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綺麗なおじさん
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7時をまわってトンちゃんの帰りを待つが、携帯に電話が入ると発信者はトンちゃんだった。
「はい、今どこ?」
「悪い、ちょっと遅くなった。今から駅前まで出て来れる?駅前にファミレスあるからそこで食おうか。」
「うん、いいよ。じゃあ、7時半ごろに行くね。」
「ああ、そうして。」
トンちゃんと待ち合わせをするのは久しぶり。
中学生の時には、トンちゃんが給料日に何か美味しいものを食べさせてくれるといって、俺は食い物に釣られると駅前のレストランに来ていた。そして、帰る頃に丁度父親の帰宅時間と重なって、駅から自宅まで3人で帰ってきたものだった。
駅まではあっという間で、先にファミレスに着いたのは俺の方みたい。中を確認すると案内された席でトンちゃんを待った。
「ごめん、遅くなった。もう何か注文した?」
そう云って俺の向かいに慌てて座るトンちゃん。走って来たのか、息を切らせていた。
「ああ、注文はまだだけど、.....。そんなに焦らなくていいよ。どうせ俺たち二人きりだしさ、帰りが遅くても俺は夏休み中だから。トンちゃんは明日も仕事?」」
「あー、オレも休み。明日は土曜日だから。」
「そ?じゃあ、ゆっくりしようよ。何喰おうかな~」
大きなメニューを広げると端から見ていく。
「変わらないな、ハルキは。」
「え、何?」
「前も思ったけど、そうやってメニューの隅から隅まで見るよな。そんなに食えないだろうに。」
思い出した様にトンちゃんが云う。
確かに俺にはそういう所があった。見た物はすべて美味しそうで、選んでいるだけで食べた気になる。で、結局は定番のハンバーグになるんだけれど。
注文したものが運ばれてくると、腹ペコの俺はがっついて口に詰め込んでいくが、トンちゃんは相変わらず上品に口に運んでいた。
しゃんと背筋を伸ばして、ゆっくりと食べる姿は俺から見たら上品で、顔だって綺麗な顔をしている。
なのに、どうして彼女が出来ないのだろう......。会社には女がいないのかな.....。
そんな事を思いながら、目の前の綺麗なおじさんを眺めた。
「デザート、注文しなよ。何でもいいよ。」
「おっ、やったー。.......じゃあ、イチゴワッフル。」
「ワッフルって、.....ホントよく食うよなー。デカくなる訳だ。」
「だってー、育ち盛りですから!トンちゃんこそ、もっと食べなよ。」
「オレはもう腹いっぱい。」
そう云うと注文をしてくれて、それが来る迄スマフォを弄りながらトンちゃんの話しも訊く。
会社の事は俺にはよく分からないが、トンちゃんは父親の会社との繋がりもあって、だから家でも仕事の話をするのだと云った。
「大人って大変だな。....父さんも来年は単身赴任だっていうし。青森なんてメッチャ遠いじゃん、中々帰って来られないだろうな~。」
「......遠いよ、ね。.....はぁー........」
深いため息をついたトンちゃん。スマフォを弄りながらも、俺は上目遣いにトンちゃんを見ると、やっぱり胸がモヤッとするのを感じる。その溜め息は何の意味を持つのだろう。
運ばれてきたイチゴワッフルを平らげて、家に戻ると俺は母屋の方に向かう。
風呂の用意をして、冷蔵庫からアイスクリームを取り出すとそれを頬張ってテレビをつけた。
「また食ってんのか?!.....ホントに若いっていいよなー。」
そう云うとトンちゃんもテレビの前に来た。
「ハルキ、今身長何センチ?」
床に腰を降ろすとそう訊かれ、「今は177センチかな。一年で2センチ伸びてんだよね。トンちゃんは?」と聞き返す。
「ん~、170センチ。残念ながらもう成長は止まってる。」
「あー、......まぁ、いいよ。トンちゃんは顔が綺麗だから、身長は関係ない。」
ふと、母親に云われていた事が頭を過ぎった。身長の話はタブーだった様な気がする。
でも、いう程気にはしていないみたいで良かったと思った。それに、本当にトンちゃんは男の割には顔立ちが綺麗で、もし女装でもしたら気付かないかもしれない。
「褒められてるんだか慰めてくれているんだか.....。ハルキが正和さん似で良かったよ。背も高いしガタイも良くなって、スポーツしないのがもったいないくらい。女の子にもモテるだろ?」
「.....モテないよー。俺を好きって云って来るのは男だけ。ほら、アイツ、祐斗だよ。愛してる、だなんて云うんだから。」
つい、そんな事を云ってしまった俺。別に話のネタにする気はなかったが、それを訊いたトンちゃんは、俺の顔を見ると目を丸くした。
「はい、今どこ?」
「悪い、ちょっと遅くなった。今から駅前まで出て来れる?駅前にファミレスあるからそこで食おうか。」
「うん、いいよ。じゃあ、7時半ごろに行くね。」
「ああ、そうして。」
トンちゃんと待ち合わせをするのは久しぶり。
中学生の時には、トンちゃんが給料日に何か美味しいものを食べさせてくれるといって、俺は食い物に釣られると駅前のレストランに来ていた。そして、帰る頃に丁度父親の帰宅時間と重なって、駅から自宅まで3人で帰ってきたものだった。
駅まではあっという間で、先にファミレスに着いたのは俺の方みたい。中を確認すると案内された席でトンちゃんを待った。
「ごめん、遅くなった。もう何か注文した?」
そう云って俺の向かいに慌てて座るトンちゃん。走って来たのか、息を切らせていた。
「ああ、注文はまだだけど、.....。そんなに焦らなくていいよ。どうせ俺たち二人きりだしさ、帰りが遅くても俺は夏休み中だから。トンちゃんは明日も仕事?」」
「あー、オレも休み。明日は土曜日だから。」
「そ?じゃあ、ゆっくりしようよ。何喰おうかな~」
大きなメニューを広げると端から見ていく。
「変わらないな、ハルキは。」
「え、何?」
「前も思ったけど、そうやってメニューの隅から隅まで見るよな。そんなに食えないだろうに。」
思い出した様にトンちゃんが云う。
確かに俺にはそういう所があった。見た物はすべて美味しそうで、選んでいるだけで食べた気になる。で、結局は定番のハンバーグになるんだけれど。
注文したものが運ばれてくると、腹ペコの俺はがっついて口に詰め込んでいくが、トンちゃんは相変わらず上品に口に運んでいた。
しゃんと背筋を伸ばして、ゆっくりと食べる姿は俺から見たら上品で、顔だって綺麗な顔をしている。
なのに、どうして彼女が出来ないのだろう......。会社には女がいないのかな.....。
そんな事を思いながら、目の前の綺麗なおじさんを眺めた。
「デザート、注文しなよ。何でもいいよ。」
「おっ、やったー。.......じゃあ、イチゴワッフル。」
「ワッフルって、.....ホントよく食うよなー。デカくなる訳だ。」
「だってー、育ち盛りですから!トンちゃんこそ、もっと食べなよ。」
「オレはもう腹いっぱい。」
そう云うと注文をしてくれて、それが来る迄スマフォを弄りながらトンちゃんの話しも訊く。
会社の事は俺にはよく分からないが、トンちゃんは父親の会社との繋がりもあって、だから家でも仕事の話をするのだと云った。
「大人って大変だな。....父さんも来年は単身赴任だっていうし。青森なんてメッチャ遠いじゃん、中々帰って来られないだろうな~。」
「......遠いよ、ね。.....はぁー........」
深いため息をついたトンちゃん。スマフォを弄りながらも、俺は上目遣いにトンちゃんを見ると、やっぱり胸がモヤッとするのを感じる。その溜め息は何の意味を持つのだろう。
運ばれてきたイチゴワッフルを平らげて、家に戻ると俺は母屋の方に向かう。
風呂の用意をして、冷蔵庫からアイスクリームを取り出すとそれを頬張ってテレビをつけた。
「また食ってんのか?!.....ホントに若いっていいよなー。」
そう云うとトンちゃんもテレビの前に来た。
「ハルキ、今身長何センチ?」
床に腰を降ろすとそう訊かれ、「今は177センチかな。一年で2センチ伸びてんだよね。トンちゃんは?」と聞き返す。
「ん~、170センチ。残念ながらもう成長は止まってる。」
「あー、......まぁ、いいよ。トンちゃんは顔が綺麗だから、身長は関係ない。」
ふと、母親に云われていた事が頭を過ぎった。身長の話はタブーだった様な気がする。
でも、いう程気にはしていないみたいで良かったと思った。それに、本当にトンちゃんは男の割には顔立ちが綺麗で、もし女装でもしたら気付かないかもしれない。
「褒められてるんだか慰めてくれているんだか.....。ハルキが正和さん似で良かったよ。背も高いしガタイも良くなって、スポーツしないのがもったいないくらい。女の子にもモテるだろ?」
「.....モテないよー。俺を好きって云って来るのは男だけ。ほら、アイツ、祐斗だよ。愛してる、だなんて云うんだから。」
つい、そんな事を云ってしまった俺。別に話のネタにする気はなかったが、それを訊いたトンちゃんは、俺の顔を見ると目を丸くした。
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