32 / 98
32.後処理
しおりを挟む
「サナさん、治療をお願いします!」
ギルドに入るなり、大声で叫んだ。
「ジン!? 誰か治癒魔法使える人いる!?」
冒険者に呼び掛ける。
Dランク以下の冒険者達は俺達が突入したあと、待機していたのだ。
「私使えます!」
「俺も!」
何人か手を挙げる。
みんななにかしたいのだ。
すると、後から追いかけてきたていた部隊が帰ってきた。
「おっ? 何手ぇ挙げてんだ?」
それの冒険者達をみた俺は自然と笑顔になる。
「手を挙げてる人は治癒魔法が使えるとのことです! 怪我した人は治癒してもらってください!」
「おっ! そりゃありがてぇ」
ジンさんの所には一番近くにいた人を呼んで治療してもらう。
後から来た冒険者達はそれぞれが治療してもらい、柔らかい空気が包む。
「テツくん達が戻ってきたってことは、鮮血の月は?」
「全滅だ」
「「「「おおおぉぉぉぉ!」」」」
歓声が上がった。
「俺達はやったんだ!」
「見たか! これが俺達の力だ!」
口々に戻ってきたものは勝鬨をあげる。
一方で戻らなかった者もいる。
サナさんも聞きたくはないだろうが。
「犠牲者は?」
俺はビクッとなってしまう。
自分のせいでとやはり思ってしまっていた。
「イテテテ。それは俺が言う」
ジンさんが治療を終えると立ち上がった。
その顔は覚悟の決まった顔をしていた。
罵倒される覚悟か、刺される覚悟かは分からないが。
「今回の作戦で、デング、バルド、アーロンの三人が犠牲になった。俺の力不足だ。申し訳ない」
頭を下げたジンさん。
それと共に泣き崩れる人。
いたたまれない気持ちになる。
俺がブラックホールで一掃すれば、こんなに被害は出なかったんじゃないか?
すぐにあんな奴ら片付けれたんじゃないか。
今言っても仕方が無いが、後悔の念ばかりが押し寄せる。
俺はいつの間にか、かなり険しい顔をしていたようだ。
ジンさんに肩を叩かれる。
「お前が背負い込むことじゃねぇって言っただろ? 今回の作戦は俺の責任だ。俺は間違ってたとは思ってねぇ。現に、街に被害は出なかった。それは、テツ、お前の功績だ。誇っていいんだぞ」
その言葉に救われた気がしたが、やはりどこかで引っかかっている部分があるのだ。
泣き崩れた人の元へ向かうジンさん。
サナさんが横で教えてくれた。
その人はバルドさんの妻とのこと。
話を聞くと最近Cランクに上がったばかりで、出るのを止められたが「俺の街は俺が守る」と言って出ていったそうな。
思わず拳を握りしめる。
俺は、見捨てたも同然だ。
「皆さん! 主人は、皆さんと一緒に戦えて誇らしかったと思います! 自分の街を自分の命をかけて守った主人を私は誇りに思います! 有難うございました!」
バルドさんの妻の言葉に心を打たれた。
なんて強い人なんだと。
冒険者の妻はこういうものかと。
気丈に振る舞う姿が、目に焼き付いた。
デングさんは、独り身だったらしい。
別の町から来た為詳細の情報は無いんだとか。
ギルド共通で追悼の掲示をするので、なにか連絡があるかもしれないと言う。
この街の人ではないのに、命をかけて守ろうとしてくれたんだな。この街が好きだったんだろうな。俺も一緒だからわかる。
アーロンさんは両親がこの街に居るため亡くなったことを伝えてくるという。
ジンさん、自分が先頭に立って戦ったのに辛い事も背負って凄い人だ。
治療を終えると、賊の亡骸の始末と冒険者の遺体を回収することになった。
馬車を出し、賊のいた洞窟まで再び冒険者皆で行く。後始末までが作戦だ。
賊の亡骸は集めて火を放ち燃やす。
そうしないと疫病が発生するからだ。
洞窟の中から運ぶのが大変だった。
三人の冒険者の遺体は馬車に乗せられて布を被せて運ばれていく。
処理し終える頃には辺りは暗くなり、亡骸を燃やす炎がユラユラと揺らめいていた。
街の反対側のカシラ達のの体も回収し、燃やした。
洞窟の中からは盗賊達が今まで盗んできたであろう金銀財宝が出てきた。
一度回収し、ギルドの方から南の国に返すかどうかを聞いてみるそうだ。
帰りの道すがらジンさんに聞いてみたいことを率直に質問してみた。
「ジンさん、ギルドマスターって辛くないですか?」
「はははっ。なんでぇ藪から棒にぃ…………そうだな。まぁ、辛い報告をする時は俺も辛いわ。けどな、冒険者の遺族ってのはな、覚悟が出来てる人が多いんだよ。逆に感謝されたりしてな……つれぇよ。けどな、命かけて何かをなしとげた後ってのはそれまでとは違うんだよ」
星空を見ながら語るジンさんの横顔は誇らしい顔をしていた。
命をかけて何かを成し遂げるというのは、なかなかできることでは無い。
「誇りを胸に胸張って生きれるんだ。俺までと景色が違う。遺族にも貴方の大切な人は、俺達を、この街を守ったって誇ってもらう為にも、生き残った俺達が胸張ってねぇとダメだと俺は思うんだわ」
俺は今まで人を殺めることしかした事がなかった。この作戦で俺は、初めて命の重みを感じた。
人が亡くなったことでこんなに心に傷を負ったのは初めてではないだろうか。
この命の重みを感じるということが、償いになるということだろうか。
ギルドに入るなり、大声で叫んだ。
「ジン!? 誰か治癒魔法使える人いる!?」
冒険者に呼び掛ける。
Dランク以下の冒険者達は俺達が突入したあと、待機していたのだ。
「私使えます!」
「俺も!」
何人か手を挙げる。
みんななにかしたいのだ。
すると、後から追いかけてきたていた部隊が帰ってきた。
「おっ? 何手ぇ挙げてんだ?」
それの冒険者達をみた俺は自然と笑顔になる。
「手を挙げてる人は治癒魔法が使えるとのことです! 怪我した人は治癒してもらってください!」
「おっ! そりゃありがてぇ」
ジンさんの所には一番近くにいた人を呼んで治療してもらう。
後から来た冒険者達はそれぞれが治療してもらい、柔らかい空気が包む。
「テツくん達が戻ってきたってことは、鮮血の月は?」
「全滅だ」
「「「「おおおぉぉぉぉ!」」」」
歓声が上がった。
「俺達はやったんだ!」
「見たか! これが俺達の力だ!」
口々に戻ってきたものは勝鬨をあげる。
一方で戻らなかった者もいる。
サナさんも聞きたくはないだろうが。
「犠牲者は?」
俺はビクッとなってしまう。
自分のせいでとやはり思ってしまっていた。
「イテテテ。それは俺が言う」
ジンさんが治療を終えると立ち上がった。
その顔は覚悟の決まった顔をしていた。
罵倒される覚悟か、刺される覚悟かは分からないが。
「今回の作戦で、デング、バルド、アーロンの三人が犠牲になった。俺の力不足だ。申し訳ない」
頭を下げたジンさん。
それと共に泣き崩れる人。
いたたまれない気持ちになる。
俺がブラックホールで一掃すれば、こんなに被害は出なかったんじゃないか?
すぐにあんな奴ら片付けれたんじゃないか。
今言っても仕方が無いが、後悔の念ばかりが押し寄せる。
俺はいつの間にか、かなり険しい顔をしていたようだ。
ジンさんに肩を叩かれる。
「お前が背負い込むことじゃねぇって言っただろ? 今回の作戦は俺の責任だ。俺は間違ってたとは思ってねぇ。現に、街に被害は出なかった。それは、テツ、お前の功績だ。誇っていいんだぞ」
その言葉に救われた気がしたが、やはりどこかで引っかかっている部分があるのだ。
泣き崩れた人の元へ向かうジンさん。
サナさんが横で教えてくれた。
その人はバルドさんの妻とのこと。
話を聞くと最近Cランクに上がったばかりで、出るのを止められたが「俺の街は俺が守る」と言って出ていったそうな。
思わず拳を握りしめる。
俺は、見捨てたも同然だ。
「皆さん! 主人は、皆さんと一緒に戦えて誇らしかったと思います! 自分の街を自分の命をかけて守った主人を私は誇りに思います! 有難うございました!」
バルドさんの妻の言葉に心を打たれた。
なんて強い人なんだと。
冒険者の妻はこういうものかと。
気丈に振る舞う姿が、目に焼き付いた。
デングさんは、独り身だったらしい。
別の町から来た為詳細の情報は無いんだとか。
ギルド共通で追悼の掲示をするので、なにか連絡があるかもしれないと言う。
この街の人ではないのに、命をかけて守ろうとしてくれたんだな。この街が好きだったんだろうな。俺も一緒だからわかる。
アーロンさんは両親がこの街に居るため亡くなったことを伝えてくるという。
ジンさん、自分が先頭に立って戦ったのに辛い事も背負って凄い人だ。
治療を終えると、賊の亡骸の始末と冒険者の遺体を回収することになった。
馬車を出し、賊のいた洞窟まで再び冒険者皆で行く。後始末までが作戦だ。
賊の亡骸は集めて火を放ち燃やす。
そうしないと疫病が発生するからだ。
洞窟の中から運ぶのが大変だった。
三人の冒険者の遺体は馬車に乗せられて布を被せて運ばれていく。
処理し終える頃には辺りは暗くなり、亡骸を燃やす炎がユラユラと揺らめいていた。
街の反対側のカシラ達のの体も回収し、燃やした。
洞窟の中からは盗賊達が今まで盗んできたであろう金銀財宝が出てきた。
一度回収し、ギルドの方から南の国に返すかどうかを聞いてみるそうだ。
帰りの道すがらジンさんに聞いてみたいことを率直に質問してみた。
「ジンさん、ギルドマスターって辛くないですか?」
「はははっ。なんでぇ藪から棒にぃ…………そうだな。まぁ、辛い報告をする時は俺も辛いわ。けどな、冒険者の遺族ってのはな、覚悟が出来てる人が多いんだよ。逆に感謝されたりしてな……つれぇよ。けどな、命かけて何かをなしとげた後ってのはそれまでとは違うんだよ」
星空を見ながら語るジンさんの横顔は誇らしい顔をしていた。
命をかけて何かを成し遂げるというのは、なかなかできることでは無い。
「誇りを胸に胸張って生きれるんだ。俺までと景色が違う。遺族にも貴方の大切な人は、俺達を、この街を守ったって誇ってもらう為にも、生き残った俺達が胸張ってねぇとダメだと俺は思うんだわ」
俺は今まで人を殺めることしかした事がなかった。この作戦で俺は、初めて命の重みを感じた。
人が亡くなったことでこんなに心に傷を負ったのは初めてではないだろうか。
この命の重みを感じるということが、償いになるということだろうか。
11
お気に入りに追加
1,222
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
追放されたら無能スキルで無双する
ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。
見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。
僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。
咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。
僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる