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押し込めても出てくる後悔の念

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 その晩は10食分のカレーを作り、多分二人で5食分ぐらい食べてしまったと思う。
半量に減ったカレーをタッパーに入れると、冷蔵庫に仕舞う祐斗。
その姿を腹を擦りながら見る俺は、満腹感で脳の働きが鈍くなったのか眠気に襲われていた。

 昨夜の行いが今頃になって災いする。

「眠い~」

 リビングのソファーに横たわる俺がそう云うと、すかさず祐斗は横に来てニンマリと笑いかける。

「もう寝る?」

「.......いや、流石に食べて直ぐ寝るのは......。」

「じゃあ運動。......しちゃう?」

「.......あー、......いや、ゲームしようか。」

 俺の言葉に「なーんだ」とつまらなさそうな顔をした祐斗だった。

 祐斗の含みのある態度がどうも気になって、俺は一々変な勘ぐりをしてしまう。
ゲームがしたい訳じゃないが、今は腹が落ち着くまで動く気になれない。


 リビングのテレビでゲームが出来る様にセットして、二人で対戦する事一時間半。
大きな声をあげても叱られる家人はいなくて、二人にとっては快適だった。
祐斗もひとりっ子だし、俺と一緒で親が仕事人間だとツマラナイ時間を費やす事も多い。でも、反対に自由は手に入りやすかった。今もこうして部屋の中を好き勝手に使っている訳で、俺の古めかしい家とは違いここのマンションはオール電化の真新しいマンションだった。

「うちもこんな風に新しければいいのにさー。じいちゃんの代からあの家なんだもんな。祐斗が羨ましいよ。」

 ゲームをかたずけながら云えば、「あそこってさ、おじいさんとか亡くなったんなら母屋を建て替えればいいんじゃないか?離れの家とくっつければ広いじゃん。駐車スペースもあるし。」という。

「ああ、確かに。」

 今まで家の事には無関心で、じいちゃんが亡くなってあの離れに住んで、あの頃はまだそんなに傷んでいなかったし、子供の俺は思いつきもしなかった。

「けど、あぁ、そうか........徹さんが居るからやっぱり離れはあのままが良いのかな。」

 トンちゃんの名前を出されて、一瞬ドキリとした。

「もう10年位あそこにいるんでしょ?」

「え?」

「ハルキと徹さん、だよ。」

「あ、.....えーっと、7年かな。」

「一緒に寝たりした?」

「は?トンちゃんと?」

「そう。歳は離れているけど、ちょっと幼い感じするよね、徹さん。お兄ちゃんって感じ。」

「............ま、ぁ.......、そうだけど、......一緒には寝ないよ。もうそんな子供じゃなかったし、俺。」

「そっかー、おしいな。オレだったら寄り添って寝ちゃう。7年前の徹さん、今よりもっとキレイだったろうな~。」


 祐斗が勝手な想像を膨らませる中、俺は昨夜の後悔が心の奥からじわじわと湧き上がってきて、早くトンちゃんの話題から逸らそうと必死になった。

「風呂、入ろっかなー。」

「うん、いいよ。熱いしシャワーでいいよな。先に使っちゃって。」

「ありがと」

 やっと祐斗から解放されて、着替えを手にすると浴室へと向かった。

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