胸に宿るは蜘蛛の糸

itti(イッチ)

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本当の事

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 シャワーを終えた祐斗は、そのままキッチンに行くと冷蔵庫からペットボトルを出して口を付けた。
ごくごくと飲むたびに上下する喉仏。勢いよく嚥下すると、喉の渇きは癒される。

 それを見ながら、俺は祐斗の服を借りて椅子に背中を預けた。

「腹減ったー。ハルキ、なんか作ってくれよ。」

「えー、俺が?」

「ラーメンでもいいよ。インスタントのがあるから。」

「......仕方ないなー。」


 頭を拭きながら祐斗に云われて、俺は勝手知ったる他人の家。食器棚の下にあるインスタントラーメンの袋を取り出すと、それをテーブルに乗せた。

 大きめのTシャツを被り、ボクサーパンツ姿の祐斗は、椅子に座ると余裕でこっちを見てくる。
早く作れとばかりに促されて、俺は鍋を取り出すとそこに水をはった。


「祐斗、親に金貰ってたのに、それは使わないんだ?まあ、俺がもらった訳じゃないし、ラーメン食えるだけでも有難いけどさ。」

 さっきの5千円はどうしたのかと、気になって云ってみたが、祐斗は思い出した様に立ち上がると穿いていた制服のズボンのポケットに手を突っ込む。

「そうだった、コレあったんだよね。.....ピザでも取れば良かったか。」

 少し残念そうに云うが、「まあ、いいか。オレの小遣いにしておこう。」とお札を広げて財布に入れる。

 もう少し早く云えば良かったと思ったが、お湯も沸いてしまい、仕方なくラーメンを投入。



 テーブルに置いたラーメンには、生たまごが入っているだけ。
これならカップ麺で良かったかも、と思いながら箸をつける。

「.............で、急に泊めてくれって、どうしてなんだよ。セックスまでしてくれちゃってさ。」 

 祐斗に云われて、危うくラーメンを噴くところだった。
呑み込むと、話してしまおうかどうしようかと迷う。こんな話を祐斗にしても、気分を害するだけだし。
ましてや、祐斗は俺がトンちゃんを好きになってしまった事を知っている。父さんの事を話すのは、余計にややこしくなるし.....。

 思案していると、祐斗が「別に訊いても仕方がないけどさ。帰りたくないって事は、親が関係してんだろ?」と、勘を働かせて来る。祐斗には、こういう時ひとつ年上なんだという事を思い知らされる。

「祐斗には隠し事出来ないな。.....でも、これは俺が悪い。俺が親を傷付けたんだから。それは分かってるんだけど、ちょっと時間が欲しくてさ。ごめん。祐斗にばかり頼っちゃって。」

 自分が情けないが、そう云うと頭を下げた。


 
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