39 / 98
39.異世界で再会
しおりを挟む
「ヒロか?」
「えっ!?…………テツ?」
なぜここに?
俺が殺してしまったはずなのに……。
「テツだよね!? おぉ! なんで? なんでいるの?」
「俺は、転生したんだ」
「あっ、ボクもだよ? 偶然だ─────」
俺は気がつけば頭を下げていた。
「すまなかった!」
ヒロは、俺が殺しをしたく無くなった原因の男。
この男には前世で妻子がいた。
しかし、俺は殺しの依頼が来たために殺したのだ。
ヒロは、唯一俺の本音を話せる男だった。
同業者だったが、以前にチームを組んだ時に意気投合したのであった。
ヒロは好きな人が出来たと言った。
最初は驚いたが、祝福した。
結婚するという。子供が出来たんだとか。
凄いなと思った。
俺達みたいなのでも妻も子供もできるんだって。
だが、組織はそれをよしとはしなかった。
ヒロは組織を辞めようとした。
そして、依頼が来た。
俺は依頼を優先し、ヒロを殺したんだ。
「テツ。頭を上げて?」
「しかし、俺は取り返しがつかないことをした」
「あの時は、ボクも殺される選択肢しかなかったんだ。妻と子供を守る為にはね。だから、お互い様だよ。利害は一致してたよ?」
「……」
俺は、あの時の事をずっと後悔して、何か他に選択肢があったんじゃないかとずっと考えていたんだ。
「テツはすぐそうやって背負い込むからね。良くないよ? そういうとこ。ボクは逆に感謝してるんだ。あの時、殺してくれてありがとう。おかげで、妻と子供は無事だったと思うから。それに、何故か勇者として転生できたんだ。不思議だよね……」
「あぁ。不思議だな……」
「「殺し屋なのに」」
「ぷっ! ははははっ!」
「ふっ! はははっ」
二人で笑い会うのは前世で殺す前に会った時以来だろうか。
「えっ? テツはなんで転生?」
「あぁ。実はな、ヒロを殺した後、もう殺し屋は嫌になってな。ビルから飛び降りたんだ。そしたら、真っ白な空間に神がいて転生させると言うんだ。今までの罪を償うにはこの世界で好きに生きる事なんだそうな」
「そっか。テツも思い詰めちゃったんだ。ちゃんと殺してくれって言えばよかったね……」
「いや、それもおかしいだろう」
「そうだね。組織に疑われるのは避けたかった」
「……そうだ。狩りをしていたのか? 四層にAランクの魔物が出たっていうんで救援に来たとこなんだ」
「あぁー。そうなんだ。多分ボクらがSランクを追いすぎて四層にAランクが追いやられちゃったのかも。ごめんね」
「そういう事だったのか」
だからさっきSランクの魔物が走っていったのか。あれは追われてたんだな。
五層をSランクが走り回ってるからAランクが四層に逃げてきたと。
「おい! そいつ誰なんだよ?」
ヒロの横にいた男が不機嫌そうに聞く。
恐らくなにも知らない中、会話を進められたのが気に入らなかったんだろう。
「前世で同業者だった親友」
いまも親友と言ってくれるのか。
俺はそれだけで心が締め付けられる思いだ。
そう。親友を俺は殺した。
「同業者だと? っつう事はお前も強いのか?」
その男が聞いてきた。
コイツは戦闘狂なのだろうか?
先程の会話と言い荒いイメージしかないが。
「どうだろうな」
「ボクよりは強いよ」
「マジかよ!? ヒロより強いのか!? 戦ってみてぇ!」
おいおい。今はそんなこと言ってる場合じゃない。俺も説明に戻らないと。
「俺はギルドの救援できたから、戻って報告しなければならないんだ」
「あっ、じゃあ、謝罪もかねてボク達も行くよ」
ヒロがそんな提案をしてきた。
それは非常にこっちも助かるが。
「えぇー? またあるくのぉー?」
「大丈夫なんでございますか? そんな勝手なことをしてしまって?」
「ボクが責任持って騎士団長とかには説明するから、テツのいるギルドに行こう」
このパーティのまとめ役って所か?
