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謎めいた先輩?
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カツ丼を食べ終わってひと息つくと、目の前のカレも満足げな笑みを浮べてこちらを見る。
「あ、そういえば....名前を聞いてませんでした。俺は本宮っていいます。」
「......ああ、そうやった、名前知らんかったのに声掛けてしもうたわ。オレは中条いうねん。建築学部の二年。」
涼やかな目を細めてそう云われ、俺もフフッと笑った。なんだかこの人って憎めない感じ。初めの印象はもっと上品そうで話しづらいと思ったのに。
「ほな、オレは午後は休講やからバイト行くし、ここでサイナラ。」
「ぁ、はい、じゃあ、.....また。」
自分のトレイを持つと、中条さんは席を立って食堂から出て行く。
その背中を見ながら俺はふと思い出した。バイトってあそこのコンビニだろうかと。それともレストランの方か?いったいいくつバイトしてるんだろう。聞いてみれば良かったが、初めて喋ったし。又出会う機会があれば聞いてみよう。
俺も席を立つとトレイを返しに行った。
食堂から出て暫く廊下を歩いていると後ろから声が掛かる。
「さっきの人と知り合い?」と。
「え?」と声の方を振り返ると、午前の講義で俺の前の席だった男がいた。
急に話しかけられてちょっとびっくり。じっと男の顔を見てしまった。
「ぁ、ごめん、おれは吉村。講義で一緒だったんだけど....」
「.........うん、前に座ってた人だよね、俺は本宮。」
俺が知ってた事で安心したのか、吉村はホッと胸を撫で下ろす。
俺の隣に来ると一緒に歩き出して、話しの続きをし出した。
「さっきの人って、髪の毛縛ってた先輩の?」
俺は中条さんの事かと思って訊いてみた。
「そうそう、二年生だよね建築学部の。」
「知ってるの?」
そこまで知っているって事は、吉村とも知り合いなのかと思った。
でも、吉村の答えは違って。急に俺の肩を押しやって廊下の隅にやると小声で話し出す。
「あの人ヤバイぞ。おれは先輩から聞いたんだけど、去年入学早々に先輩をボコって問題になったらしい。」
吉村は半ば興奮気味に話す。
「.........そうなんだ?」
突然そんな話を聞かされても、どう反応したらいいのか.......。
「入学早々だよ?それにそのボコられた先輩ってバンド組んでた人らしくてさ。学生の中には結構ファンの娘もいたらしい。」
俺の反応に不満げな顔の吉村。なおも続けるとそう云った。
「バンド?.......ああ、あの人も、だから髪伸ばしてんのかな?音楽やってるのは知らないけど。それに、悪いけどさ、俺中条さんと話したの今日初めてっていうか。たまたま行った店でおじさんに紹介されただけだし。」
「......なんだそうなのか。なら良かった。本宮くんってさ、人が良さそうだしああいう人に絡まれやすいのかと思って。」
「え?.........」
俺が訊き返そうとしたら、吉村は直ぐに「じゃあ」と云って俺の前から去って行った。
取り残された俺は、この胸のモヤモヤをどうしたらいいのか分からなくて、そのまま廊下の片隅で棒立ちのまま暫くそこに居た。
「あ、そういえば....名前を聞いてませんでした。俺は本宮っていいます。」
「......ああ、そうやった、名前知らんかったのに声掛けてしもうたわ。オレは中条いうねん。建築学部の二年。」
涼やかな目を細めてそう云われ、俺もフフッと笑った。なんだかこの人って憎めない感じ。初めの印象はもっと上品そうで話しづらいと思ったのに。
「ほな、オレは午後は休講やからバイト行くし、ここでサイナラ。」
「ぁ、はい、じゃあ、.....また。」
自分のトレイを持つと、中条さんは席を立って食堂から出て行く。
その背中を見ながら俺はふと思い出した。バイトってあそこのコンビニだろうかと。それともレストランの方か?いったいいくつバイトしてるんだろう。聞いてみれば良かったが、初めて喋ったし。又出会う機会があれば聞いてみよう。
俺も席を立つとトレイを返しに行った。
食堂から出て暫く廊下を歩いていると後ろから声が掛かる。
「さっきの人と知り合い?」と。
「え?」と声の方を振り返ると、午前の講義で俺の前の席だった男がいた。
急に話しかけられてちょっとびっくり。じっと男の顔を見てしまった。
「ぁ、ごめん、おれは吉村。講義で一緒だったんだけど....」
「.........うん、前に座ってた人だよね、俺は本宮。」
俺が知ってた事で安心したのか、吉村はホッと胸を撫で下ろす。
俺の隣に来ると一緒に歩き出して、話しの続きをし出した。
「さっきの人って、髪の毛縛ってた先輩の?」
俺は中条さんの事かと思って訊いてみた。
「そうそう、二年生だよね建築学部の。」
「知ってるの?」
そこまで知っているって事は、吉村とも知り合いなのかと思った。
でも、吉村の答えは違って。急に俺の肩を押しやって廊下の隅にやると小声で話し出す。
「あの人ヤバイぞ。おれは先輩から聞いたんだけど、去年入学早々に先輩をボコって問題になったらしい。」
吉村は半ば興奮気味に話す。
「.........そうなんだ?」
突然そんな話を聞かされても、どう反応したらいいのか.......。
「入学早々だよ?それにそのボコられた先輩ってバンド組んでた人らしくてさ。学生の中には結構ファンの娘もいたらしい。」
俺の反応に不満げな顔の吉村。なおも続けるとそう云った。
「バンド?.......ああ、あの人も、だから髪伸ばしてんのかな?音楽やってるのは知らないけど。それに、悪いけどさ、俺中条さんと話したの今日初めてっていうか。たまたま行った店でおじさんに紹介されただけだし。」
「......なんだそうなのか。なら良かった。本宮くんってさ、人が良さそうだしああいう人に絡まれやすいのかと思って。」
「え?.........」
俺が訊き返そうとしたら、吉村は直ぐに「じゃあ」と云って俺の前から去って行った。
取り残された俺は、この胸のモヤモヤをどうしたらいいのか分からなくて、そのまま廊下の片隅で棒立ちのまま暫くそこに居た。
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