14 / 36
第三章
新たな謎が
しおりを挟む
リビングでテーブルを囲むと、僕とおじさん、そして美乃利さんの三人は顔を見合わせて誰かが話し出すのを待っている。お地蔵さまの事といっても、説明のし難い事柄ばかり。母が願いを唱える度に、救われた命がある反面、何故か亡くなる人もいる。
どうやって話そうかと思案していると、美乃利さんは「おばさんが北海道を出てからの事って、お父さん知ってる?」とおじさんに訊ねた。
「姉さんとは6歳も離れているからなぁ。両親から聞く話しか知らないんだ。それに、....音信不通になってしまったし.....。」
おじさんはそう云うと少しだけ寂しそうに俯く。
「お地蔵さまの事で何か話を聞いたとか、そういった事は?」
僕がおじさんに訊くと、首を捻って「無かったな。姉さんが度々お参りをしていたって母親から聞いてはいたけど、ぼくも小さい頃に見た記憶はある。でも、ぼくはあそこに行くのがなんだか嫌だった。」という。
「佑二くんには話していなかったけど、うちは昔この辺りの地主だったみたいで。開拓して移り住んだ人たちの村が此処にあったらしい。戦争で昔の資料なんかは残っていないから、はっきりした事は分からないけど、親父からはそう訊いていた。」
「地主、ですか。.....だからこんなに広い屋敷が?」
「だけど、ほとんどの人は生活のしやすい土地に出てしまって、戦争が終わってからも戻って来る家族は少なかった。今ここに住んでいるのは、戦後移り住んだ人達ばかり。だから、うちが地主だった事を知る人もいないんじゃないか?」
「おじいさんはあのお地蔵さまの事は?.....普通、家の敷地にあるのを不思議と思うんじゃないですか?」
僕はおじさんに訊いてみる。一般的にはお寺やお墓で見かけるしかないお地蔵さま。庭に、それもひと目につかない場所にある。それを不思議に思わなかったのだろうか。
「親父は、...........なんだか話したがらなくてさ。それに気にしなければ特に問題もないから。」
「......だけど、母はお地蔵さまのせいでいじめられたって、.............」
母の原稿に書かれていた事をおじさんに話す。
「......そうか、........ぼくは知らなかったなぁ。ぼくはお地蔵さまの事でいじめられた事が無いから。まあ、元々友人は少ない方だしね。」
そう云って苦笑いをするおじさんに、今まで静かに話しを聞いていた美乃利さんが口調を荒げる。
「私もいじめられた事があるのに!.....まあ、そんなに酷い事はされてないけど....」と。
美乃利さんの顔を見たおじさんは、ゆっくり立ち上がると「気づかなかった。ごめんな。」と云った。
そして隣の仏間の襖を開けると、仏壇の下の引き出しをおもむろに引き出した。
僕と美乃利さんはじっとその様子を目で追う。
「親父の一番上の姉さんが、.....どこかで生きているとは思うんだけど。」と、一枚の写真を取り出してこちらに戻ってくる。
手にした写真をテーブルに置きながら、僕たちの顔を見ると「行方知れずでね。......姉さんと一緒だよ。祐二くんの母親と。」と云って頭を下げた。
「え?!」
これには僕と美乃利さんの二人が驚きの声をあげた。
おじいさんの姉にあたる人も行方知れずになっている?
どうやって話そうかと思案していると、美乃利さんは「おばさんが北海道を出てからの事って、お父さん知ってる?」とおじさんに訊ねた。
「姉さんとは6歳も離れているからなぁ。両親から聞く話しか知らないんだ。それに、....音信不通になってしまったし.....。」
おじさんはそう云うと少しだけ寂しそうに俯く。
「お地蔵さまの事で何か話を聞いたとか、そういった事は?」
僕がおじさんに訊くと、首を捻って「無かったな。姉さんが度々お参りをしていたって母親から聞いてはいたけど、ぼくも小さい頃に見た記憶はある。でも、ぼくはあそこに行くのがなんだか嫌だった。」という。
「佑二くんには話していなかったけど、うちは昔この辺りの地主だったみたいで。開拓して移り住んだ人たちの村が此処にあったらしい。戦争で昔の資料なんかは残っていないから、はっきりした事は分からないけど、親父からはそう訊いていた。」
「地主、ですか。.....だからこんなに広い屋敷が?」
「だけど、ほとんどの人は生活のしやすい土地に出てしまって、戦争が終わってからも戻って来る家族は少なかった。今ここに住んでいるのは、戦後移り住んだ人達ばかり。だから、うちが地主だった事を知る人もいないんじゃないか?」
「おじいさんはあのお地蔵さまの事は?.....普通、家の敷地にあるのを不思議と思うんじゃないですか?」
僕はおじさんに訊いてみる。一般的にはお寺やお墓で見かけるしかないお地蔵さま。庭に、それもひと目につかない場所にある。それを不思議に思わなかったのだろうか。
「親父は、...........なんだか話したがらなくてさ。それに気にしなければ特に問題もないから。」
「......だけど、母はお地蔵さまのせいでいじめられたって、.............」
母の原稿に書かれていた事をおじさんに話す。
「......そうか、........ぼくは知らなかったなぁ。ぼくはお地蔵さまの事でいじめられた事が無いから。まあ、元々友人は少ない方だしね。」
そう云って苦笑いをするおじさんに、今まで静かに話しを聞いていた美乃利さんが口調を荒げる。
「私もいじめられた事があるのに!.....まあ、そんなに酷い事はされてないけど....」と。
美乃利さんの顔を見たおじさんは、ゆっくり立ち上がると「気づかなかった。ごめんな。」と云った。
そして隣の仏間の襖を開けると、仏壇の下の引き出しをおもむろに引き出した。
僕と美乃利さんはじっとその様子を目で追う。
「親父の一番上の姉さんが、.....どこかで生きているとは思うんだけど。」と、一枚の写真を取り出してこちらに戻ってくる。
手にした写真をテーブルに置きながら、僕たちの顔を見ると「行方知れずでね。......姉さんと一緒だよ。祐二くんの母親と。」と云って頭を下げた。
「え?!」
これには僕と美乃利さんの二人が驚きの声をあげた。
おじいさんの姉にあたる人も行方知れずになっている?
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
若月骨董店若旦那の事件簿~水晶盤の宵~
七瀬京
ミステリー
秋。若月骨董店に、骨董鑑定の仕事が舞い込んできた。持ち込まれた品を見て、骨董屋の息子である春宵(しゅんゆう)は驚愕する。
依頼人はその依頼の品を『鬼の剥製』だという。
依頼人は高浜祥子。そして持ち主は、高浜祥子の遠縁に当たるという橿原京香(かしはらみやこ)という女だった。
橿原家は、水産業を営みそれなりの財産もあるという家だった。しかし、水産業で繁盛していると言うだけではなく、橿原京香が嫁いできてから、ろくな事がおきた事が無いという事でも、有名な家だった。
そして、春宵は、『鬼の剥製』を一目見たときから、ある事実に気が付いていた。この『鬼の剥製』が、本物の人間を使っているという事実だった………。
秋を舞台にした『鬼の剥製』と一人の女の物語。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
白が嫌いな青~剣と密室の頭脳戦~
キルト
ミステリー
【決して瞳を合わせてはいけない】
『魔眼病』瞳を合わせただけで感染する奇病が蔓延する世界。
偶然出会った孤独な男女はある約束を交わした。
お互いに嘘をついたまま次第に惹かれ合う二人。
その幼い感情が恋と呼ばれ始めた頃……想いを伝えられないまま互いの記憶を失くし突然飛ばされた。
女は密室で『断罪ゲーム』と呼ばれる推理ゲームに巻き込まれ。
男は異世界で記憶を取り戻す戦いに巻き込まれる。
ミステリーとファンタジー。
人々の嘘と恋が交わる時、世界の謎が明かされる。
※女主人公(サヤカ)の生き残り推理ゲームと
男主人公(優介)の記憶を取り戻す異世界バトルが交互に描かれています。
目次の最初に名前を記載しているので参考にして下さい。
全三十話

姉妹 浜辺の少女
戸笠耕一
ミステリー
警視庁きっての刑事だった新井傑はとある事件をきっかけに退職した。助手の小林と共に、探偵家業を始める。伊豆に休暇中に麦わら帽子を被った少女に出会う。彼女を襲うボーガンの矢。目に見えない犯人から彼女を守れるのか、、新井傑の空白の十年が今解き放たれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる