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動揺
しおりを挟む二人並んでゲームに興じていると、憂鬱な気分は少し薄らいだ気がした。
隣で興奮気味に声を出している祐斗は、俺を気遣ってくれているのか.....
時折、俺が負けそうになると笑いながら頭をくしゃりと弄って来る。そうして又、画面に集中すると足をバタバタさせて戦闘開始。
「あーーーっ、ダメだーぁ、全然勝てない!」
そう云うとコントローラーをソファーの上に放り投げる。
モンスター系のは、一応俺の方が強かった。祐斗に勝てるのはゲームくらいなんだけど.....。
「喉、乾いた~」
云いながら立ち上がると、祐斗が部屋から出て行く。
俺はコントローラーをしまうと、祐斗のベッドにゴロリと横たわった。
昨夜はあまり眠れなかったせいで、ゲームに知力と体力を使ってしまえば、急に身体が鉛の様に重くなる。
瞼を閉じていると、ドアが開いて祐斗が戻って来たようだ。そのままベッドに腰掛け、俺の顔を覗き込んでいる気配がする。でも、動きは無くて。ただじっと視線だけを感じていた。
眠くて目が開けられない俺は、祐斗をそのままに気持ちよく眠ってしまった。
* * *
ふと目が覚めて、辺りをぼんやりと見る。
祐斗の姿は無くて、俺はひとりベッドに寝たままで電気も間接照明だけになっていた。
.....もう夜か.....
すっかり寝込んでしまったみたい。身体を起こすとベッドから降りて部屋の電気をつけた。
すると、ドアが開けられて祐斗が顔を見せる。
「あ、起きた?.....腹減ってない?」
「..........ぁぁ、....うん、ごめん寝ちゃったんだな。腹は減ってないけど、いま何時?」
「8時過ぎだよ。オレ、ちょっとカップ麺食ったけど、」
そう云うと部屋に入ってきて俺の携帯を寄越す。
「ママに電話しなよ。何も云って来てないだろ?」
「うん、.....」
時間的には家に帰って来ている頃。俺は家の電話にかけてみた。
『..........はい』
「ぁ...........」
ヤバイ、と思った。電話に出たのはトンちゃんで、心の準備が出来ていない。なんて云えばいいのか...
「あの、....母さんは?」
『姉さんは遅くなるって。.....ハルキ、今どこ?』
「祐斗の家。....俺、今夜は泊めて貰うから、.......」
『.............うん、伝えておく』
「じゃあ、」
電話を切ると胸を押さえる。その様子を見ていた祐斗が、俺のスマホを取り上げて近寄って来る。
「ハルキ、徹さんと何かあったでしょ。.....バレバレだから」
「.......ぇ、」
ドキッとして言葉が出なかった。
途端に心臓はバクバクしだして、祐斗に背を向けるが腕を取られると顔を見つめられる。
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