15 / 114
悪くないかも
しおりを挟む
軽いくちづけをして離れると、驚きの眼で俺を見る祐斗。
まさか俺が本当にキスをするとは思わなかったのか?眼を開けたまま固まってしまった。
「おい、ラーメン伸びるから。」
もう一度云うと、ハッと我に返って起き上がった祐斗は「ラーメンはどうでもいい。もう一回しよ。」と俺の腕を掴む。でも、俺にはその気がないから振り解いて背中を向けた。
「なーんだよ、もう!......まぁ、一歩前進したからいいけど.....」
口を尖らせてカップラーメンを手に持つと、渋々啜りだした祐斗。俺は横目で見ながら『フフ』っと笑う。
俺も大概だけど、まあ、悪くはないかな。女の子と違ってベッタリするわけでもないし、祐斗もそれを望んでいる訳じゃないだろう。
「そういえばさ、おじさん。」
「ん?なに?」
トンちゃんの事だと思って、ラーメンを呑み込むと祐斗の顔を見た。
「あ、違う、ハルキのパパの方。昨日の晩に見かけたな。」
「なーんだ、父さんの事か。時々青森まで行ってるから、駅で見かけた?」
「いや、隣町の駅前。」
「は?......隣町のって、.....仕事かなぁ。」
「徹さんと一緒だったよ。」
「.....え?..........アア、あの二人同じ仕事関係だから、かな。」
「仕事中って感じじゃなかったな。」
「どういう事だよ。きっとバッタリ出会ったんじゃないかな。たまたま、.....」
「............ん、そうかも、ね。」
変な事を云う。別に二人が一緒に居ても不思議じゃないのに......。
そう思いながらも、俺の脳裏には子供の頃に見た景色が浮かんでいた。
離れの部屋で、トンちゃんを呼びに云った俺が目にした光景。
父さんは俺を見てハッとしたし、トンちゃんは目を丸くして変な感じだった。
子供心に、これは記憶から消してしまおうと思ったほど、自分の中では得体のしれない不安なもの。
それがいま、祐斗の口から零れたひと言で浮かび上がって来る。
「早く食っちゃえよ。母さんのご飯食えなくなる。」
「うん、」
急いで残りの麺を啜ってしまうと、ごみを片付けにキッチンへと行った。
まさか俺が本当にキスをするとは思わなかったのか?眼を開けたまま固まってしまった。
「おい、ラーメン伸びるから。」
もう一度云うと、ハッと我に返って起き上がった祐斗は「ラーメンはどうでもいい。もう一回しよ。」と俺の腕を掴む。でも、俺にはその気がないから振り解いて背中を向けた。
「なーんだよ、もう!......まぁ、一歩前進したからいいけど.....」
口を尖らせてカップラーメンを手に持つと、渋々啜りだした祐斗。俺は横目で見ながら『フフ』っと笑う。
俺も大概だけど、まあ、悪くはないかな。女の子と違ってベッタリするわけでもないし、祐斗もそれを望んでいる訳じゃないだろう。
「そういえばさ、おじさん。」
「ん?なに?」
トンちゃんの事だと思って、ラーメンを呑み込むと祐斗の顔を見た。
「あ、違う、ハルキのパパの方。昨日の晩に見かけたな。」
「なーんだ、父さんの事か。時々青森まで行ってるから、駅で見かけた?」
「いや、隣町の駅前。」
「は?......隣町のって、.....仕事かなぁ。」
「徹さんと一緒だったよ。」
「.....え?..........アア、あの二人同じ仕事関係だから、かな。」
「仕事中って感じじゃなかったな。」
「どういう事だよ。きっとバッタリ出会ったんじゃないかな。たまたま、.....」
「............ん、そうかも、ね。」
変な事を云う。別に二人が一緒に居ても不思議じゃないのに......。
そう思いながらも、俺の脳裏には子供の頃に見た景色が浮かんでいた。
離れの部屋で、トンちゃんを呼びに云った俺が目にした光景。
父さんは俺を見てハッとしたし、トンちゃんは目を丸くして変な感じだった。
子供心に、これは記憶から消してしまおうと思ったほど、自分の中では得体のしれない不安なもの。
それがいま、祐斗の口から零れたひと言で浮かび上がって来る。
「早く食っちゃえよ。母さんのご飯食えなくなる。」
「うん、」
急いで残りの麺を啜ってしまうと、ごみを片付けにキッチンへと行った。
2
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説


そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。



好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる