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第三章

新たな謎が

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 リビングでテーブルを囲むと、僕とおじさん、そして美乃利さんの三人は顔を見合わせて誰かが話し出すのを待っている。お地蔵さまの事といっても、説明のし難い事柄ばかり。母が願いを唱える度に、救われた命がある反面、何故か亡くなる人もいる。

 
 どうやって話そうかと思案していると、美乃利さんは「おばさんが北海道を出てからの事って、お父さん知ってる?」とおじさんに訊ねた。

「姉さんとは6歳も離れているからなぁ。両親から聞く話しか知らないんだ。それに、....音信不通になってしまったし.....。」

 おじさんはそう云うと少しだけ寂しそうに俯く。

「お地蔵さまの事で何か話を聞いたとか、そういった事は?」

 僕がおじさんに訊くと、首を捻って「無かったな。姉さんが度々お参りをしていたって母親から聞いてはいたけど、ぼくも小さい頃に見た記憶はある。でも、ぼくはあそこに行くのがなんだか嫌だった。」という。

「佑二くんには話していなかったけど、うちは昔この辺りの地主だったみたいで。開拓して移り住んだ人たちの村が此処にあったらしい。戦争で昔の資料なんかは残っていないから、はっきりした事は分からないけど、親父からはそう訊いていた。」

「地主、ですか。.....だからこんなに広い屋敷が?」

「だけど、ほとんどの人は生活のしやすい土地に出てしまって、戦争が終わってからも戻って来る家族は少なかった。今ここに住んでいるのは、戦後移り住んだ人達ばかり。だから、うちが地主だった事を知る人もいないんじゃないか?」

「おじいさんはあのお地蔵さまの事は?.....普通、家の敷地にあるのを不思議と思うんじゃないですか?」

 僕はおじさんに訊いてみる。一般的にはお寺やお墓で見かけるしかないお地蔵さま。庭に、それもひと目につかない場所にある。それを不思議に思わなかったのだろうか。

「親父は、...........なんだか話したがらなくてさ。それに気にしなければ特に問題もないから。」

「......だけど、母はお地蔵さまのせいでいじめられたって、.............」

 母の原稿に書かれていた事をおじさんに話す。

「......そうか、........ぼくは知らなかったなぁ。ぼくはお地蔵さまの事でいじめられた事が無いから。まあ、元々友人は少ない方だしね。」

 そう云って苦笑いをするおじさんに、今まで静かに話しを聞いていた美乃利さんが口調を荒げる。

「私もいじめられた事があるのに!.....まあ、そんなに酷い事はされてないけど....」と。

 美乃利さんの顔を見たおじさんは、ゆっくり立ち上がると「気づかなかった。ごめんな。」と云った。
そして隣の仏間の襖を開けると、仏壇の下の引き出しをおもむろに引き出した。
僕と美乃利さんはじっとその様子を目で追う。

「親父の一番上の姉さんが、.....どこかで生きているとは思うんだけど。」と、一枚の写真を取り出してこちらに戻ってくる。

 手にした写真をテーブルに置きながら、僕たちの顔を見ると「行方知れずでね。......姉さんと一緒だよ。祐二くんの母親と。」と云って頭を下げた。

「え?!」

 これには僕と美乃利さんの二人が驚きの声をあげた。
おじいさんの姉にあたる人も行方知れずになっている?


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