9 / 114
困った友人
しおりを挟む
その日の晩は、母さんが作ったご飯を食べてから少し話をして寝た。
日曜日、俺もトンちゃんも部屋の掃除に追われて、昼前になると祐斗がコンビニ弁当持参でやって来る。
祐斗の気遣いなのか、トンちゃんの分まで買ってくると居間で弁当を広げた。
「ご馳走になって悪いね。良かったら夕飯は何か食べに行こうか。」
「うわー、やったー。遠慮なく、ご馳走になります!」
ちゃっかりした所は相変わらず。安いコンビニ弁当で高いディナーにありつこうという.......
「全く、抜け目ないな。トンちゃん、こいつに騙されちゃダメだよ。」
そう云ったが、微妙な笑みを浮かべて、弁当を食べるトンちゃんだった。
俺が云わなくてもきっと分かっている事なんだろうな。
こういう所はやっぱり年上だと思う。俺や祐斗に対しては、ある程度のわがままも訊いてくれて、その上でいけない事はちゃんと云ってくれる。ご飯を食べに連れて行ってくれるのは、俺と祐斗の仲を微笑ましいと思っているからなのか....。
「ところで、徹さんは彼女いるんですか?今まで訊いた事ないけど、いるんならどんな人か見てみたいなー。」
「.......え、いや、......見せるとかは、ちょっと.......。ごめん。」
いないと云わない所が正直というか。照れているんだろうか。でも、俺の知らない彼女という存在は気になるところだ。やはりあの電話の相手はその人か。
「祐斗、やめろよ。俺たちみたいな高校生には紹介したくないんだよ。あ、でも俺は親戚だから、その内紹介してもらえるかも。」
「え~、狡いなー。.......徹さんって、綺麗だから普通の女性は近寄りがたいんじゃない?変な対抗意識持たれそう。よっぽど素敵な人なんだろうな~。羨ましい。」
祐斗は喋りながらも弁当を平らげると、トンちゃんに向かって云うが、その顔がニヤついてて気持ち悪い。
「祐斗くんは、.......ぁ、......何でもない」
「ああ、オレですか?オレはねー、ハルキが好きなんですよ。恋人にしたいんだけど、なってくれそうになくて。」
突然の報告に、俺は口から食べた物が出そうになる。
「ば、バカな事云うなよ、こんな時に。.......」
とは云ったが、もう自分で話してしまった事に気付く。まだ返事をした訳じゃない。暫く考えると云ったばかりなのに.....。
「.....祐斗くんは、......あの、......」
「オレは多分ゲイですね。女子にはモテたけど、友達としてしか付き合えなかった。それに、......どちらかというと抱かれたい派なんで。あ、女性になりたいとかじゃなくって。」
あっけらかんと云ってしまう祐斗には、その言葉の重みが感じられなかった。悲観的ではなくて、ごく普通の話をする様に云うからトンちゃんも「へ~、」なんて感心しているだけ。
俺が祐斗に告白されたって話した時は、もっと目を丸くしていたのに.....。
「オレ、てっきり徹さんもそうなのかと思ってましたよ。あ、気に障ったらごめんなさい。オレ、なんでも口に出して云っちゃう方だから.....。それでハルキに怒られるんだよね。すみません。」
「....................」
祐斗が変な事を云うもんだから、トンちゃんは黙ってしまったじゃないか....。全く、コイツの性格なんとかしないと、ホントに友達失くしそうだ。
「もう、祐斗は食べたんなら俺の部屋に行ってろよ。ゲームしてていいから。」
「ふぉ~い。そうします。.......じゃあ、夕飯楽しみにしてまーす!」
そう云って、弁当の空箱をキッチンのゴミ箱に捨てると離れの部屋へと走って行った。
祐斗がいなくなった後で、俺も弁当箱を片付けるが、トンちゃんはさっきから黙ったままで、俺の友達とはいえ失礼な事を云ってしまって申し訳ないと思った。アイツ、勉強は出来るのに空気が読めないんだ。ここは日本なんだという事を忘れているんじゃないか?
「あの、......祐斗の事、許してやって。アイツ、アメリカ育ちっつーか、、、、、」
「ああ、気にしてないよ。ハッキリと物を云う子は羨ましいぐらい。いい友達だね。あ、.....告白されたんだっけね。」
「うん、.....まだ返事はしてない。よく分かんなくてさ。......ゲイ、っていうのが.....。」
「..........ん、.....そうだね。」
一瞬だったけど、トンちゃんが泣きそうな顔で笑った。それからすぐに立ち上がると、キッチンへ向かってしまい、俺も祐斗の事が放っておけずに部屋へ向かう。
日曜日、俺もトンちゃんも部屋の掃除に追われて、昼前になると祐斗がコンビニ弁当持参でやって来る。
祐斗の気遣いなのか、トンちゃんの分まで買ってくると居間で弁当を広げた。
「ご馳走になって悪いね。良かったら夕飯は何か食べに行こうか。」
「うわー、やったー。遠慮なく、ご馳走になります!」
ちゃっかりした所は相変わらず。安いコンビニ弁当で高いディナーにありつこうという.......
