85 / 98
85.ルリーの父親
しおりを挟む
宿を出て元気に歩いていた一行。
王都まではまだ距離がある。
しかし、段々と息があがってきた。
「君たち、大丈夫か?」
チラッと見たのは暁の三人とアリーにミリーである。
肩で息をしている。
「俺は大丈夫だが、他は大丈夫とは言えない。次の街で休憩させてくれないか?」
「あぁ。そうしよう」
丁度見えてきた街に入ろうと────。
「止まれ!」
いきなり止められた。
武装している集団のようだ。
身構える。
「テツ、待て」
シーダが前に出る。
話し合いをするようだ。
「俺は、ムルガ王国近衛師団師団長のシーダだ。なぜこのようなことをする!? リーダーと話をさせてくれ!」
「しばしまて!」
声だけが聞こえるが回りを囲まれているようだ。
矢や魔法が飛んで来ないとも限らないため、警戒は怠らない。
時間が過ぎるのを長く感じた。
それだけでもスタミナは消費する。
「はぁ。なんで騎士様がルリーを……」
「えっ!?」
やって来たのは目に傷のある大男。
その大男は目を見開いている。
あれ? その特徴って……。
驚いたのはアリーもだった。
「お父さん!?」
「アリー……なんでここに?」
そこに来たのは紛れもなくガイさんらしかった。
アリーの反応からも分かる。
「えっ? アリーちゃんのお父さんなの? あの人はあたいのお父ちゃんだよ?」
「「「えぇ!?」」」
どういう事だ?
こっちで子供ができていたのか?
「お父さん?」
アリーからは強烈な気が出ている。
それは有無を言わせない圧倒的な圧力。
これには俺は逆らえないな。
「は、はぃ」
「ちゃんと話してくれるんですよね?」
引きつった笑顔が恐ろしい。
ガイさんの顔も引き攣っている。
「あ、あぁ。こっちに来てくれ。中で話そう」
「す、すげぇ」
「頭領がビクビクしてる?」
「何者だ……?」
仲間たちが口々に驚いている所を案内された方へ皆で移動する。
ルリーの肩を抱きながらアリーは進む。
「ねぇ! アリーちゃんはあたいのお姉ちゃんってことなの!?」
無邪気な質問をぶつける。
心配になってチラッとアリーを見ると聖母のような笑顔だった。
優しい目でルリーを見る。
「うん。そうね。お父さんのことがなくたって、私はルリーちゃんのお姉さんよ?」
「ホントに!? やったぁ! お姉ちゃんができたぁ!」
飛び跳ねて喜んでいる。
可愛いものである。
これからガイさんからどのような話がでるのだろうか。
アリーとミリーさんはガイさんが死んだと思っていた。
それが生きていて子供を育てているとなると。
話次第では修羅場になりかねない。
「ここで話そう」
平屋に通された。
会議室の様になっていて。
長テーブルに椅子が十数個並んでいる。
「まずは、自己紹介からだな。俺は大地の剣って集団で活動している頭領のガイだ。さっきのやり取りの通りアリーの父親だ」
「さっきも名乗ったが────」
そこから騎士団、姫様、暁の三人が自己紹介をして。
次は俺の番。
「初めましてですが、よくお話は聞いております」
「ほう?」
ガイさんの目がギラリと光る。
これは娘を取られる前の父親の抵抗だろうか。
「テツと言いまして、冒険者をしています。実は、アリーとミリーさんのお宅に居候させて頂いております」
「なにぃ!?」
机をダンッと叩き、立ち上がるとこちらに詰め寄る。
「お父さん!」
「な、なんだ?」
止めてくれたのはアリーだった。
ガイさんを睨み付けている。
「話は最後まで聞いて!」
「あ、あぁ。すまない」
大人しく座り直すと腕を組んで目を瞑った。
話を聞いてくれるようだったので、出会ったところから最近の事まで。
一通りを説明した。
「フゥーーーーー」
息を大きく噴き出すガイさん。
やはりアリーと仲良くしているのは気に障ったのだろうか。
そう思っていたら、バッと頭を下げた。
何があったのか。
「テツといったな。礼を言わないといけねぇみてぇだな。アリーとミリー延いてはベルンまで救ってくれて感謝する。本当に有難う」
「いえ。俺もベルンが好きです。ガイさん、あなたがもし生きていたら言わなければいけないと考えていたことがあります」
「なんだ?」
怪訝な顔をして頭を上げた。
「俺はアリーとこれからの人生を共に歩みたいと、そう考えています。お許しを頂きたい」
