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まさか、ね。

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 夜になって母さんが仕事から戻ってくると、祐斗と二人で晩御飯を食べた。

「祐斗くんって面白い子ねぇ。でも、やっぱりハルキより一歳上って感じるわね。しっかり受け答え出来るしさ。」

 祐斗が帰った後で母さんが俺に云った。
そんなの分かり切ってる。同じようにふざけてても、どこか大人びた所がある祐斗は俺に合わせてくれている。
ただ、あんな事はノリでする事じゃないよな。祐斗が俺を好きだという気持ちは有難いが、その気持ちを受け入れる事は出来るんだろうか.....。

 部屋に戻り暫くすると風呂へ入れと云われ、俺は母屋の浴室に向かう。
隣の部屋のトンちゃんはまだ帰って来ていなかった。ここのところ帰りは10時を過ぎている。
大人って大変。朝早くからこんな時間まで仕事しなきゃならないなんて.......。
出来れば俺は5時に終わって帰れる仕事につきたいな。


 風呂に入って身体を洗っていると、ふと祐斗がした事を思い出した。
アイツ、俺のチンコ咥えた.......。マジのヤツだよな。あんなの俺には出来ないかも.......。

 記憶を封印しようとしても、あの感触は身体が覚えてしまった。
あんな飄々と帰って行く祐斗が恨めしい。俺の身体に残していった感触は、こうしていても蘇って来る。
---う、ダメダメ、思い出すな、俺!----



「風呂、出たよ~」

 居間にいる母親に声を掛けて、何か飲み物を持って行こうとキッチンに向かう。と、そこにトンちゃんがいて。

「おかえりトンちゃん、遅かったねぇ。風呂入れば?」

 俺が背後から声を掛けると、振り向きざまに目を丸くして俺を見る。
見られた俺がビックリした。そんなに驚く事ないのに.....。

「ああ、うん、入るよ。」

 ひと言だけ云うと、さっさと自分の部屋に向かったトンちゃん。
なんだか余所よそしいな。最近あまり話をする機会もなくて、本当にひと言ふたこと話して部屋に消えてしまう姿を見るばかりだ。

 父さんに至っては、青森への赴任が決まって色々準備があるらしく、こちらと青森を行ったり来たりの生活。
母さんともすれ違いの生活が続いて、俺は息子として心配でもある。けれど、大人の仕事の事は介入できないし...。


 部屋に戻る途中、トンちゃんの部屋のドアが少し開いていたので、何気なく覗いた俺が「いつも遅いけど身体大丈夫?」と訊きながら部屋に入ると、着替え途中だった様でYシャツを脱ごうとしていた手を止めたトンちゃんが慌てて肌を隠した。

「ぁ、.....ごめん、なんか着替え中に....」

「いいよ、別に。」
 
 そう云いながらも、俺に背中を向けるトンちゃんに違和感を感じた。

 裸なんて見慣れているってのに.....。今更隠す必要がある?

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だから。ハルキは夏休みの課題とかいいの?」

「うん、そんなに課題は出てないから。それに他の生徒は塾とか通ってて、学校の課題よりキツそう。俺はのんびり夏休みを満喫中だよ。」

「そっか、まあ、来年は大変だしね。今のうちに遊んでおくのもいいかも。」

「うん、.....じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」

 トンちゃんの部屋を出て自分の部屋に戻ると、手にしたお茶を開けて飲んだ。
なんとなく感じた違和感。俺に肌を見せたくなかった訳は、........。

- - - まさかキスマークでも付いていたとか?- - - 



 
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