転生したら前世チートで無双する

ゆる弥

文字の大きさ
上 下
52 / 98

52.魔王山へ出立

しおりを挟む
「では! 出陣じゃ!」

 騎士団長と十人の精鋭が一緒に行くことになった。騎士団長達は本来は馬で移動するのだが、俺達が徒歩なので、今回は徒歩での移動となる。

 別にいいと言ったのだが、騎士団長が勇者様達が徒歩なのに自分達が馬では申し訳ないと言って聞かなかった。

 着いてくるのはいいのだが、俺達は軽装備だから足取りは軽やかだ。
 だが、騎士たちは鎧を来ているため動き辛い上に重い為すぐバテるのではと心配になる。

「テツ。思ってることは分かるけど、今言っても聞かないと思うよ?」

 俺は、顔に出やすいタイプなのだろうか。
 顔に出てないつもりなのに思ったことを読まれることが多い。
 戦士としてはまだまだ未熟である。

 攻撃する場所なども悟られたりしたら目も当てられない。
 そうならないようにいつもポーカーフェイスのつもりでいる。

「あぁ。言うつもりは無い」

「うん。まずは、魔王山の麓まで行くんだけど、結構な距離があるらしいんだ」

「そうなのか? どのくらいかかる?」

「それが……」

「そんなに長いのか?」

「早くて一ヶ月」

 そんなにかかるのか。
 飯とかどうするつもりなんだ?

「ご飯とかは行くまでの街とかで買い溜めして行くみたい」

 また顔に出ていたか。

「なぁ、ヒロよぉ? 魔物出たら俺が戦って良いんだよなぁ?」

 でたな戦闘狂。
 ショウはホントに我慢というものを知らない。
 ワガママなガキと一緒だ。

「そんなこと言わずに騎士団長にも花を持たせてあげたらいかがかしら?」

「はいっ! そうするっす!」

 分かりやすいやつである。
 その分手懐けやすいということでもあるのだろうが。
 レイの言う事はなんでも聞く。

 極端に言うと、レイに言ってもらえばショウは何でもするのだ。
 そのくらいレイに従順になっている。

 騎士団長達が先頭になって進んでいく。
 雑魚は倒してくれるということで負担を減らすために着いてきてくれているんだとか。
 負担が増えなきゃいいがと思うが。
 それは、言わないであげた方がいいだろう。

 今はまだ街道を進んでいる。
 周りに森が広がっているが、街道は少し歩きやすいように整備されている道である。
 魔物が出ることはないことは無い。

 現に、横からマノシシの気配がする。
 騎士団は気付いていない。

「左から何か来るぞ!」

 俺が言うとようやく気付いたらしい。
 ハッとした顔で構える。
 訓練をしたように陣形を組んでいるんだろう。

 逆三角形のような形で迎え撃つようだ。
 一人が正面から盾で迎え撃つ。

「おぉ!」

 ズンッと盾で受け止めて少しさがりながら突進してきた威力を殺していく。
 そこに周りから剣を突き刺して仕留める。

 うむ。危なげないな。
 よく訓練されている騎士のようだ。
 少数精鋭も頷ける。

「どう? 結構ちゃんとしてるでしょ?」

 ヒロが小声で話しかけてきた。
 俺が心配していたのを分かっていたのだろう。
 心配ないよと言いたいのか。

「あぁ。チームとしてしっかり機能している。安心して任せられるな」

「うん。けど、群れとかが来て、乱戦になるとちょっと分からないけどね」

 仕留めたマノシシを解体しようとしているが上手くいかないようだ。

「俺がやろう」

 マノシシは何度も解体しているからお手の物だ。見本として一回見せておけばいいだろう。

「すまない。テツ殿」

「いえ。見た方が覚えられます。他の方達もその方が良いでしょう」

 ジッと俺が捌いてるのを見ている。
 魔石を取り出すと、歓声が上がった。

「おぉ。そこにあるのか。知らなかったな」

「俺達が実践で戦ったあとは置いて帰ったからな」

「そうやって裂いていけばいいのか」

 口々に捌き方やマノシシについての話をしている。少しいい息抜きになったんじゃないだろうか。
 俺が見てた感じだとかなり身体に力が入っている人達が多かったように思う。

「血抜きはこうです。逆さにして血を抜いておくと後で臭みがなく食べられます。そして、内臓も綺麗に取り、土に埋めます。マノシシの内臓はマズイです。後は、部位に分けます」

「ほほぉ」
「上手いもんだな」
「手馴れてるなぁ」

 見ていた騎士は感心してくれているようだ。
 こういうのは慣れだと思う。
 俺は前世で山篭りをしてた時に身につけたからな。

 まさか、異世界でその経験が役に立つとは夢にも思ってなかった訳だが。
 魔物もほぼ動物と構造が似ているのは意外だった。もう少し訳の分からないつくりをしているのかと思ったから。

「これは、慣れだと思います」

「その歳で相当狩りをしてきたんだな……」

「そうですね。結構一人で狩って捌いて売ってました」

「苦労したんだな。君は……」

 何だか涙ぐみながら肩を叩かれる。
 そんな風に思わせてしまったか。
 アリーに拾われて幸せだったからそこまで辛い思いはしてないんだけどな。

「終わったな? じゃあ、行くぞ! もう少ししたら野営地を探そう!」

 騎士団長が先頭で意気揚々と歩いていく。
 なんか張り切ってる?

「さっきの話聞いて団長、張り切っちゃったみたいだよ? なんでも、大切な女の人を助けるために一緒に討伐に行くんだろ?」

「はぁ。そうですが」

「健気な上にそんなに苦労してきたんだと思ったらいたたまれなかったんだろうな……グスッ」

 その流れはなんでか俺がかわいそうな子になっているのでは?
 なんかこれから大丈夫だろうか?
 
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...