しばらくの間、ジッと目を合わせていた。
目を瞑り涙を滲ませた。
「有難う。アリーとミリー、そしてベルンを大事にしてくれるテツのような強い男なら大歓迎だ。娘をよろしく頼む」
再び頭を下げた。
俺も慌てて頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
頭を上げると、涙を拭いていたガイさんに宣言する。
「ガイさん、すみません」
「なにが────」
ガイさんの左頬に平手打ちが突き刺さる。
思いっきり叩いたので痛そうな音が響き渡る。
「いっっってぇーーー! 何しやがる!?」
ニコッと笑い。
「ミリーさんからの伝言です」
「実際に叩いたら伝言じゃねぇだろ! 言葉で伝えるもんだろう!?」
「まだ平手にしただけありがたいと思ってください。本当の伝言は生きていたら一発殴って来て頂戴です。悲しませた罰よ。だそうです」
「ぐっ。たしかにアリーとミリーには悪いことをしたな」
「でも、これでチャラでしょう。それで、ガイさんの方は?」
「そうだな。俺とルリーについて話そう。まず────」
ガイさんはこれまでの事を語り始めた。
王都まではまだ距離がある。
しかし、段々と息があがってきた。
「君たち、大丈夫か?」
チラッと見たのは暁の三人とアリーにミリーである。
肩で息をしている。
「俺は大丈夫だが、他は大丈夫とは言えない。次の街で休憩させてくれないか?」
「あぁ。そうしよう」
丁度見えてきた街に入ろうと────。
「止まれ!」
いきなり止められた。
武装している集団のようだ。
身構える。
「テツ、待て」
シーダが前に出る。
話し合いをするようだ。
「俺は、ムルガ王国近衛師団師団長のシーダだ。なぜこのようなことをする!? リーダーと話をさせてくれ!」
「しばしまて!」
声だけが聞こえるが回りを囲まれているようだ。
矢や魔法が飛んで来ないとも限らないため、警戒は怠らない。
時間が過ぎるのを長く感じた。
それだけでもスタミナは消費する。
「はぁ。なんで騎士様がルリーを……」
「えっ!?」
やって来たのは目に傷のある大男。
その大男は目を見開いている。
あれ? その特徴って……。
驚いたのはアリーもだった。
「お父さん!?」
「アリー……なんでここに?」
そこに来たのは紛れもなくガイさんらしかった。
アリーの反応からも分かる。
「えっ? アリーちゃんのお父さんなの? あの人はあたいのお父ちゃんだよ?」
「「「えぇ!?」」」
どういう事だ?
こっちで子供ができていたのか?
「お父さん?」
アリーからは強烈な気が出ている。
それは有無を言わせない圧倒的な圧力。
これには俺は逆らえないな。
「は、はぃ」
「ちゃんと話してくれるんですよね?」
引きつった笑顔が恐ろしい。
ガイさんの顔も引き攣っている。
「あ、あぁ。こっちに来てくれ。中で話そう」
「す、すげぇ」
「頭領がビクビクしてる?」
「何者だ……?」
仲間たちが口々に驚いている所を案内された方へ皆で移動する。
ルリーの肩を抱きながらアリーは進む。
「ねぇ! アリーちゃんはあたいのお姉ちゃんってことなの!?」
無邪気な質問をぶつける。
心配になってチラッとアリーを見ると聖母のような笑顔だった。
優しい目でルリーを見る。
「うん。そうね。お父さんのことがなくたって、私はルリーちゃんのお姉さんよ?」
「ホントに!? やったぁ! お姉ちゃんができたぁ!」
飛び跳ねて喜んでいる。
可愛いものである。
これからガイさんからどのような話がでるのだろうか。
アリーとミリーさんはガイさんが死んだと思っていた。
それが生きていて子供を育てているとなると。
話次第では修羅場になりかねない。
「ここで話そう」
平屋に通された。
会議室の様になっていて。
長テーブルに椅子が十数個並んでいる。
「まずは、自己紹介からだな。俺は大地の剣って集団で活動している頭領のガイだ。さっきのやり取りの通りアリーの父親だ」
「さっきも名乗ったが────」
そこから騎士団、姫様、暁の三人が自己紹介をして。
次は俺の番。
「初めましてですが、よくお話は聞いております」
「ほう?」
ガイさんの目がギラリと光る。
これは娘を取られる前の父親の抵抗だろうか。