前世のチームの時もリーダーやってたな。
やっぱりヒロはそういう役割なんだな。
「なぁ!? そのギルド行ったら俺と一戦してくれないか?」
こういう男は一戦してやらないとしつこいタイプだ。
一戦してやるしかない。
「あぁ。落ち着いたらやろう」
「よっしゃ! 早く行こうぜ!」
俺を先頭に街に向かうことにした。
ここからは層が下がっていくのでたいして敵になる魔物はいない。
雑談しながら歩くことになった。
「テツの背負ってるの、エンオンだよね?」
「あぁ。そうだな」
「それ、ソロで狩ったの?」
「そうだ」
「相変わらずデタラメだね?」
「なにがだ?」
「エンオンってソロで狩る魔物じゃないんじゃない?」
「そういうもんなのか? ずっとソロだから分からん」
「はははっ。こっちでも一人なの?」
「戦う時はな……」
「えっ?」
「なんだ?」
「普段の生活は一人じゃないってこと?」
「……あぁ。居候してるんだ」
「ふーん。可愛い子?」
「あぁ。……!?」
「へぇ! テツが女性と住んでるんだ!?」
「ちがっ! 母親も一緒だぞ!?」
「えぇ!? 女性に囲まれて生活してるの? 良いなぁ」
「お前なぁ。買い物の時なんて潜入して仕事する時より緊張するんだぞ?」
「こっちとこっちどっちがいい?って聞かれるやつ?」
「まさしくそうだ。けど、俺は正解を導き出したんだ」
俺は凄いんだぞと威張るように言った。
「ふふふっ。その人達、いい人達なんだね?」
「……あぁ。凄くいい人達なんだ。俺は救われているよ」
「話してる時の顔見ればわかるよ。っていうかさ、若返ってるよね?」
「あぁ。二十歳の体だからな」
「ずるい! ボク変わってないのに!」
「ヒロはそもそも俺より若かっただろ」
「そうだけど、二十三だよ?」
「大してかわらん」
「かわるよぉ!」
他愛もない話をしながら街に向かった。
こんなに楽しい気持ちになったのはいつぶりだろうか。
「えっ!?…………テツ?」
なぜここに?
俺が殺してしまったはずなのに……。
「テツだよね!? おぉ! なんで? なんでいるの?」
「俺は、転生したんだ」
「あっ、ボクもだよ? 偶然だ─────」
俺は気がつけば頭を下げていた。
「すまなかった!」
ヒロは、俺が殺しをしたく無くなった原因の男。
この男には前世で妻子がいた。
しかし、俺は殺しの依頼が来たために殺したのだ。
ヒロは、唯一俺の本音を話せる男だった。
同業者だったが、以前にチームを組んだ時に意気投合したのであった。
ヒロは好きな人が出来たと言った。
最初は驚いたが、祝福した。
結婚するという。子供が出来たんだとか。
凄いなと思った。
俺達みたいなのでも妻も子供もできるんだって。
だが、組織はそれをよしとはしなかった。
ヒロは組織を辞めようとした。
そして、依頼が来た。
俺は依頼を優先し、ヒロを殺したんだ。
「テツ。頭を上げて?」
「しかし、俺は取り返しがつかないことをした」
「あの時は、ボクも殺される選択肢しかなかったんだ。妻と子供を守る為にはね。だから、お互い様だよ。利害は一致してたよ?」
「……」
俺は、あの時の事をずっと後悔して、何か他に選択肢があったんじゃないかとずっと考えていたんだ。
「テツはすぐそうやって背負い込むからね。良くないよ? そういうとこ。ボクは逆に感謝してるんだ。あの時、殺してくれてありがとう。おかげで、妻と子供は無事だったと思うから。それに、何故か勇者として転生できたんだ。不思議だよね……」
「あぁ。不思議だな……」
「「殺し屋なのに」」
「ぷっ! ははははっ!」
「ふっ! はははっ」
二人で笑い会うのは前世で殺す前に会った時以来だろうか。
「えっ? テツはなんで転生?」
「あぁ。実はな、ヒロを殺した後、もう殺し屋は嫌になってな。ビルから飛び降りたんだ。そしたら、真っ白な空間に神がいて転生させると言うんだ。今までの罪を償うにはこの世界で好きに生きる事なんだそうな」
「そっか。テツも思い詰めちゃったんだ。ちゃんと殺してくれって言えばよかったね……」
「いや、それもおかしいだろう」
「そうだね。組織に疑われるのは避けたかった」
「……そうだ。狩りをしていたのか? 四層にAランクの魔物が出たっていうんで救援に来たとこなんだ」
「あぁー。そうなんだ。多分ボクらがSランクを追いすぎて四層にAランクが追いやられちゃったのかも。ごめんね」
「そういう事だったのか」
だからさっきSランクの魔物が走っていったのか。あれは追われてたんだな。
五層をSランクが走り回ってるからAランクが四層に逃げてきたと。
「おい! そいつ誰なんだよ?」
ヒロの横にいた男が不機嫌そうに聞く。
恐らくなにも知らない中、会話を進められたのが気に入らなかったんだろう。
「前世で同業者だった親友」
いまも親友と言ってくれるのか。
俺はそれだけで心が締め付けられる思いだ。
そう。親友を俺は殺した。
「同業者だと? っつう事はお前も強いのか?」
その男が聞いてきた。
コイツは戦闘狂なのだろうか?
