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第二章

いじめの代償

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 原稿用紙に書かれた文字を追ううちに、少し気になるところが出てきた。


「動物が早く死ぬって云ったよね。」と、美乃利さんに訊く。

「ええ、お父さんはそう云ってました。.......たしか」

「そうか」と返事はしたが、続きの文章には病気の犬は元気になったと書かれていた。

「犬は死んでないね。少なくともこの時の病気は治ったみたい。」

「そうですか。じゃあ、どうしてそんな事を云ったんだろう?」


 その先をずっと読んでいくと、近所の友達の飼い猫が死んでしまった話とか、他所のペットは亡くなっている様だった。その時の母の気持ちが書かれていて、お地蔵さまにお願いをしたから私の飼い犬は助かったのだと綴っている。本気でそう思っていたのか........。

「お地蔵さまにお願いしたから犬は助かったって書いてあるんだけど、そんな事ってないよねぇ。霊験あらたかな地蔵菩薩かなにかなのかなぁ。..........まさかね。」

 半分冗談交じりに云ってみたが、美乃利さんは真面目な顔付きになると、僕の手から原稿用紙を取り上げて読んでいった。


「.............おばさん、毎日お参りしてたんだ。すごいなー。」

 美乃利さんが感心するのも分かる気がした。小学生の子が犬の為に毎日お地蔵さまにお参りするって、普通なんだろうか?
まあ、大事なペットだし、そういう気持ちになるのかなぁ。


「あ、......中学生の時の事が書いてありますね。」

 僕から持って行った原稿用紙を眺めながら美乃利さんは声をあげる。

「あー、なんか、..........いじめ?的な事が..........」

「え?」

 気になった僕は、その部分の用紙を受け取ると目を通した。

「私もあったって云ったでしょ?いじめみたいな事。」と、美乃利さんは云った。

「あー、そう云ってたね。お地蔵さまが家にあるっていう事で.....だったね。」

「そうなんです。きっとおばさんも一緒。この辺りは昔から住んでいる人ばかりだし、うちって変に古めかしい建屋だから余計に云われる。」

「あっ、............この人も怪我をしたって。美乃利さんをいじめてた人も怪我したとか言ったよね?」

「ええ、そのおかげっていうか、周りは段々何も云わなくなって。まぁ、私をいじめる人はいなくなりましたね。」

 単に似た事例だったのか。同じ年頃によくある子供のいじめ。それがお地蔵さまに関する事でも、年代はかなり違っているのに.......。
ただ、ここからの文面は、なんというか前の感じとは違った雰囲気で。
母は、多分自分でも疑問に思い始めたんだろう。

 飼い犬の病気が治り、でも周りの家のペットは死んでしまう。
そして、自分をいじめた生徒たちは次々に怪我や病気になってしまう。

 自分の周りで起こり始めた何かが気になって仕方ない様だ。それをどうやって書けばいいか分からないと、文章からは読み取れた。

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