上 下
8 / 98

分からない事だらけだ

しおりを挟む
 華奢な肩を支えると、なんだか俺の方が保護者の様な気分になってくる。
穏やかな笑顔は消えて、今、目の前の不安げな顔をしたトンちゃんが心配でならない。

「俺に何か出来る事ある?なんでも云ってよ。」

 顔を覗くように見ると云ったが、俺の目は見てくれない。瞼は閉じたまま、ただ眉を下げて辛そうにしているだけ。

「..........ありがとう、ハルキ。もう大丈夫だから、自分の部屋に行っていいよ。.....ぁ、この事は姉さんには、」

「云わないから、安心して。俺、トンちゃんの味方だからさ。」

「.............ありがとう、...........」

「じゃあ、おやすみ。」

「うん、おやすみ。」



 後ろ髪を引かれる思いで自分の部屋に戻る。なんとなく気分は良くなかったが、あんまり居座っても迷惑だろうし。
それに、今まで知らなかったトンちゃんの恋人の影に、少なからず動揺していた。
まあ、甥っ子の俺なんかに恋人の相談も変な話だけれど。でも、昔、学生の頃の付き合った人の話しとか、普通はしてくれたって良さそうなものを.....。

 いつだって俺とトンちゃんの間には溝があって、どんなに仲良くしていてもそこは埋められはしなかった。



 寝る前に、祐斗へメールを返す。

『よく考えてみる。暫く時間をくれ。』

 簡単な返信をすると、スマフォを枕もとに置いて横たわった。

 
 翌日は、母親が起こしに来るまでぐっすり寝ていて、朝ご飯は一人で食べる事になった。もちろんトンちゃんは休日でもしっかり起きている。洗濯を自分でして、母親の出勤時間に合わせて散歩をすると、戻ってからは食事が終わった俺の食器を洗おうとする。

「いいって、自分で洗うし。」

「ハルキは勉強してきなよ。いくら成績良くても、三年になったらどうか分からないよ?周りは塾へ行ってるんだろ?」

「そうだけど、.....。この夏休みくらいは自由にさせてよ。来年は死ぬ気で勉強するからさ。」

 そんな事を云うが、本当は勉強なんてどうでも良かった。
大学とか、進む道も決めていないのに、何を頑張れっていうんだ?

 結局、トンちゃんが洗った食器を布巾で拭いていくと、それを棚に仕舞う。
仕舞いながら、昨夜の事が頭から離れなくて、妙に明るいトンちゃんの様子が気になった。
俺が気にしたところでどうにもならないが、夜までは又二人きり。

 父の仕事が忙しくなって帰りは遅いし、母親も更に忙しくなって、人がいないせいか、こんな狭い家なのに風通しのいい家になった気がした。夏休みとなれば俺の天下で、だから祐斗も入り浸りになる。明日、祐斗が来たらトンちゃんの事を相談してみようかな......。アイツなら恋愛について詳しそうだし。

 トンちゃんに何て声を掛けたらいいのか............。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

好きか?嫌いか?

秋元智也
BL
ある日、女子に振られてやけくそになって自分の運命の相手を 怪しげな老婆に占ってもらう。 そこで身近にいると宣言されて、虹色の玉を渡された。 眺めていると、後ろからぶつけられ慌てて掴むつもりが飲み込んでしまう。 翌朝、目覚めると触れた人の心の声が聞こえるようになっていた! クラスでいつもつっかかってくる奴の声を悪戯するつもりで聞いてみると なんと…!! そして、運命の人とは…!?

前後からの激しめ前立腺責め!

ミクリ21 (新)
BL
前立腺責め。

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...