上 下
35 / 98

傷付けたくないのに

しおりを挟む
 祐斗の眼が俺の心の奥深くを抉る。
どんなに誤魔化しても俺のウソなんてお見通しなんだ。それだけ祐斗の洞察力は凄いと思った。

「バレバレって........何?」

弱々しい声で訊ねるが、祐斗は俺の身体を倒すと馬乗りになってきた。
体重が掛けられて身動きが出来ない俺は、ただじっと黙るしかない。


「ハルキってさ、徹さんの事好きなんだろ?」

「............え?」

 なんとなく分かっていたが、実際こんなにハッキリと訊かれると否定する言葉も出てこない。

「お前、自分じゃ気づいてないかもだけど、.....前から徹さんの話ししたり一緒に居る時に見せる顔が違うから。最初はアニキの様な存在なんだと思ってたけどさ、一緒にご飯食べてる時とか、ずっと目で追ってる。」

「え?.....うそ」

「ほら、自分じゃ気づかないんだよな。そういうトコが分かりやすいっていうか........ムカつく」

 祐斗が俺の肩を固定すると、顔を近付けてきた。
ここはもう一歩も動けないし、跳ね除ける力はあるかもしれないが、その気力がなかった。
トンちゃんへの気持ちを知られてしまったという焦りが、俺の身体を益々硬くする。

「徹さんってさ、なんていうか年上の割に可愛いし、ちょっかい掛けたくなる存在じゃん?初めて顔を見た時にそう思った。」

「.....だからって、どうして俺が.......」

「そんなのオレが訊きたいよ。どうして好きになった?おじさんだろ?」

 そんな事は云われなくても分かっている。おじさんには違いない。けど、.............

「オレ、ハッキリ言ってハルキのパパと徹さんがデキてるんだと思ってた。」

「は?!....っんで??なんでそんな風に思った?」

「だってさ、前に隣町の駅で見かけた時、徹さんの態度はあからさまだったよ。普通は気付かないかもしれないけど、オレには分かる。同類だからな」

「..............」

”同類” なんて言葉は使ってほしくないが、トンちゃんは自分でゲイだと告白した。
だから分かるのか?

「父さんは、........」

俺が小さな声で話し始めると、祐斗は俺の口を掌で押さえて塞いだ。

「どのみち、ハルキが恋煩いしたって敵わない相手だよ。あっちは大人で、こちらはまだ親離れできない子供だ。」

「お前だって、.....子供のくせに」

 首を振って掌から逃れると云う。自分だけ子供扱いされるのは腹立たしい。

 俺に云われて気を悪くしたのか、祐斗の身体が俺の上から離れてゆっくりと起き上がる事が出来た。
互いに座り込んでうな垂れたまま、時間だけが経った様に思う。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

上司と俺のSM関係

雫@3日更新予定あり
BL
タイトルの通りです。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...