると、トンちゃんが風呂へ行ったのを見届けて部屋の中を散策する。
といってもワンルームだし、見えるものはそんなにないが、ちょっと机の引き出しとかを見てみたい衝動に駆られた。いけない事だとは重々承知している。が、離れている間のトンちゃんの世界がどんな風になっているのかを知りたかった。
仕事ばかりの毎日らしいが、ちょっとエロい本とかDVDとか隠していないか興味が湧く。
それとなく深い引き出しを開けてみると、何やらバインダーが入っていて、背表紙には難しい建築用語が書かれている。手に取ってめくってみたが、サッパリ分からなかった。
---なんだ~、エロはなしか~
ちょっとガッカリして、俺は冷蔵庫から水を取り出すとコップに注いで飲み干す。
トンちゃんに恋人の影は無さそう。それに、少し痩せた所を見ると本当に仕事が大変なんだと思う。
やはり、俺が食事の世話をしてやるのが一番いいと思った。
風呂から出てきたトンちゃんに、もう一度俺が食事を作りに来るからと伝えると、ちょっと困った顔をした。
「オレの事より自分の事を気にしなよ。これから勉強も難しくなるし、ハルキは大学に入って何をしようと思ったのか、遊ぶために来たんじゃないだろ?」
そんな風に云われてしまうと返す言葉がない。俺の不純な動機は本人に悟られてはいけないのだから。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

遠距離恋愛は続かないと、キミは寂しくそう言った【BL版】
五右衛門
BL
中学校を卒業する日……桜坂光と雪宮麗は、美術室で最後の時を過ごしていた。雪宮の家族が北海道へ転勤するため、二人は離れ離れになる運命にあったためだ。遠距離恋愛を提案する光に対し、雪宮は「遠距離恋愛は続かない」と優しく告げ、別れを決断する。それでも諦めきれない桜坂に対し、雪宮はある約束を提案する。新しい恋が見つからず、互いにまだ想いが残っていたなら、クリスマスの日に公園の噴水前で再会しようと。
季節は巡り、クリスマスの夜。桜坂は約束の場所で待つが、雪宮は現れない。桜坂の時間は今もあの時から止まったままだった。心に空いた穴を埋めることはできず、雪が静かに降り積もる中、桜坂はただひたすらに想い人を待っていた。

見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています

紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

あの日の記憶の隅で、君は笑う。
15
BL
アキラは恋人である公彦の部屋でとある写真を見つけた。
その写真に写っていたのはーーー……俺とそっくりな人。
唐突に始まります。
身代わりの恋大好きか〜と思われるかもしれませんが、大好物です!すみません!
幸せになってくれな!

手の届かない元恋人
深夜
BL
昔、付き合っていた大好きな彼氏に振られた。
元彼は人気若手俳優になっていた。
諦めきれないこの恋がやっと終わると思ってた和弥だったが、仕事上の理由で元彼と会わないといけなくなり....

視線の先
茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。
「セーラー服着た写真撮らせて?」
……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった
ハッピーエンド
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる