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少しの不安と

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 飾り気の無いガランとした部屋に戻ってくると、トンちゃんが自分の住むマンション迄の地図を簡単に書いてくれた。

「今はちょっと忙しくて何処へも連れてってやれないけど、その内色々案内するから。まあ、学校が始まれば友達もできるだろうけど。そうしたら友達優先でいいし。」

 そんな事をトンちゃんに言われてしまう。友達優先とか絶対ないし。俺はいつでもトンちゃん優先だ。

「ありがとうございます。無理しなくてもいいから、俺にも出来る事あったら言ってよね。」と、一応云っておいた。本当は近くに住んで毎日でも顔を見に来たいぐらいなのに、そこまでしたら叱られそうだ。

「祐斗くんが居る間は二人で楽しんだらいい。遠くに行ってしまうのは淋しくなるね。」

 トンちゃんはアメリカに行ってしまう祐斗にそう云う。確かに遠いアメリカへ行ったら、俺たちは会えなくなるかもしれない。そう思ったら急に寂しくなってくる。

「ハルキと充分に楽しんでから、オレはアメリカへ行きます。まあ、暇になったらまた日本へ遊びに来ますよ。その時は徹さんにも遊んでもらいますから、よろしく。」

「ははは、そうだな。祐斗くんならフイッと日本に帰って来そうな気がする。まあ、自由を楽しんだらいいさ。」

 あくまでも能天気な祐斗の言葉に、俺もトンちゃんも笑うしかない。


「じゃあ、オレはそろそろ帰るとするよ。明日も仕事が残っててね、何かあったら電話してくれ。」

「うん、今日はありがとう。また連絡するね、おやすみなさい。」

「おやすみ」

「おやすみなさい」



 トンちゃんを玄関で見送った後、祐斗と二人で床に座り込むとバッグの中から着替えを取り出した。

「風呂入っちゃおうか?」

「そうだな。お湯入れて来るから。」
 
 そう云って浴室へと向かう。

 バスタブに溜まる湯を見つめながら、これからの自分を少しだけ想像した。
生活力なんて無いのは自覚している。これは少しづつやっていくしかない。大学の環境も全く想像出来ないし、あの受験の日に出会ったヤツの顔なんて覚えているはずもない。これから新しく友達を作っていかなきゃならない。想像するだけで不安になってくる。


「ハルキ~何やってんの?」と、祐斗の声がして漸く気を取り直すと部屋に戻った。


「トオルさん、相変わらずキレイだったな。もう30超えてるのにさ。おばさんの弟にしては顔立ちが違い過ぎてない?・・・って云ったらハルキのお母さんに怒られるか。ごめん。」

「...........まあ、それは俺も常々思っていた。母さんに言わせると身長の低いのは血筋だそうだ。顔立ちは、自分もいいと思ってるからな、怖いよな、思い込みって。」

「ははは・・・ひどいな、ハルキ。おばさん可哀そう。きっと若い頃は美人だったんだよ。」

「おまえ、それの方が怒られるぞ。若い頃は、って・・・・」

 

 母親の事を持ち出して笑ってしまうのは申し訳ないが、おかげで少しだけ気分が明るくなった気がする。

 確かに、トンちゃんの顔立ちは母方の祖父母とも違う様で。歳を重ねる度に余計強く感じた。
俺の場合は、身長や体格は父親譲りで、顔はいいのか悪いのか自分では分からない。祐斗は好きな顔だと云ってくれるから、まあ、不細工ではないのだろうと思う。

「祐斗はお母さんに似ているよな。あんまり父親の顔は見てないから知らないけど。祐斗も美形だよ。」

 そう云ってまじまじと祐斗の顔を覗き込んだ。

「今頃気づくとは・・・ま、いいけど。」

 フフッと笑いながら互いの顔を見つめ合うと祐斗が俺の肩に手を置く。



 
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