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腹は満たされた
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人生で初めてのホームシックとやらにかかってしまった俺。
大学の授業が始まって、未だに親しい友人を作る事が出来ていない。まあ、最初から自分の性格上難しいとは思っていた。が、講義を受ける時に横に座った女子からは何度か視線を感じて、余計に緊張してしまった。
昼休みの学食を選んでいると、ふいに俺の後ろから「ここはカツ丼が美味しいよ」と声を掛けられて。
振り返って見たら先日のバイトの人がそこに居た。笑みを浮べて俺の顔を見ると、「やあ」と爽やかな声で云われて焦る。一応、二度も出会っているから顔は分かっている。でも、気軽に話せる相手じゃない気がした。ひとつ先輩だし.....。
「ぁ、どうも」
軽く頭を下げるとそう云ったが、その後の言葉が出てこない。
「大学で会うのは初めてやな。学部は?」
「え?...ぁ、経済学部、です」
関西弁?なんかイメージと違う。
そう思った俺はついカレの顔をじっと見つめてしまった。
「なんか顔に付いとるかな?....じっと見られると恥ずかしいんやけど」
カレはそう云うと自分の手を頬に当てて笑った。俺も一瞬恥ずかしくなって、目を逸らすと「すみません」と謝る。なんだか照れくさくなった。
「良かったら一緒に喰おうか?」
「.........はい」
二人して食堂に入って行くと、おすすめのカツ丼をそれぞれ注文して奥のテーブルに着く。
俺たちのテーブルには他に座って居る生徒もいたが、じっとこちらを見たかと思ったら席を空けてくれて二人だけになった。
「この間一緒に来た人は元気?」
そう訊かれて、一瞬祐斗の事かトンちゃんの事か分からななくて。箸を持ったままカレの顔を窺う。
「あ、年上の人の方。もう一人はキミの友達やろ?」
「あ、はい。.......元気だと思います。仕事が忙しくて会ってないんで分かりませんが、具合悪かったら連絡くれると思うし。」
「そう、東京から来たって云ってたから、キミしか親類はおらんのやな。」
「.......ええ、まあ、そうですね。おじさんとは結構親しいんですか?」
「いや、店に来てくれた時しか話さんから。でもいい人ぽいし話しやすそう。」
「はい、......いい人ではあります。」
俺は箸を割ると漸くカツを一口頬張った。サクッという音が自分の鼓膜に響いて、カレが云った通り美味しさが伝わってくる。玉子もフワフワで、東京で食べたカツ丼よりも数倍美味かった。
「なっ?美味しいやろ?」
前に座って俺の食べる姿を微笑ましく見ているカレが得意げに云った。
「はい、美味しいですね。学食とは思えない。」
俺の胃袋にどんどん飲まれていくカツ丼を褒め乍ら、二人で嬉しそうに食べていくとあっという間に完食してしまう。最後に水を飲むのがもったいないぐらい、味わい深かったカツ丼に魅了された俺は、これから毎日学食のメニューはコレにしようと思った。
大学の授業が始まって、未だに親しい友人を作る事が出来ていない。まあ、最初から自分の性格上難しいとは思っていた。が、講義を受ける時に横に座った女子からは何度か視線を感じて、余計に緊張してしまった。
昼休みの学食を選んでいると、ふいに俺の後ろから「ここはカツ丼が美味しいよ」と声を掛けられて。
振り返って見たら先日のバイトの人がそこに居た。笑みを浮べて俺の顔を見ると、「やあ」と爽やかな声で云われて焦る。一応、二度も出会っているから顔は分かっている。でも、気軽に話せる相手じゃない気がした。ひとつ先輩だし.....。
「ぁ、どうも」
軽く頭を下げるとそう云ったが、その後の言葉が出てこない。
「大学で会うのは初めてやな。学部は?」
「え?...ぁ、経済学部、です」
関西弁?なんかイメージと違う。
そう思った俺はついカレの顔をじっと見つめてしまった。
「なんか顔に付いとるかな?....じっと見られると恥ずかしいんやけど」
カレはそう云うと自分の手を頬に当てて笑った。俺も一瞬恥ずかしくなって、目を逸らすと「すみません」と謝る。なんだか照れくさくなった。
「良かったら一緒に喰おうか?」
「.........はい」
二人して食堂に入って行くと、おすすめのカツ丼をそれぞれ注文して奥のテーブルに着く。
俺たちのテーブルには他に座って居る生徒もいたが、じっとこちらを見たかと思ったら席を空けてくれて二人だけになった。
「この間一緒に来た人は元気?」
そう訊かれて、一瞬祐斗の事かトンちゃんの事か分からななくて。箸を持ったままカレの顔を窺う。
「あ、年上の人の方。もう一人はキミの友達やろ?」
「あ、はい。.......元気だと思います。仕事が忙しくて会ってないんで分かりませんが、具合悪かったら連絡くれると思うし。」
「そう、東京から来たって云ってたから、キミしか親類はおらんのやな。」
「.......ええ、まあ、そうですね。おじさんとは結構親しいんですか?」
「いや、店に来てくれた時しか話さんから。でもいい人ぽいし話しやすそう。」
「はい、......いい人ではあります。」
俺は箸を割ると漸くカツを一口頬張った。サクッという音が自分の鼓膜に響いて、カレが云った通り美味しさが伝わってくる。玉子もフワフワで、東京で食べたカツ丼よりも数倍美味かった。
「なっ?美味しいやろ?」
前に座って俺の食べる姿を微笑ましく見ているカレが得意げに云った。
「はい、美味しいですね。学食とは思えない。」
俺の胃袋にどんどん飲まれていくカツ丼を褒め乍ら、二人で嬉しそうに食べていくとあっという間に完食してしまう。最後に水を飲むのがもったいないぐらい、味わい深かったカツ丼に魅了された俺は、これから毎日学食のメニューはコレにしようと思った。
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