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第四章
出会い
しおりを挟む翌日、早速うちへやって来た水野さん。
朝ご飯がまだだと云った僕の為にサンドウィッチを買ってきてくれた。
「それにしても早過ぎませんか?まだ8時ですよ。」
そう云った僕に、「お年寄りは朝が早いのよ。今から向かっても家にいらっしゃるかどうか。」と云って自分用に買ったコーヒーカップの蓋を開けた。
テーブルで向かい合って朝食を食べながら、昨夜の話の続き。
「昨日帰ってから考えたんだけど、原稿に書かれていた様な不思議な事って女性にしか起きてないよね。」
水野さんが云ったが、確かにそうだ。少なくともおじさんが何かを願って叶えられたという事はなかった。
自分の病気が治った事も、おじさんが自分で願った事じゃなくて母が願った事。
「......そうですね。だから僕に姉か妹がいないかを確認したかった?」
「そうよ、真壁家の女性には何か因縁めいたものがあるのよ!なんかワクワクしない?」
「........いや、別に。むしろ怖いですよ。それに従姉妹の美乃利さんになんと言えばいいのか。」
「あ~そうだったね。ごめん。」
水野さんは少しだけ申し訳なさそうに下を向いた。
身支度を整えて住所を書いたメモを手にすると、僕と水野さんは部屋を出る。
相変わらずの蒸し暑さにゲンナリしながら、スマホの地図アプリを見ると目的地へ向かった。
バス停が近くにあって、母はこのバス停を使っていたのかもしれない。
しばらく進んで行くと、閑静な住宅地に出る。建物は古く、この一角だけが昭和の佇まいをしていた。なんとなく取り残された様な感じだ。
「こっちの道路を挟んで向こう側は、新しい道路を造るのに立ち退きしたみたいね。」
「ああ、だからなんか此処だけ雰囲気が違うんだ。」
そういいながら、古い住宅の表札を確認して進む。ただ、一軒家の家には真壁という表札は見当たらなくて。
どんどん進んで行くと、路地の奥に古いアパートが見えた。二階建てで少し薄暗い感じのアパートは、朝だというのに人の気配が感じられない。住んでいる人はいるんだろうか、と思った僕に、「此処よ」という水野さんの声が響く。
「えっ、此処?」
「そう、アパートの名前は書かれてなかったけど、番地の後に104って......。4号室でしょ。」
水野さんがそういうので、僕はもう一度確認してアパートの敷地に入って行く。
4号室。玄関の扉の前に立つと、表札を見るが何も書かれていない。
2人で顔を見合わせた。間違いだったらどうしよう。こんな朝早くから。それも日曜日だ。もし自分の所に間違って訪ねてこられたら、絶対に不愉快な顔をすると思う。
「どうします?」
小声で水野さんに訊く。
「此処まで来たんだから。もし違う人なら謝るしかないよ。」
そう云ってドアの横にある呼び鈴みたいなものを押した。
「あっ」というまに水野さんの指はボタンから離され、中から人の気配がするか耳を澄ます。
「は~い」という声が微かに聞こえた。
ドキドキしながら待っていると、ドアが開けられる。
徐々に開いていく扉から見えたのは、白髪の髪を一つにまとめて薄いサングラスのようなメガネをかけたおばあさんの顔。
水野さんのイラストの人だと思った。
「あの、突然すみません。真壁さんですか?」
僕は少し上擦りながら声を震わせて訪ねた。
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