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ちょっと緊張する

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 午後の講義も吉村と同じになって、なんとなく一緒にいる事となった。
吉村は、俺と違ってコミュ力があるのか、すでに学年の三分の一ぐらいと面識があるようで。通路を歩いていると、あの人はどこ出身だとか教えてくれた。この短い期間にどれだけの人に話しかけたんだろう。ちょっと驚いてしまうし、尊敬すらしてしまう。

「本宮くんって東京出身なのに、どうして大阪の大学へなんか来たの?あっちの方が大学の数も多いだろう?」
歩きながらそう訊かれ、俺は答えに困る。だって俺の場合は邪な感情からで。トンちゃんの傍に居たいが為に受けた大学だった。でも、本当の事を云う訳にもいかず返答に困っていると、吉村は「まあ、でも東京に長く住んでいる人には大阪は新鮮なのかも。」と自己完結してくれて助かった。

 講義が終わって帰る時間になると、最近全く会えていないトンちゃんの事が気になる。
母親からはたまに電話で様子を聞かれるが、その度にトンちゃんには会っていないから分からないとしか言いようがなくて。

---明日は土曜日だし連絡してみようかな

 本当は声が聞きたかったが、仕事中だろうからメールにしてみる。
”忙しそうだけど元気ですか?良かったら今晩一緒にご飯を食べない?俺がカレーを作ってあげるけど”

 一応、カレーとチャーハンとラーメン、親子丼くらいは作れるようになった。
祐斗にバカにされて悔しかったし、トンちゃんに作ってあげたかった俺は練習してやっと食える飯を作れるようになったんだ。まあ、結構我慢して食べた時もあったが。

 返信が来るのを待ちながら、アパートの帰り道にあるスーパーに寄ると食材をみつくろってカゴに入れる。
東京では全く考えられない事だった。祐斗の家に行った時に確かカレーの材料を買いに行った気がする。そこから今まで随分と月日も経っていたが、自分の成長に涙が出そう。

 鼻歌交じりに買い物袋を下げてアパートに続く道を歩いて行くが、途中、コンビニが見えてふと中条さんの顔を思い出した俺。今日の昼間に、確かバイトに行くって云ってた。コンビニに居るのかと気になった。

 買い物袋を下げているし、中に入るのは気が引けて入口のあたりからレジの方を覗いて見た。
でも、そこに居るのは中年の女性だけで。やはりレストランの方なのかと思い視線を戻した時だった。

「あれ?本宮くん」と、店の横の路地から顔を出した中条さんが俺の名前を呼んだ。

「あっっ、......どうも」
一瞬ビビった。中を覗いているところを見られたら不審な奴だと思われるだろう。

「今帰りか?そういや前にも来たよね。この近くなんだ?」

「あ、はい。すぐそこのアパートで......。今日はコンビニのバイトなんですね。」

「そう、いつもはもっと遅い時間に入るんやけど、今日は代りに入ってるねん。子供が熱出したとかで。」

「あぁ、そうなんですか。大変ですね。.......じゃあ、失礼します。」

「うん」

 やっぱり言葉が続かなくて、俺は中条さんにお辞儀をするとその場を後にした。

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