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震撼

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 トンちゃんと離れの家で暮らすようになって、俺は叔父さんというより兄貴の様な気持ちで接していたが、トンちゃんはどんな風に俺を見ているんだろう。やっぱり只の甥っ子としか見てくれていない様で。俺たちの間にある隙間が、年々広がっていく気がする。

 祐斗の事を話しても、最初は驚いていただけで今は気にする様でもないし.....。
俺が男の祐斗と付き合ったりしたらどう思うんだろう。軽蔑されるかな?それとも、どうだっていいと気にも留めてはくれないかな。

 なんだか、自分がトンちゃんに相手にされなくてイラついている様で、冷静に考えれば可笑しい話だ。
俺の事なんかトンちゃんには関係ないんだからさ。

 少し苦い気持ちで布団に入った俺は、やっぱり隣の部屋の様子が気になってしまう。
聞き耳をたてるのは可笑しいけど、部屋のドアが閉まる音がして、きっと風呂に行ったんだと思ったら無意識に身体を起こしてしまった。

 ベッドから降りてそっと部屋を出ると、隣の部屋のドアを開けた。
さっき迄いたトンちゃんの微かな香り。今年になって香水をつける様になったみたいで、俺にはこの香りがトンちゃんのものという認識になった。

 部屋の中を見廻していたら机の上に置かれたスマホが点滅して、俺は一瞬ドキリとした。
電話みたいだが、音はならずに振動音だけ。かなり長くなっていて、悪いと思いながらそっと画面を覗き込む。
そこにあったのは、見慣れた漢字。

『正和』

 それは父の名だった。

 父さんは青森に行くと云っていたが、トンちゃんに何の用事があるんだろう。しかもこんな時間に.....。

 胸の鼓動が速くなり、俺の中の何かがいけない事だと分かっているのに、スマホを手にしてしまうと電話を受けてしまった。

「やあ、さっきは悪かったね。あんな事をキミに云うつもりはなかったのに.......。でも、キスマークをつけてくれだなんて、変な事を云うから.......、徹?聞いてる?怒っているのか?」

 俺が無言で受けているとも知らずに、電話の向こうの父さんは喋り続ける。

「また休みが取れたら青森に来るといい。来年からはちゃんと住む所も決まるし、そうしたら二人で気兼ねなく過ごせるから。.........まだ怒ってる?」


 黙ったままの俺に向かって父さんが訊ねるが、沸々と湧き上がる怒りをどこにぶつければいいのか分からなかった。
今更ながら、俺にも分かる二人の関係。キスマーク。気兼ねなく過ごせるって何?.............いったいいつから.....

 俺は電話を切った。
無言のまま、これが後でどうなるのか分からないが、でも切る事しか出来なかった。




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