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ふたりだけの夜
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前に祐斗に訊かれた事がある。
トンちゃんと一緒に寝た事はあるのかって.......。もちろん子供時代の話。
あの離れの部屋に住む様になってから、そういえば一緒に寝る事はしなかったな。部屋は別々にあったし、隣だし。わざわざ一緒の布団で寝るなんて、ガキっぽくて嫌だったし恥ずかしかったんだ。
なのに、今夜は一緒の布団で寝る事を期待している自分がいた。
「風呂に入ってこいよ。その間に布団を用意しておく。」
「え?ベッドで寝るんじゃないの?二人で寝られそうだよ?」
俺は慌ててそう云ってしまう。魂胆がミエミエだと思われるかも.....。
「流石にハルキの体格じゃぁ無理。それにセミダブルだよ?」
「だって、俺と祐斗はセミダブルで寝れたよ?トンちゃんとだって。」
「..........ムリだから。いいから風呂に入っておいで。」
折角一緒に寝られると思ったのに、俺の夢は儚くも敗れてしまった。
仕方なく浴室へ行くと湯船に浸かった。此処にトンちゃんも毎日浸かっているのかと思うと、なんだか変な気分になってくる。東京の家でも同じ風呂に入ってたのに、あの時は他に家族も使ってたし。こんな気持ちにはならなかった。
ボディーソープやシャンプーを使えば、同じ匂いがして嬉しくなる。
俺だけがバカみたいに浮かれているが、今夜はこの部屋に二人きり。
トンちゃんは俺を警戒していない様だ。あんな酷い事をしてしまったけど、アレはなかった事にされているのだろうか?
「お先に」と云って部屋に戻った俺がトンちゃんに声を掛ける。
トンちゃんはベッドの横に布団を一組敷いてくれていた。
「あ、.....ハルキはこっちのベッドを使って。」
「え?布団の方じゃ?」
「デッカイんだからこっちじゃ狭いよ、きっと。」
「......まぁ、うん、じゃあそうする。」
「ちゃんとシーツも掛け布団カバーも変えておいたからな。」
そんなの変えなくても良かったのに、と思ったが「ありがとう」とだけ云っておいた。
トンちゃんの匂いが.........
「じゃあ、風呂に入って来るから。ハルキは先に寝てていいよ。」
そう云われたが、なんだか寝る気にはなれなかった。せっかくふたりなのに........。
俺は返事だけすると、トンちゃんが風呂へ行ったのを見届けて部屋の中を散策する。
といってもワンルームだし、見えるものはそんなにないが、ちょっと机の引き出しとかを見てみたい衝動に駆られた。いけない事だとは重々承知している。が、離れている間のトンちゃんの世界がどんな風になっているのかを知りたかった。
仕事ばかりの毎日らしいが、ちょっとエロい本とかDVDとか隠していないか興味が湧く。
それとなく深い引き出しを開けてみると、何やらバインダーが入っていて、背表紙には難しい建築用語が書かれている。手に取ってめくってみたが、サッパリ分からなかった。
---なんだ~、エロはなしか~
ちょっとガッカリして、俺は冷蔵庫から水を取り出すとコップに注いで飲み干す。
トンちゃんに恋人の影は無さそう。それに、少し痩せた所を見ると本当に仕事が大変なんだと思う。
やはり、俺が食事の世話をしてやるのが一番いいと思った。
風呂から出てきたトンちゃんに、もう一度俺が食事を作りに来るからと伝えると、ちょっと困った顔をした。
「オレの事より自分の事を気にしなよ。これから勉強も難しくなるし、ハルキは大学に入って何をしようと思ったのか、遊ぶために来たんじゃないだろ?」
そんな風に云われてしまうと返す言葉がない。俺の不純な動機は本人に悟られてはいけないのだから。
トンちゃんと一緒に寝た事はあるのかって.......。もちろん子供時代の話。
あの離れの部屋に住む様になってから、そういえば一緒に寝る事はしなかったな。部屋は別々にあったし、隣だし。わざわざ一緒の布団で寝るなんて、ガキっぽくて嫌だったし恥ずかしかったんだ。
なのに、今夜は一緒の布団で寝る事を期待している自分がいた。
「風呂に入ってこいよ。その間に布団を用意しておく。」
「え?ベッドで寝るんじゃないの?二人で寝られそうだよ?」
俺は慌ててそう云ってしまう。魂胆がミエミエだと思われるかも.....。
「流石にハルキの体格じゃぁ無理。それにセミダブルだよ?」
「だって、俺と祐斗はセミダブルで寝れたよ?トンちゃんとだって。」
「..........ムリだから。いいから風呂に入っておいで。」
折角一緒に寝られると思ったのに、俺の夢は儚くも敗れてしまった。
仕方なく浴室へ行くと湯船に浸かった。此処にトンちゃんも毎日浸かっているのかと思うと、なんだか変な気分になってくる。東京の家でも同じ風呂に入ってたのに、あの時は他に家族も使ってたし。こんな気持ちにはならなかった。
ボディーソープやシャンプーを使えば、同じ匂いがして嬉しくなる。
俺だけがバカみたいに浮かれているが、今夜はこの部屋に二人きり。
トンちゃんは俺を警戒していない様だ。あんな酷い事をしてしまったけど、アレはなかった事にされているのだろうか?
「お先に」と云って部屋に戻った俺がトンちゃんに声を掛ける。
トンちゃんはベッドの横に布団を一組敷いてくれていた。
「あ、.....ハルキはこっちのベッドを使って。」
「え?布団の方じゃ?」
「デッカイんだからこっちじゃ狭いよ、きっと。」
「......まぁ、うん、じゃあそうする。」
「ちゃんとシーツも掛け布団カバーも変えておいたからな。」
そんなの変えなくても良かったのに、と思ったが「ありがとう」とだけ云っておいた。
トンちゃんの匂いが.........
「じゃあ、風呂に入って来るから。ハルキは先に寝てていいよ。」
そう云われたが、なんだか寝る気にはなれなかった。せっかくふたりなのに........。
俺は返事だけすると、トンちゃんが風呂へ行ったのを見届けて部屋の中を散策する。
といってもワンルームだし、見えるものはそんなにないが、ちょっと机の引き出しとかを見てみたい衝動に駆られた。いけない事だとは重々承知している。が、離れている間のトンちゃんの世界がどんな風になっているのかを知りたかった。
仕事ばかりの毎日らしいが、ちょっとエロい本とかDVDとか隠していないか興味が湧く。
それとなく深い引き出しを開けてみると、何やらバインダーが入っていて、背表紙には難しい建築用語が書かれている。手に取ってめくってみたが、サッパリ分からなかった。
---なんだ~、エロはなしか~
ちょっとガッカリして、俺は冷蔵庫から水を取り出すとコップに注いで飲み干す。
トンちゃんに恋人の影は無さそう。それに、少し痩せた所を見ると本当に仕事が大変なんだと思う。
やはり、俺が食事の世話をしてやるのが一番いいと思った。
風呂から出てきたトンちゃんに、もう一度俺が食事を作りに来るからと伝えると、ちょっと困った顔をした。
「オレの事より自分の事を気にしなよ。これから勉強も難しくなるし、ハルキは大学に入って何をしようと思ったのか、遊ぶために来たんじゃないだろ?」
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