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分からない事だらけだ
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華奢な肩を支えると、なんだか俺の方が保護者の様な気分になってくる。
穏やかな笑顔は消えて、今、目の前の不安げな顔をしたトンちゃんが心配でならない。
「俺に何か出来る事ある?なんでも云ってよ。」
顔を覗くように見ると云ったが、俺の目は見てくれない。瞼は閉じたまま、ただ眉を下げて辛そうにしているだけ。
「..........ありがとう、ハルキ。もう大丈夫だから、自分の部屋に行っていいよ。.....ぁ、この事は姉さんには、」
「云わないから、安心して。俺、トンちゃんの味方だからさ。」
「.............ありがとう、...........」
「じゃあ、おやすみ。」
「うん、おやすみ。」
後ろ髪を引かれる思いで自分の部屋に戻る。なんとなく気分は良くなかったが、あんまり居座っても迷惑だろうし。
それに、今まで知らなかったトンちゃんの恋人の影に、少なからず動揺していた。
まあ、甥っ子の俺なんかに恋人の相談も変な話だけれど。でも、昔、学生の頃の付き合った人の話しとか、普通はしてくれたって良さそうなものを.....。
いつだって俺とトンちゃんの間には溝があって、どんなに仲良くしていてもそこは埋められはしなかった。
寝る前に、祐斗へメールを返す。
『よく考えてみる。暫く時間をくれ。』
簡単な返信をすると、スマフォを枕もとに置いて横たわった。
翌日は、母親が起こしに来るまでぐっすり寝ていて、朝ご飯は一人で食べる事になった。もちろんトンちゃんは休日でもしっかり起きている。洗濯を自分でして、母親の出勤時間に合わせて散歩をすると、戻ってからは食事が終わった俺の食器を洗おうとする。
「いいって、自分で洗うし。」
「ハルキは勉強してきなよ。いくら成績良くても、三年になったらどうか分からないよ?周りは塾へ行ってるんだろ?」
「そうだけど、.....。この夏休みくらいは自由にさせてよ。来年は死ぬ気で勉強するからさ。」
そんな事を云うが、本当は勉強なんてどうでも良かった。
大学とか、進む道も決めていないのに、何を頑張れっていうんだ?
結局、トンちゃんが洗った食器を布巾で拭いていくと、それを棚に仕舞う。
仕舞いながら、昨夜の事が頭から離れなくて、妙に明るいトンちゃんの様子が気になった。
俺が気にしたところでどうにもならないが、夜までは又二人きり。
父の仕事が忙しくなって帰りは遅いし、母親も更に忙しくなって、人がいないせいか、こんな狭い家なのに風通しのいい家になった気がした。夏休みとなれば俺の天下で、だから祐斗も入り浸りになる。明日、祐斗が来たらトンちゃんの事を相談してみようかな......。アイツなら恋愛について詳しそうだし。
トンちゃんに何て声を掛けたらいいのか............。
穏やかな笑顔は消えて、今、目の前の不安げな顔をしたトンちゃんが心配でならない。
「俺に何か出来る事ある?なんでも云ってよ。」
顔を覗くように見ると云ったが、俺の目は見てくれない。瞼は閉じたまま、ただ眉を下げて辛そうにしているだけ。
「..........ありがとう、ハルキ。もう大丈夫だから、自分の部屋に行っていいよ。.....ぁ、この事は姉さんには、」
「云わないから、安心して。俺、トンちゃんの味方だからさ。」
「.............ありがとう、...........」
「じゃあ、おやすみ。」
「うん、おやすみ。」
後ろ髪を引かれる思いで自分の部屋に戻る。なんとなく気分は良くなかったが、あんまり居座っても迷惑だろうし。
それに、今まで知らなかったトンちゃんの恋人の影に、少なからず動揺していた。
まあ、甥っ子の俺なんかに恋人の相談も変な話だけれど。でも、昔、学生の頃の付き合った人の話しとか、普通はしてくれたって良さそうなものを.....。
いつだって俺とトンちゃんの間には溝があって、どんなに仲良くしていてもそこは埋められはしなかった。
寝る前に、祐斗へメールを返す。
『よく考えてみる。暫く時間をくれ。』
簡単な返信をすると、スマフォを枕もとに置いて横たわった。
翌日は、母親が起こしに来るまでぐっすり寝ていて、朝ご飯は一人で食べる事になった。もちろんトンちゃんは休日でもしっかり起きている。洗濯を自分でして、母親の出勤時間に合わせて散歩をすると、戻ってからは食事が終わった俺の食器を洗おうとする。
「いいって、自分で洗うし。」
「ハルキは勉強してきなよ。いくら成績良くても、三年になったらどうか分からないよ?周りは塾へ行ってるんだろ?」
「そうだけど、.....。この夏休みくらいは自由にさせてよ。来年は死ぬ気で勉強するからさ。」
そんな事を云うが、本当は勉強なんてどうでも良かった。
大学とか、進む道も決めていないのに、何を頑張れっていうんだ?
結局、トンちゃんが洗った食器を布巾で拭いていくと、それを棚に仕舞う。
仕舞いながら、昨夜の事が頭から離れなくて、妙に明るいトンちゃんの様子が気になった。
俺が気にしたところでどうにもならないが、夜までは又二人きり。
父の仕事が忙しくなって帰りは遅いし、母親も更に忙しくなって、人がいないせいか、こんな狭い家なのに風通しのいい家になった気がした。夏休みとなれば俺の天下で、だから祐斗も入り浸りになる。明日、祐斗が来たらトンちゃんの事を相談してみようかな......。アイツなら恋愛について詳しそうだし。
トンちゃんに何て声を掛けたらいいのか............。
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