「全く、抜け目ないな。トンちゃん、こいつに騙されちゃダメだよ。」
そう云ったが、微妙な笑みを浮かべて、弁当を食べるトンちゃんだった。
俺が云わなくてもきっと分かっている事なんだろうな。
こういう所はやっぱり年上だと思う。俺や祐斗に対しては、ある程度のわがままも訊いてくれて、その上でいけない事はちゃんと云ってくれる。ご飯を食べに連れて行ってくれるのは、俺と祐斗の仲を微笑ましいと思っているからなのか....。
「ところで、徹さんは彼女いるんですか?今まで訊いた事ないけど、いるんならどんな人か見てみたいなー。」
「.......え、いや、......見せるとかは、ちょっと.......。ごめん。」
いないと云わない所が正直というか。照れているんだろうか。でも、俺の知らない彼女という存在は気になるところだ。やはりあの電話の相手はその人か。
「祐斗、やめろよ。俺たちみたいな高校生には紹介したくないんだよ。あ、でも俺は親戚だから、その内紹介してもらえるかも。」
「え~、狡いなー。.......徹さんって、綺麗だから普通の女性は近寄りがたいんじゃない?変な対抗意識持たれそう。よっぽど素敵な人なんだろうな~。羨ましい。」
祐斗は喋りながらも弁当を平らげると、トンちゃんに向かって云うが、その顔がニヤついてて気持ち悪い。
「祐斗くんは、.......ぁ、......何でもない」
「ああ、オレですか?オレはねー、ハルキが好きなんですよ。恋人にしたいんだけど、なってくれそうになくて。」
突然の報告に、俺は口から食べた物が出そうになる。
「ば、バカな事云うなよ、こんな時に。.......」
とは云ったが、もう自分で話してしまった事に気付く。まだ返事をした訳じゃない。暫く考えると云ったばかりなのに.....。
「.....祐斗くんは、......あの、......」
「オレは多分ゲイですね。女子にはモテたけど、友達としてしか付き合えなかった。それに、......どちらかというと抱かれたい派なんで。あ、女性になりたいとかじゃなくって。」
あっけらかんと云ってしまう祐斗には、その言葉の重みが感じられなかった。悲観的ではなくて、ごく普通の話をする様に云うからトンちゃんも「へ~、」なんて感心しているだけ。
俺が祐斗に告白されたって話した時は、もっと目を丸くしていたのに.....。
「オレ、てっきり徹さんもそうなのかと思ってましたよ。あ、気に障ったらごめんなさい。オレ、なんでも口に出して云っちゃう方だから.....。それでハルキに怒られるんだよね。すみません。」
「....................」
祐斗が変な事を云うもんだから、トンちゃんは黙ってしまったじゃないか....。全く、コイツの性格なんとかしないと、ホントに友達失くしそうだ。
「もう、祐斗は食べたんなら俺の部屋に行ってろよ。ゲームしてていいから。」
「ふぉ~い。そうします。.......じゃあ、夕飯楽しみにしてまーす!」
そう云って、弁当の空箱をキッチンのゴミ箱に捨てると離れの部屋へと走って行った。
祐斗がいなくなった後で、俺も弁当箱を片付けるが、トンちゃんはさっきから黙ったままで、俺の友達とはいえ失礼な事を云ってしまって申し訳ないと思った。アイツ、勉強は出来るのに空気が読めないんだ。ここは日本なんだという事を忘れているんじゃないか?
「あの、......祐斗の事、許してやって。アイツ、アメリカ育ちっつーか、、、、、」
「ああ、気にしてないよ。ハッキリと物を云う子は羨ましいぐらい。いい友達だね。あ、.....告白されたんだっけね。」
「うん、.....まだ返事はしてない。よく分かんなくてさ。......ゲイ、っていうのが.....。」
「..........ん、.....そうだね。」
一瞬だったけど、トンちゃんが泣きそうな顔で笑った。それからすぐに立ち上がると、キッチンへ向かってしまい、俺も祐斗の事が放っておけずに部屋へ向かう。
2
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説


シロツメクサの指輪
川崎葵
BL
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしてくれる?」
男も女も意識したことないぐらいの幼い頃の約束。
大きくなるにつれその約束を忘れ、俺たちは疎遠になった。
しかし、大人になり、ある時偶然再会を果たす。
止まっていた俺たちの時間が動き出した。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
先生の消しゴム
柏木あきら
BL
予備校に勤める雪ノ下の教え子には一世を風靡した元子役がいる
昔テレビでいつも元気な笑顔を見せていた「たかせはやと」ではなく言葉少ない「高頼颯人」。
雪ノ下は彼を気にかけるようになり……
雪ノ下 陽介 予備校教師
高頼 颯人 元人気子役の青年

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる