胸に宿るは蜘蛛の糸

itti(イッチ)

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困った友人

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 その日の晩は、母さんが作ったご飯を食べてから少し話をして寝た。

 日曜日、俺もトンちゃんも部屋の掃除に追われて、昼前になると祐斗がコンビニ弁当持参でやって来る。
祐斗の気遣いなのか、トンちゃんの分まで買ってくると居間で弁当を広げた。




「ご馳走になって悪いね。良かったら夕飯は何か食べに行こうか。」

「うわー、やったー。遠慮なく、ご馳走になります!」

 ちゃっかりした所は相変わらず。安いコンビニ弁当で高いディナーにありつこうという.......

「全く、抜け目ないな。トンちゃん、こいつに騙されちゃダメだよ。」

 そう云ったが、微妙な笑みを浮かべて、弁当を食べるトンちゃんだった。
俺が云わなくてもきっと分かっている事なんだろうな。
こういう所はやっぱり年上だと思う。俺や祐斗に対しては、ある程度のわがままも訊いてくれて、その上でいけない事はちゃんと云ってくれる。ご飯を食べに連れて行ってくれるのは、俺と祐斗の仲を微笑ましいと思っているからなのか....。


「ところで、徹さんは彼女いるんですか?今まで訊いた事ないけど、いるんならどんな人か見てみたいなー。」

「.......え、いや、......見せるとかは、ちょっと.......。ごめん。」

 いないと云わない所が正直というか。照れているんだろうか。でも、俺の知らない彼女という存在は気になるところだ。やはりあの電話の相手はその人か。

「祐斗、やめろよ。俺たちみたいな高校生には紹介したくないんだよ。あ、でも俺は親戚だから、その内紹介してもらえるかも。」

「え~、狡いなー。.......徹さんって、綺麗だから普通の女性は近寄りがたいんじゃない?変な対抗意識持たれそう。よっぽど素敵な人なんだろうな~。羨ましい。」

 祐斗は喋りながらも弁当を平らげると、トンちゃんに向かって云うが、その顔がニヤついてて気持ち悪い。

「祐斗くんは、.......ぁ、......何でもない」

「ああ、オレですか?オレはねー、ハルキが好きなんですよ。恋人にしたいんだけど、なってくれそうになくて。」

 突然の報告に、俺は口から食べた物が出そうになる。

「ば、バカな事云うなよ、こんな時に。.......」

 とは云ったが、もう自分で話してしまった事に気付く。まだ返事をした訳じゃない。暫く考えると云ったばかりなのに.....。

「.....祐斗くんは、......あの、......」

「オレは多分ゲイですね。女子にはモテたけど、友達としてしか付き合えなかった。それに、......どちらかというと抱かれたい派なんで。あ、女性になりたいとかじゃなくって。」

 あっけらかんと云ってしまう祐斗には、その言葉の重みが感じられなかった。悲観的ではなくて、ごく普通の話をする様に云うからトンちゃんも「へ~、」なんて感心しているだけ。
俺が祐斗に告白されたって話した時は、もっと目を丸くしていたのに.....。


「オレ、てっきり徹さんもそうなのかと思ってましたよ。あ、気に障ったらごめんなさい。オレ、なんでも口に出して云っちゃう方だから.....。それでハルキに怒られるんだよね。すみません。」

「....................」

 祐斗が変な事を云うもんだから、トンちゃんは黙ってしまったじゃないか....。全く、コイツの性格なんとかしないと、ホントに友達失くしそうだ。

「もう、祐斗は食べたんなら俺の部屋に行ってろよ。ゲームしてていいから。」

「ふぉ~い。そうします。.......じゃあ、夕飯楽しみにしてまーす!」

 そう云って、弁当の空箱をキッチンのゴミ箱に捨てると離れの部屋へと走って行った。

 祐斗がいなくなった後で、俺も弁当箱を片付けるが、トンちゃんはさっきから黙ったままで、俺の友達とはいえ失礼な事を云ってしまって申し訳ないと思った。アイツ、勉強は出来るのに空気が読めないんだ。ここは日本なんだという事を忘れているんじゃないか?


「あの、......祐斗の事、許してやって。アイツ、アメリカ育ちっつーか、、、、、」

「ああ、気にしてないよ。ハッキリと物を云う子は羨ましいぐらい。いい友達だね。あ、.....告白されたんだっけね。」

「うん、.....まだ返事はしてない。よく分かんなくてさ。......ゲイ、っていうのが.....。」

「..........ん、.....そうだね。」


 一瞬だったけど、トンちゃんが泣きそうな顔で笑った。それからすぐに立ち上がると、キッチンへ向かってしまい、俺も祐斗の事が放っておけずに部屋へ向かう。

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