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祐斗の好みって.....

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 ステーキを奢って貰った日以来、祐斗はうちに来なくなった。
別に用事がある訳じゃないし、他の友達と遊んでいるのかもしれない。でも、いつも向こうの方から勝手にくっついてくる祐斗の姿がみえないと、不思議なもので物足りない感じがした。

 この間、キスされそうになっておもわず肘鉄を食らわせてしまったからか?
でも、その後何事もなかったかの様にステーキをご馳走になってたし.....。
アイツの性格がよく分からない。

 夏休み中だからといって、特に旅行に出かける訳でもなく、祐斗が来ないと喋る相手もいない。
かといって、クラスの奴に会いたい訳でもないし、多分みんなは塾へ通っていると思う。来年は高校3年で、こんなにのんびりした夏休みを送ってはいないだろうと想像できる。俺も進路を決めないと.........。


「あ~、暇だ。」

 誰もいない母屋のリビングで、ひとり呟いてみるが何の音さえ聞こえて来ない。
セミの鳴く声が微かに聞こえるぐらいで、いよいよ取り残された様な孤独感が俺の身体に沁みついて来た頃。
これはもう祐斗を誘ってプールにでも行くしかない、と立ち上がってスマホを取った。


「あ、俺だけど、プール行かないか?」

『は?.....急だなー。』

 ワンコールで出たから余程暇なんだと思ったのに、祐斗の口ぶりが少し迷惑そうで。
折角の俺の誘いを断るのかと、ちょっとムカつくが、電話の向こうはなんだか音楽と人の話し声で賑やかそうだった。

「あ、どこか出先だった?俺、家に居るんだと思って、.....」

『.......別にいいけど、何時に行く?プールって、どうせ市民プールだろ。」

「市民プール安いから。.....えーっと、じゃあ11時に。俺、ワック買って行くから。」

『オッケー、オレの分もお願いな。じゃあ、」


 あっさりと誘いに乗ってくれて、ホッとしながら部屋に戻ると箪笥の引き出しから水着を引き抜いた。
スポーツバッグに一式を入れると、一応身なりを整えて財布とスマホを仕舞う。

 外に出ると、余計にセミの鳴き声が煩くて、額から流れる汗がどんどん増すように思う。

「クソあっちーな!」

 独り言を云いながらバスに乗り込むと、市民プールを目指した。
バスの中は、小学生や中学生が多くて、ひょっとすると目指す場所は同じかも。でも、夏休みだし仕方ないか。


 途中でワックのビッグサイズセットを二人分買うと、待ち合わせのプールに向かった俺。
入口のところに祐斗の姿を見つけると、おもわず顔が綻ぶ。

俺って、人に飢えてたんだな~、なんて自分で思ったら可笑しくなった。

「サンキュ、ハルキの奢りでいい?」

「...........あー、まあな、俺が誘ったし。いいよ。」

 祐斗にワックの袋を渡すと、そのまま入場料を払って中へ入った。

 ここは中に飲食できるテーブルがあって、持ち込み自由だから小学生の頃や中学生の頃にも来た事がある。
小学生の頃は、忙しい母親に代わって友達の家族と来たりしたが、手作りの弁当が羨ましくてならなかった。

「先に食っちゃおうぜ。」
「うん」

 荷物をロッカーに預けると、奥のテーブルに袋を乗せて早速ビッグサイズのバーガーを口にする。

「うんめ~、」

 祐斗と顔を見会わせて、周りも気にせずバクバクと詰め込んでいく。
ガラスの向こうにプールサイドが見えると、少し混んでいる様な気がした。もちろん小学生が多くて、付き添いの大人もいるから尚更か。流石に俺たちぐらいの高校生は疎ら。

「なんか、ホテルのプールとか行きたいな、オレ。」

「はあ?なに贅沢云ってんだ?バイトもしてない高校生が行けるわけないだろ。」

 祐斗にそう云うと、「ははは、.....だな。」と納得した。

 食べ終わって、更衣室に向かうと早速水着に着替えたが、祐斗の水着を見た俺は絶句した。
真っ赤なビキニが完全に浮いている。こんな地味な市民プールで、こんなビキニを穿く奴は他にいなかった。

「派手だなーっ、超目立つよ。」

「いいだろ、コレ。」

 俺の方が恥ずかしいくらいなのに、祐斗は全く気にせずプールサイドを悠々と歩いて行った。




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