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切ないじゃん

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 結局、二人ともベッドの上でゴロゴロしていたら、その内眠気に襲われてうたた寝をしてしまった。
気付けばもう夕方。コンコン、とドアをノックしながら「ハルキ、ご飯行ける?」と云ったトンちゃんの声に起こされる。

「おい、祐斗、ご飯だって!起きろ!」

 隣の祐斗を揺さぶって、ベッドから起き上がる。

「う~、もう夕方か~」

 思い切り欠伸をしながら祐斗が起き出すと、頭をブルっと震わせて覚醒したようだった。

 俺たちは、離れの部屋を後にすると、トンちゃんの車に乗り込んだ。この車、俺が小学6年生の時に買ったものだけど、既に中古だった様な気がする。もう何年乗っているんだ?

「何処に行くの?何屋さん?」

 俺が晩ご飯を気にして訊くと、トンちゃんはじろっと俺を見る。

「ファミレスじゃないから。今夜はステーキでも食わせてやろうかと思って。」

「えーーッ、マジー??嬉しい!!」

 祐斗と声を揃えて喜んでしまった。本当に俺たちって飢えているんだな。ま、今は育ちざかりだし、実際一日五食くらいはいけると思う。

「どうしたのさ、トンちゃん。給料日だっけ?」

「っはは、違うけど。......ちょっと、旅行用にとっておいた小遣いを使わなくなって。だから、美味しものでも食べようと思ったんだ。ひとりじゃ店に入りにくいしさ。」

「うわー、超ラッキーじゃん、俺ら。.....なに、何処行こうとしてた?」

「..........それは、......別にまだ決めてなかったし。」

「そうなんだ、俺らに使わせちゃって悪かったな。」

 トンちゃんが彼女と何処へ旅行したかったのか、そこも気になるところだけれど、今は飢えた少年の腹に大金を落としてくれて嬉しい。

  普段来ないステーキ屋に入り緊張してくるが、祐斗の方はご馳走になるってのに随分と堂々とした態度で、渡されたメニューを眺めると「コレ、頼んでもいいですか?」と訊いている。あっさりと決めてしまって、隣の俺はまだ一ページしか見ていないというのに....。


「ハルキ、決まった?」

「あ、.....うん、......えーっと、.....」

「ハルキも同じもので。」

 トンちゃんに俺の分まで注文する祐斗。俺が端から眺めたいのをサックリと打ち切ってくれる。

「おま、まだ決めて、ないのに、.....」

 抵抗してみたが、「おっけー、じゃあ三人とも同じのにしよう。」と云ってトンちゃんが店員を呼んだ。

----くそー、、、もっと見たかったのに、-----

 俺がムッとした顔をすると、祐斗はチラッとこちらを見たが、直ぐに視線を外すとトンちゃんに向かってニコリと愛想を振りまいた。まったく、腹の立つ.....。

「徹さんは此処に来る事多いんですか?」

 祐斗がトンちゃんに訊いた。

「多くはないよ。昔、来た事あるよね、ハルキ。」

「え?」

 そう云われて記憶を辿るが、来た覚えがなかった。それに、ステーキなんて家で出てくる安い肉しか食べてないし、もし来た事があるんなら絶対覚えているはず。

「俺、初めてだよ、ここ」

「..........そうだっけ?!」

 誰かと来た記憶を勘違いしているのだと思った。でも、それなら彼女と来たわけじゃないのかも。
オンナと俺を間違って記憶しないだろうし.......。



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