33 / 98
友人
しおりを挟む
流石に長居をし過ぎたのか、奥から店長らしき人がじっと俺たちに視線を寄越している。
「祐斗、.....そろそろ出ようか。」
奥からの視線を避ける様に、前に座った祐斗に云うと、ポケットから財布を取り出した。
「いいよ、どこ行く?映画とか」
「.....映画って、.....そんなに金持ってないよ、俺。」
「しょうがないなー。じゃあ、うちに行こうか」
「.....ああ、そうする。」
二人で立ち上がってレジに進むと、祐斗が支払ってくれた。
「....ありがと」
礼を云うと、「いいって」と微笑む。お釣りを仕舞う祐斗を見ながら、こういう所は年上だな、と思った。
結局俺は祐斗にもトンちゃんにも甘えてしまうだけで、自分では何も出来ない子供なんだ。偉そうに人に意見を云える訳がなかった。
バス停から祐斗の家まで行くが、二人、特に話す事もなくただじっと外の景色を眺めていた。
* * *
「そういえば着替えとか持ってくんの忘れた。」
急に、祐斗のところに泊ろうと思った俺は、今更ながらにそんな事を思い出す。
財布とスマホを持って家から逃げる様に来てしまったから。
「着替えなんかオレの服貸すし。気にしなくていいよ。」
そう云うとリビングのテレビをつける。
「うん、ありがと」
俺はソファーに腰掛けると、背もたれに身体を預けた。
祐斗の家は広々としていて落ち着く。それに親もいないし、変に気を使う事もなかった。
「ところでさー、夏休みの課題、もう終わった?」
祐斗の質問に「あ、っ......」と現実に引き戻された。
「.....まだ、もう少し残ってた。家に戻ったらやんなきゃ。」
「オレ、もうやっちゃったよ。あとでコピーさせてやる。」
「マジ?......助かるー」
案外勉強だけはちゃんとやってるんだよな、祐斗って。
俺も勉強は出来る方だと思っているけど、それは通っている高校のレベルが普通だからで。
進学高ならきっと順位も落ちるだろう。
「祐斗はさー、どうしてうちの学校に来たの?もっと頭のいい高校だって入れただろうに。」
ソファーで寛ぎながら、ゲームソフトを漁っている祐斗に訊いた。前にも聞いた事があったっけ?
祐斗は俺の方に振り向くと、一瞬眉尻を下げた。
何かマズイ事訊いちゃったかな?と思ったが、またソフトを漁りだすと「別にどこだって良かったから。たまたま受け入れてくれる学校が今のところだったんだよ。」という。
「へぇ、そうか。でも学年トップだし、このままならいい大学も行けそうだな。」
俺は何も考えずにそう云ったが、祐斗からの返事はなかった。
「あった。これやろうぜ。」
ソフトをみつけたのか、そう云うとセットして俺の隣にドカッと腰を降ろした。
「祐斗、.....そろそろ出ようか。」
奥からの視線を避ける様に、前に座った祐斗に云うと、ポケットから財布を取り出した。
「いいよ、どこ行く?映画とか」
「.....映画って、.....そんなに金持ってないよ、俺。」
「しょうがないなー。じゃあ、うちに行こうか」
「.....ああ、そうする。」
二人で立ち上がってレジに進むと、祐斗が支払ってくれた。
「....ありがと」
礼を云うと、「いいって」と微笑む。お釣りを仕舞う祐斗を見ながら、こういう所は年上だな、と思った。
結局俺は祐斗にもトンちゃんにも甘えてしまうだけで、自分では何も出来ない子供なんだ。偉そうに人に意見を云える訳がなかった。
バス停から祐斗の家まで行くが、二人、特に話す事もなくただじっと外の景色を眺めていた。
* * *
「そういえば着替えとか持ってくんの忘れた。」
急に、祐斗のところに泊ろうと思った俺は、今更ながらにそんな事を思い出す。
財布とスマホを持って家から逃げる様に来てしまったから。
「着替えなんかオレの服貸すし。気にしなくていいよ。」
そう云うとリビングのテレビをつける。
「うん、ありがと」
俺はソファーに腰掛けると、背もたれに身体を預けた。
祐斗の家は広々としていて落ち着く。それに親もいないし、変に気を使う事もなかった。
「ところでさー、夏休みの課題、もう終わった?」
祐斗の質問に「あ、っ......」と現実に引き戻された。
「.....まだ、もう少し残ってた。家に戻ったらやんなきゃ。」
「オレ、もうやっちゃったよ。あとでコピーさせてやる。」
「マジ?......助かるー」
案外勉強だけはちゃんとやってるんだよな、祐斗って。
俺も勉強は出来る方だと思っているけど、それは通っている高校のレベルが普通だからで。
進学高ならきっと順位も落ちるだろう。
「祐斗はさー、どうしてうちの学校に来たの?もっと頭のいい高校だって入れただろうに。」
ソファーで寛ぎながら、ゲームソフトを漁っている祐斗に訊いた。前にも聞いた事があったっけ?
祐斗は俺の方に振り向くと、一瞬眉尻を下げた。
何かマズイ事訊いちゃったかな?と思ったが、またソフトを漁りだすと「別にどこだって良かったから。たまたま受け入れてくれる学校が今のところだったんだよ。」という。
「へぇ、そうか。でも学年トップだし、このままならいい大学も行けそうだな。」
俺は何も考えずにそう云ったが、祐斗からの返事はなかった。
「あった。これやろうぜ。」
ソフトをみつけたのか、そう云うとセットして俺の隣にドカッと腰を降ろした。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
温泉地の謎
asabato
大衆娯楽
可笑しな行動を求めて・・桃子41歳が可笑しなことに興味を持っていると、同じようなことで笑っているお父さんが見せてくれたノートに共感。可笑しなことに遭遇して物語が始まっていきます。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる