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相変わらずだね
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「トオルさん、変わってるかなぁ。オジサンになってたらショックだ。」
祐斗の言葉に俺はムッとなって「トンちゃんは変わんないよ、きっと。」と云ってみた。俺の中では一年半前から変わらずに、綺麗な顔をした小柄な男だ。
オジサンだなんて思ってない。
ダンボール箱から生活用品を取り出すと、トイレやバスルームへ持っていく。キッチン用品は適当にシンクの棚や開き戸に突っ込んでおき、鍋もフライパンも仕舞っておいた。
洋服や下着はダンボール箱に入れたまま。後で片付けようと思う。
チャイムが鳴って、トンちゃんが来た。
一瞬、俺が固まってしまい、祐斗が玄関へ行きそうになったが、「あ、俺が出る」といって祐斗を追い越した。
ガチャリ、とドアノブを掴むと開けてみる。
正面に見えた顔は、俺が想像していたより少し小さく感じて、髪の毛が少し伸びていた。
はにかむ様に笑みを浮かべ、俺の目を真っ直ぐ見つめると「大きくなったな。」と云う。
「トンちゃんは相変わらずだね。」
そう云って中に入る様に進め、玄関で靴を脱いで部屋に上がるトンちゃんと横並びになった。確かに、俺の身長は少し伸びたみたい。トンちゃんとの視線の位置が前と違っている。
「こんばんは。お久しぶりです。」と云う祐斗に、「久しぶりだね」と云って笑顔になったトンちゃんは、やっぱり俺の好きな人だと思った。
「なんだ、もう片付け終わりそうか?オレ、手伝う事ないのかな?」
そう云うと、コートを脱いで床に置いた。仕事用の鞄から何か封筒のような物を取り出すと、俺に寄越す。
「何?」と云う俺に、「合格のお祝い。品物よりお金の方が良いと思って。これで必要な物を買えばいいし。」
「ありがとうございます。」
渡された封筒は、少し厚い様な気がした。でも、そのまま俺のバッグに入れておく。
「腹減ってない?」と訊かれ、祐斗は「腹ぺこです」と、遠慮なしに答える。トンちゃんは、祐斗を見ながら笑って「じゃあ、美味いものでも食べに行こう。」と、コートを手に取ると俺たちに云った。
トンちゃんに付いて夜の街を歩いて行く。
アパートから10分ぐらいの所に商店街があって、カフェとかパン屋とか、レストランも何件かあるみたい。
「ここでいいかな。」と云うと、一件の店に入っていくトンちゃん。直ぐに俺と祐斗も後を付いて入る。
店の内装は少し古い感じだったが、お客は結構入っていた。年齢層もバラバラ。でも、何となく美味そうな匂いが漂ってて、腹の虫が刺激されると空いているテーブルに着く。
「ここのオムライス最高だから。」
そういったトンちゃんの顔は、フワッと柔らかくなると懐かしい気分にさせてくれる。
祐斗の言葉に俺はムッとなって「トンちゃんは変わんないよ、きっと。」と云ってみた。俺の中では一年半前から変わらずに、綺麗な顔をした小柄な男だ。
オジサンだなんて思ってない。
ダンボール箱から生活用品を取り出すと、トイレやバスルームへ持っていく。キッチン用品は適当にシンクの棚や開き戸に突っ込んでおき、鍋もフライパンも仕舞っておいた。
洋服や下着はダンボール箱に入れたまま。後で片付けようと思う。
チャイムが鳴って、トンちゃんが来た。
一瞬、俺が固まってしまい、祐斗が玄関へ行きそうになったが、「あ、俺が出る」といって祐斗を追い越した。
ガチャリ、とドアノブを掴むと開けてみる。
正面に見えた顔は、俺が想像していたより少し小さく感じて、髪の毛が少し伸びていた。
はにかむ様に笑みを浮かべ、俺の目を真っ直ぐ見つめると「大きくなったな。」と云う。
「トンちゃんは相変わらずだね。」
そう云って中に入る様に進め、玄関で靴を脱いで部屋に上がるトンちゃんと横並びになった。確かに、俺の身長は少し伸びたみたい。トンちゃんとの視線の位置が前と違っている。
「こんばんは。お久しぶりです。」と云う祐斗に、「久しぶりだね」と云って笑顔になったトンちゃんは、やっぱり俺の好きな人だと思った。
「なんだ、もう片付け終わりそうか?オレ、手伝う事ないのかな?」
そう云うと、コートを脱いで床に置いた。仕事用の鞄から何か封筒のような物を取り出すと、俺に寄越す。
「何?」と云う俺に、「合格のお祝い。品物よりお金の方が良いと思って。これで必要な物を買えばいいし。」
「ありがとうございます。」
渡された封筒は、少し厚い様な気がした。でも、そのまま俺のバッグに入れておく。
「腹減ってない?」と訊かれ、祐斗は「腹ぺこです」と、遠慮なしに答える。トンちゃんは、祐斗を見ながら笑って「じゃあ、美味いものでも食べに行こう。」と、コートを手に取ると俺たちに云った。
トンちゃんに付いて夜の街を歩いて行く。
アパートから10分ぐらいの所に商店街があって、カフェとかパン屋とか、レストランも何件かあるみたい。
「ここでいいかな。」と云うと、一件の店に入っていくトンちゃん。直ぐに俺と祐斗も後を付いて入る。
店の内装は少し古い感じだったが、お客は結構入っていた。年齢層もバラバラ。でも、何となく美味そうな匂いが漂ってて、腹の虫が刺激されると空いているテーブルに着く。
「ここのオムライス最高だから。」
そういったトンちゃんの顔は、フワッと柔らかくなると懐かしい気分にさせてくれる。
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