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第二章

はじめましての従妹

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 おばさんに呼ばれてリビングに向かう。

 扉を開けると、背の高い茶髪のセミロングヘアの女の子が笑みを浮べて僕を見た。

「美乃利です、はじめまして、.....ですよね?」

「あ、ああ、はじめまして、祐二です。」

 互いに照れくさくて、名前を云った後で俯き加減になる。

「まあ、座ってお茶でも飲んで。」と、おばさんが持ってきた紅茶を出してくれると、僕は美乃利さんの向かいに座った。

「東京、いいなー。いつか私も行ってみたいです。渋谷とか秋葉原とか新宿、六本木。もう都会って感じで、テレビでしか見た事ないから。」

 美乃利さんは目を輝かせると僕に云って来るが、確かに人口の多さはハンパないけど東京しか知らない僕にとってはこの北海道の方が充分素敵なところに思えた。

「住んでるとあまり良さが分からなくて。僕の住んでる場所はそんなに都会的じゃないから。」

「そうなんですか?でも、遊ぶ場所が沢山あるじゃない。」

「遊びは、.....働き始めたら会社と家の往復だけだし、たまの休みは寝ていたいっていうか.....。なんか年寄りみたいな事云ってるね、僕。」

 云ってしまって恥ずかしくなる。ここ最近は母の病院と会社と家の中でしか活動していなかった。

「もったいないですよー。祐二さんって27歳でしょ?彼女とデートとかどこにいくんです?やっぱりネズミランドですか?」

「いや、高校か大学の時に行ったきりだな。.....彼女もいないし。」

「え~、益々もったいなーい。祐二さんイケメンなのに。」

 美乃利さんのパワーに押されそうになると、おばさんが「美乃利ったら、自分だって彼氏いないくせに。」と云って少し話の熱が下がった。

 互いに恋人のいない者同士の様だ。

「何処か行ってみたいところってありますか?」

 そう訊かれてふと思ったが、北海道も広すぎて有名な場所は出てくるがそこまでの距離感はつかめていない。それに、先ずは気になるところといったら”お地蔵さま”が出てくる。

「あの、この敷地にあるお地蔵さまって。」

「ああ、なんか前にお父さんが電話で云ってた。.....ありますよ、案内しますね。」

 そう云うと、紅茶を飲み干して立ち上がる。

 僕も美乃利さんの後に付いて立ち上がると、「お花でもお供えしたらいいわ」と、おばさんが買ってきていたのかキッチンから数本の花を持ってきた。

 花を持って玄関から出ると、門までの長い道を歩いて行くが、そこを通り越すとさらに進んでいく。

「この屋敷は広いねー。」と、歩きながら美乃利さんに云うが、「広いだけでなんにもないから、外側は古いままだし。私ならマンションでも建てて家賃収入で暮らすけど。」と現実的な言葉が返って来る。

「家の改装したって聞いたけど、外側は殆ど残したんだね?」

「そうなんですよ。この家って何百年も前の物らしくて、家の柱見ました?すっごく太いでしょ。解体するだけでも何百万円もかかるらしいんです。だから修理しながら住んでるという。」

「あー、そうなんだね。でも立派な家だし、古民家っていま流行りだし、素敵じゃないか。」

「まあ、そうですね。......あと、あのお地蔵さまがあるから土地を売ろうと思ってもね~。」

「お地蔵さま付きの屋敷なんて聞いた事ないな。」

「でしょ?昔、子供の頃は同級生に気味悪がられて、虐められそうになったんですよ、私。」

「え、....いじめ?」

「そう、....でも、何故かそういう子たちが怪我したりして、私に危害を加える事は無くなったんです。」

「............ふうん、そうなんだ.......」

 話しながら歩き進めると、小さな祠の様な物の中に置かれたお地蔵さまの姿が見えて来た。




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