先程の会話と言い荒いイメージしかないが。
「どうだろうな」
「ボクよりは強いよ」
「マジかよ!? ヒロより強いのか!? 戦ってみてぇ!」
おいおい。今はそんなこと言ってる場合じゃない。俺も説明に戻らないと。
「俺はギルドの救援できたから、戻って報告しなければならないんだ」
「あっ、じゃあ、謝罪もかねてボク達も行くよ」
ヒロがそんな提案をしてきた。
それは非常にこっちも助かるが。
「えぇー? またあるくのぉー?」
「大丈夫なんでございますか? そんな勝手なことをしてしまって?」
「ボクが責任持って騎士団長とかには説明するから、テツのいるギルドに行こう」
このパーティのまとめ役って所か?
前世のチームの時もリーダーやってたな。
やっぱりヒロはそういう役割なんだな。
「なぁ!? そのギルド行ったら俺と一戦してくれないか?」
こういう男は一戦してやらないとしつこいタイプだ。
一戦してやるしかない。
「あぁ。落ち着いたらやろう」
「よっしゃ! 早く行こうぜ!」
俺を先頭に街に向かうことにした。
ここからは層が下がっていくのでたいして敵になる魔物はいない。
雑談しながら歩くことになった。
「テツの背負ってるの、エンオンだよね?」
「あぁ。そうだな」
「それ、ソロで狩ったの?」
「そうだ」
「相変わらずデタラメだね?」
「なにがだ?」
「エンオンってソロで狩る魔物じゃないんじゃない?」
「そういうもんなのか? ずっとソロだから分からん」
「はははっ。こっちでも一人なの?」
「戦う時はな……」
「えっ?」
「なんだ?」
「普段の生活は一人じゃないってこと?」
「……あぁ。居候してるんだ」
「ふーん。可愛い子?」
「あぁ。……!?」
「へぇ! テツが女性と住んでるんだ!?」
「ちがっ! 母親も一緒だぞ!?」
「えぇ!? 女性に囲まれて生活してるの? 良いなぁ」
「お前なぁ。買い物の時なんて潜入して仕事する時より緊張するんだぞ?」
「こっちとこっちどっちがいい?って聞かれるやつ?」
「まさしくそうだ。けど、俺は正解を導き出したんだ」
俺は凄いんだぞと威張るように言った。
「ふふふっ。その人達、いい人達なんだね?」
「……あぁ。凄くいい人達なんだ。俺は救われているよ」
「話してる時の顔見ればわかるよ。っていうかさ、若返ってるよね?」
「あぁ。二十歳の体だからな」
「ずるい! ボク変わってないのに!」
「ヒロはそもそも俺より若かっただろ」
「そうだけど、二十三だよ?」
「大してかわらん」
「かわるよぉ!」
他愛もない話をしながら街に向かった。
こんなに楽しい気持ちになったのはいつぶりだろうか。
12
お気に入りに追加
1,224
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる