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酷い男だな

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 翌朝の俺の顔は最悪だった。
泣き腫らした瞼は重く、擦ったせいで鼻の頭も瞼もヒリヒリと痛んだ。
母屋に行けば母さんにどうしたのかと訊かれる。それは絶対にイヤだし、かといってこの部屋に居てもきっと呼ばれるだろう。

 取り敢えず服を着替えると、キャップを目深に被り離れの部屋からそっと出て行く。
幸いこの強い陽射しの中を歩く人も少ない。知っている近所の人に出会う事もなく、駅前のカフェ迄来ると奥のテーブルに身を隠した。

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」

「.....チキンサンドとアイスコーヒー」

「かしこまりました」

 顔を隠すように云ったので、少々不可解な表情を浮かべながら店員が奥に戻って行く。

 もらったおしぼりを先ずは瞼に当てると冷たくて気持ち良かった。
.....あ~、生き返る―
心の中で呟くと、その後でポケットから出したスマフォを手にして祐斗にメールを送る。
昨日は勝手に帰って来てしまい申し訳なかったが、今夜はみんなの顔を見れる気がしない。トンちゃんの顔を見るのも辛かったし、また祐斗に甘えてしまうが泊めて貰おうと思った。


 チキンサンドを頬張っていると祐斗からの返信。

『いいけど夜中に帰るとか云うなよ。』

『サンキュー、云わねぇよ。今、駅前のカフェに居るから時間つぶして夕方に行く』
送信してすぐにホッと胸を撫で下ろした。結局俺が頼るのは祐斗なんだよな.......。

 食べ終わって、時間を潰そうと置いてある雑誌を手にする。店には迷惑な客かもな。待ち合わせをする訳でもなく、ただの暇つぶしだし。

 一応、コーヒーのお代わりをすると又雑誌に目をやるが、40分ぐらい経った頃だろうか「ハルキ」と名前を呼ばれて上を向いたら祐斗が居た。

「えっ、......なんで来た?」

「失礼な、折角暇つぶしに付き合ってやろうと思ったのにさ。......なに、その顔?」

「え?....ああ、.....」

 いかんいかん、不意打ち食らって泣き腫らした顔を隠すの忘れてた。

「何でもねーよ。ちょっと可哀想な映画みただけ。」

 俺の変な言い訳を「ふ~ん」と軽くかわすと、祐斗は横に座る。
ドカッと腰を降ろすと、俺のキャップをヒョイっと摘んで顔を覗き込んだ。

「ハルキが映画で泣くとはねー。......ウソが下手~ 」
「.............」


 注文を取りに来ると、「アイスコーヒー」と云って俺の読んでいた雑誌をヒョイっと取り上げて読み出す。

 祐斗の相変わらずの自由さに、今は少しだけホッとした。ウソと分かっても、それ以上は踏み込んで訊いてこない。そこが俺の好きな所なのかもしれない。



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