59 / 98
少しの不安と
しおりを挟む
飾り気の無いガランとした部屋に戻ってくると、トンちゃんが自分の住むマンション迄の地図を簡単に書いてくれた。
「今はちょっと忙しくて何処へも連れてってやれないけど、その内色々案内するから。まあ、学校が始まれば友達もできるだろうけど。そうしたら友達優先でいいし。」
そんな事をトンちゃんに言われてしまう。友達優先とか絶対ないし。俺はいつでもトンちゃん優先だ。
「ありがとうございます。無理しなくてもいいから、俺にも出来る事あったら言ってよね。」と、一応云っておいた。本当は近くに住んで毎日でも顔を見に来たいぐらいなのに、そこまでしたら叱られそうだ。
「祐斗くんが居る間は二人で楽しんだらいい。遠くに行ってしまうのは淋しくなるね。」
トンちゃんはアメリカに行ってしまう祐斗にそう云う。確かに遠いアメリカへ行ったら、俺たちは会えなくなるかもしれない。そう思ったら急に寂しくなってくる。
「ハルキと充分に楽しんでから、オレはアメリカへ行きます。まあ、暇になったらまた日本へ遊びに来ますよ。その時は徹さんにも遊んでもらいますから、よろしく。」
「ははは、そうだな。祐斗くんならフイッと日本に帰って来そうな気がする。まあ、自由を楽しんだらいいさ。」
あくまでも能天気な祐斗の言葉に、俺もトンちゃんも笑うしかない。
「じゃあ、オレはそろそろ帰るとするよ。明日も仕事が残っててね、何かあったら電話してくれ。」
「うん、今日はありがとう。また連絡するね、おやすみなさい。」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
トンちゃんを玄関で見送った後、祐斗と二人で床に座り込むとバッグの中から着替えを取り出した。
「風呂入っちゃおうか?」
「そうだな。お湯入れて来るから。」
そう云って浴室へと向かう。
バスタブに溜まる湯を見つめながら、これからの自分を少しだけ想像した。
生活力なんて無いのは自覚している。これは少しづつやっていくしかない。大学の環境も全く想像出来ないし、あの受験の日に出会ったヤツの顔なんて覚えているはずもない。これから新しく友達を作っていかなきゃならない。想像するだけで不安になってくる。
「ハルキ~何やってんの?」と、祐斗の声がして漸く気を取り直すと部屋に戻った。
「トオルさん、相変わらずキレイだったな。もう30超えてるのにさ。おばさんの弟にしては顔立ちが違い過ぎてない?・・・って云ったらハルキのお母さんに怒られるか。ごめん。」
「...........まあ、それは俺も常々思っていた。母さんに言わせると身長の低いのは血筋だそうだ。顔立ちは、自分もいいと思ってるからな、怖いよな、思い込みって。」
「ははは・・・ひどいな、ハルキ。おばさん可哀そう。きっと若い頃は美人だったんだよ。」
「おまえ、それの方が怒られるぞ。若い頃は、って・・・・」
母親の事を持ち出して笑ってしまうのは申し訳ないが、おかげで少しだけ気分が明るくなった気がする。
確かに、トンちゃんの顔立ちは母方の祖父母とも違う様で。歳を重ねる度に余計強く感じた。
俺の場合は、身長や体格は父親譲りで、顔はいいのか悪いのか自分では分からない。祐斗は好きな顔だと云ってくれるから、まあ、不細工ではないのだろうと思う。
「祐斗はお母さんに似ているよな。あんまり父親の顔は見てないから知らないけど。祐斗も美形だよ。」
そう云ってまじまじと祐斗の顔を覗き込んだ。
「今頃気づくとは・・・ま、いいけど。」
フフッと笑いながら互いの顔を見つめ合うと祐斗が俺の肩に手を置く。
「今はちょっと忙しくて何処へも連れてってやれないけど、その内色々案内するから。まあ、学校が始まれば友達もできるだろうけど。そうしたら友達優先でいいし。」
そんな事をトンちゃんに言われてしまう。友達優先とか絶対ないし。俺はいつでもトンちゃん優先だ。
「ありがとうございます。無理しなくてもいいから、俺にも出来る事あったら言ってよね。」と、一応云っておいた。本当は近くに住んで毎日でも顔を見に来たいぐらいなのに、そこまでしたら叱られそうだ。
「祐斗くんが居る間は二人で楽しんだらいい。遠くに行ってしまうのは淋しくなるね。」
トンちゃんはアメリカに行ってしまう祐斗にそう云う。確かに遠いアメリカへ行ったら、俺たちは会えなくなるかもしれない。そう思ったら急に寂しくなってくる。
「ハルキと充分に楽しんでから、オレはアメリカへ行きます。まあ、暇になったらまた日本へ遊びに来ますよ。その時は徹さんにも遊んでもらいますから、よろしく。」
「ははは、そうだな。祐斗くんならフイッと日本に帰って来そうな気がする。まあ、自由を楽しんだらいいさ。」
あくまでも能天気な祐斗の言葉に、俺もトンちゃんも笑うしかない。
「じゃあ、オレはそろそろ帰るとするよ。明日も仕事が残っててね、何かあったら電話してくれ。」
「うん、今日はありがとう。また連絡するね、おやすみなさい。」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
トンちゃんを玄関で見送った後、祐斗と二人で床に座り込むとバッグの中から着替えを取り出した。
「風呂入っちゃおうか?」
「そうだな。お湯入れて来るから。」
そう云って浴室へと向かう。
バスタブに溜まる湯を見つめながら、これからの自分を少しだけ想像した。
生活力なんて無いのは自覚している。これは少しづつやっていくしかない。大学の環境も全く想像出来ないし、あの受験の日に出会ったヤツの顔なんて覚えているはずもない。これから新しく友達を作っていかなきゃならない。想像するだけで不安になってくる。
「ハルキ~何やってんの?」と、祐斗の声がして漸く気を取り直すと部屋に戻った。
「トオルさん、相変わらずキレイだったな。もう30超えてるのにさ。おばさんの弟にしては顔立ちが違い過ぎてない?・・・って云ったらハルキのお母さんに怒られるか。ごめん。」
「...........まあ、それは俺も常々思っていた。母さんに言わせると身長の低いのは血筋だそうだ。顔立ちは、自分もいいと思ってるからな、怖いよな、思い込みって。」
「ははは・・・ひどいな、ハルキ。おばさん可哀そう。きっと若い頃は美人だったんだよ。」
「おまえ、それの方が怒られるぞ。若い頃は、って・・・・」
母親の事を持ち出して笑ってしまうのは申し訳ないが、おかげで少しだけ気分が明るくなった気がする。
確かに、トンちゃんの顔立ちは母方の祖父母とも違う様で。歳を重ねる度に余計強く感じた。
俺の場合は、身長や体格は父親譲りで、顔はいいのか悪いのか自分では分からない。祐斗は好きな顔だと云ってくれるから、まあ、不細工ではないのだろうと思う。
「祐斗はお母さんに似ているよな。あんまり父親の顔は見てないから知らないけど。祐斗も美形だよ。」
そう云ってまじまじと祐斗の顔を覗き込んだ。
「今頃気づくとは・・・ま、いいけど。」
フフッと笑いながら互いの顔を見つめ合うと祐斗が俺の肩に手を置く。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
俺たちの××
怜悧(サトシ)
BL
美形ドS×最強不良 幼馴染み ヤンキー受 男前受 ※R18
地元じゃ敵なしの幼馴染みコンビ。
ある日、最強と呼ばれている俺が普通に部屋でAV鑑賞をしていたら、殴られ、信頼していた相棒に監禁されるハメになったが……。
18R 高校生、不良受、拘束、監禁、鬼畜、SM、モブレあり
※は18R (注)はスカトロジーあり♡
表紙は藤岡さんより♡
■長谷川 東流(17歳)
182cm 78kg
脱色しすぎで灰色の髪の毛、硬めのツンツンヘア、切れ長のキツイツリ目。
喧嘩は強すぎて敵う相手はなし。進学校の北高に通ってはいるが、万年赤点。思考回路は単純、天然。
子供の頃から美少年だった康史を守るうちにいつの間にか地元の喧嘩王と呼ばれ、北高の鬼のハセガワと周囲では恐れられている。(アダ名はあまり呼ばれてないが鬼平)
■日高康史(18歳)
175cm 69kg
東流の相棒。赤茶色の天然パーマ、タレ目に泣きボクロ。かなりの美形で、東流が一緒にいないときはよくモデル事務所などにスカウトなどされるほど。
小さいころから一途に東流を思ってきたが、ついに爆発。
SM拘束物フェチ。
周りからはイケメン王子と呼ばれているが、脳内変態のため、いろいろかなり残念王子。
■野口誠士(18歳)
185cm 74kg
2人の親友。
角刈りで黒髪。無骨そうだが、基本軽い。
空手の国体選手。スポーツマンだがいろいろ寛容。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる