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91.合流

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「おう! テツじゃねぇか! あっ、ガイもいたか。大変なんだよ! 聖ドルフ国がよ、侵略されてるってんだ!」

 その言葉を聞いて驚いたが、同時に大丈夫じゃないだろうかという気もする。
 何せ、あの国にはヒロがいるからだ。

「でも、ヒロがいますし」

「そのヒロからの救援だ」

 その言葉を聞いた瞬間に頭をフル回転させる。
 目を閉じて内容を漏らさず聞き取る準備を行う。

「状況を聞かせてください」

「あぁ。まず、聖ドルフ国は隣国のイドヒ帝国に侵略されている。帝国は魔王を倒した山の先の国だ」

「なるほど、居なくなったのをいい事に……」

「そうだ。障害が亡くなったため攻めてきたようだ。ヒロが出張ろうとしたが、王都を空にするわけにも行かないようなんだ」

 たしかに王都を手薄にする訳には行かないだろう。何処から攻めてくるかも定かではないのだ。

「でだ、王都と魔王山の中間で軍隊を押し返そうとしているパーティー達がいる。その援護に行って欲しいそうだ」

 そこで以前指導したことがあるパーティーを思い出した。
 もしかして……。

「パーティー名分かりますか?」

「主要な所はな。漆黒の牙、草原の輝き、後は紅蓮の炎だったか……みんなもうすぐBランクに上がれるくらいのパーティーらしい」

 目をつぶって少し気持ちをおちつける。
 そうか。

 あの時はただ生意気な子供だと思っていたが、頑張ってたんだな。
 たしか、Dランクだったはずだから相当強くなったんだな。

 強気なオラオラしてた赤髪のイフト。
 しっかりそうに見えて少し抜けてるアーク。
 ビビりまくってビクビクしてたエアリー。

 そんなに前でもないのに懐かしい。
 もうすぐBランクなんて凄いじゃないか。

 俺が行くまで死ぬんじゃないぞ。
 少しの間の指導だったが、弟子は弟子だ。
 俺が助けに行かないと。

「俺が行きます。紅蓮の炎は以前俺が指導しました」

「あぁ。他はどうする?」

「レイとショウに声をかけてもらえますか? 暁の面々と後から来るように伝えてください。俺は先に行きます!」

「わかった」

 ジンさんとの打ち合わせを終えて。
 ガイさんとアリーを見る。

「ガイさん、アリー、ルリー、ミリーさんと家族水入らずで過ごしててください。俺は、ちょっと行ってきます」

 ムッとした顔をするガイさん。
 何が悪いことを言ったか?
 そう思っていると。
  グイッと顔を近づけて。

「そういう所はまだ分かってねぇんだな! テツ! お前も、もう家族だろ?  お前がいねぇと家族水入らずにならねぇぞ?」

 思わぬガイさんの言葉に。
 言葉が詰まり胸が熱くなる。

「……っす、すぐに……戻ります」

「早く来いよ? この街は俺に任せろ」

「頼みます」

 ガイさんに頭を下げると。
 アリーが前にいた。

「一人で行っちゃうんですか?」

「あぁ。急がないとな。アリーは待っててくれ」

 アリーが胸に頭を預ける。
 上目遣いで見上げて。

「無事に帰ってきてね?」

「あぁ。俺は、死なんさ」

 頭を撫でてニコッと笑う。
 少し寂しそうに笑うアリーを見て。
 生きて帰ってくるという覚悟を決めた。

 俺は、諦めない。
 必ず、生きて帰る。
 そう胸に誓い、ギルドを出た。

 街を疾走する。
 街の人に声を掛けられるが、手を挙げて挨拶するだけに留める。

 森に突入する。
 今回は、最短距離を行く。

 アビットが横から突如飛んできた。
 脇目も振らず、ナイフでたたき斬る。
 血を払う。

 走りながら処理する。
 ゴブリンも居たが、たたっ斬って通り過ぎる。
 
 S、Aランクの領域に来て空気が変わる。
 しかし、俺は構うことなく進む。
 エンオンが現れたが、刀で一刀の元に伏せる。

 真っ直ぐ。
 ただ真っ直ぐ進む。
 聖ドルフ国に入った。

 魔力運用は大丈夫。
 まだまだ持つ。
 歩いて一週間ほどの距離を、駆け抜ける。

 街が見えてきた。
 街の反対側には無数の人が群がっている。
 アイツらが、イドヒ帝国か。

 前線で戦っている赤い髪が目立つ。
 押されている様だ。
 
 刀を構え。
 抜刀する。

「黒刃」

 黒い刃が迫る。
 ザンッと数人を真っ二つにした。
 イフトが振り返る。

「えっ? テツさんじゃん! 何? 助けに来てくれたの?」

「あぁ。助けに来た。一応弟子だからな」

 イフトの問いかけに答えると。
 ガッハッハッと笑った。

「テツさん! すげぇ強くなってねぇ?」

「テツさん! なんで?」

「え、えっ!? テ、テツ……さん?」

 イフトは強いことに驚いているが、アークは居るのが疑問なんだろう。
 エアリーはビクビクしながらも仲間を回復させてあげている。

「聖ドルフ国には俺の親友がいてな。前線で頑張ってる冒険者達がいるから助けてあげて欲しいって救援要請があったんだ」

「いや、実際結構辛かったからよかった! テツさんが来てくれれば百人力だぜ!」

 迫る兵士を切り捨てながら答えるイフト。
 俺もナイフでバッタバッタと倒しているが、数が半端じゃない。

「数が多いな」

「これを倒しても、次の日には更に多い人数が来たりするんだよ? 疲れるったらねぇよ!」

 俺の疑問にイフトが答えてくれる。
 それにしても……。

「そんなに人を寄越してるのか」

 相手の目的は聖ドルフ国の侵略すること。
 何のためにこの国が欲しいのだろうか。
 その謎はすぐに解明される。
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