「テツと言いまして、冒険者をしています。実は、アリーとミリーさんのお宅に居候させて頂いております」
「なにぃ!?」
机をダンッと叩き、立ち上がるとこちらに詰め寄る。
「お父さん!」
「な、なんだ?」
止めてくれたのはアリーだった。
ガイさんを睨み付けている。
「話は最後まで聞いて!」
「あ、あぁ。すまない」
大人しく座り直すと腕を組んで目を瞑った。
話を聞いてくれるようだったので、出会ったところから最近の事まで。
一通りを説明した。
「フゥーーーーー」
息を大きく噴き出すガイさん。
やはりアリーと仲良くしているのは気に障ったのだろうか。
そう思っていたら、バッと頭を下げた。
何があったのか。
「テツといったな。礼を言わないといけねぇみてぇだな。アリーとミリー延いてはベルンまで救ってくれて感謝する。本当に有難う」
「いえ。俺もベルンが好きです。ガイさん、あなたがもし生きていたら言わなければいけないと考えていたことがあります」
「なんだ?」
怪訝な顔をして頭を上げた。
「俺はアリーとこれからの人生を共に歩みたいと、そう考えています。お許しを頂きたい」
しばらくの間、ジッと目を合わせていた。
目を瞑り涙を滲ませた。
「有難う。アリーとミリー、そしてベルンを大事にしてくれるテツのような強い男なら大歓迎だ。娘をよろしく頼む」
再び頭を下げた。
俺も慌てて頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
頭を上げると、涙を拭いていたガイさんに宣言する。
「ガイさん、すみません」
「なにが────」
ガイさんの左頬に平手打ちが突き刺さる。
思いっきり叩いたので痛そうな音が響き渡る。
「いっっってぇーーー! 何しやがる!?」
ニコッと笑い。
「ミリーさんからの伝言です」
「実際に叩いたら伝言じゃねぇだろ! 言葉で伝えるもんだろう!?」
「まだ平手にしただけありがたいと思ってください。本当の伝言は生きていたら一発殴って来て頂戴です。悲しませた罰よ。だそうです」
「ぐっ。たしかにアリーとミリーには悪いことをしたな」
「でも、これでチャラでしょう。それで、ガイさんの方は?」
「そうだな。俺とルリーについて話そう。まず────」
ガイさんはこれまでの事を語り始めた。
0
お気に入りに追加
1,224
あなたにおすすめの小説
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
150年後の敵国に転生した大将軍
mio
ファンタジー
「大将軍は150年後の世界に再び生まれる」から少しタイトルを変更しました。
ツーラルク皇国大将軍『ラルヘ』。
彼は隣国アルフェスラン王国との戦いにおいて、その圧倒的な強さで多くの功績を残した。仲間を失い、部下を失い、家族を失っていくなか、それでも彼は主であり親友である皇帝のために戦い続けた。しかし、最後は皇帝の元を去ったのち、自宅にてその命を落とす。
それから約150年後。彼は何者かの意思により『アラミレーテ』として、自分が攻め入った国の辺境伯次男として新たに生まれ変わった。
『アラミレーテ』として生きていくこととなった彼には『ラルヘ』にあった剣の才は皆無だった。しかし、その代わりに与えられていたのはまた別の才能で……。
他サイトでも公開しています。
護国の鳥
凪子
ファンタジー
異世界×士官学校×サスペンス!!
サイクロイド士官学校はエスペラント帝国北西にある、国内最高峰の名門校である。
周囲を海に囲われた孤島を学び舎とするのは、十五歳の選りすぐりの少年達だった。
首席の問題児と呼ばれる美貌の少年ルート、天真爛漫で無邪気な子供フィン、軽薄で余裕綽々のレッド、大貴族の令息ユリシス。
同じ班に編成された彼らは、教官のルベリエや医務官のラグランジュ達と共に、士官候補生としての苛酷な訓練生活を送っていた。
外の世界から厳重に隔離され、治外法権下に置かれているサイクロイドでは、生徒の死すら明るみに出ることはない。
ある日同級生の突然死を目の当たりにし、ユリシスは不審を抱く。
校内に潜む闇と秘められた事実に近づいた四人は、否応なしに事件に巻き込まれていく……!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる