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25.討伐見学会

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「サナさん、昨日の魔石換金して良いですか?」

「良いけど、換金は私じゃなくてそっちのカウンターのグンじいにお願いして!」

 あぁ。そうだった。
 なんでもかんでもサナさんじゃ無いんだもんな。

「すまん。そうだった」

「いいわよ。今日も狩りに行くの?」

「あぁ。俺が行くのを三人が見学したいそうだ」

「えぇー。面白そう」

 面白そう? 何故だ?
 戦ってるところなんて見ても面白くないだろうに。

 換金のカウンターに行って魔石を渡す。
 呼ぶと奥からグンじいが出てきてくれた。
 魔石を渡すと驚いていた。

「お前さん、Eランクじゃなかったか?」

 訝しげな顔をして問い質してくる。
 Bランクの魔石があるのがおかしいという事だろうな。
 
「そうです」

「何故にBランクの魔石を?」

「たまたま遭遇しまして、なんとか倒せました」

 事実だからな。
 詳しく教える必要も無いだろう。
 
「ほう。噂通りということか。カードに入れるか?」

「はい。お願いします」

 噂とはなんの噂なのか。
 それで納得されるのも凄くむず痒い。
 どんな噂か気になる所である。

「Dランクの魔石が五個で、二十五万ギル。Bランクの魔石が一つで五十万ギルだ。合わせて七十五万ギルだ」

 驚いた。そんなに高値で売れるもんなのか。
 これは冒険者になりたいという者が多いわけだ。強いものはかなり稼げるだろう。

 ホールで待っていたダン達を昼食に誘い、ご馳走する。
 そして午後、狩りに向かった。

「なるべく気配は消しててくれ。俺が先頭で行って片っ端からゴブリンを始末していくから」

「「「はい!」」」

 街を出て今回も東の森に向かう。
 スタスタ歩いていく。
 たてる音は最小限だ。

 マノシシを目撃。
 そのまま直進すると丁度接敵した。

 マノシシこちらに気づき、向かってきた。
 今回はただ暁の三人組が見たいというだけだったので、倒し方はこだわらない。

 刀を腰に構えすれ違いざまに切り裂く。
 三人が見ていてちょうど良かったので捌くところを見せた。
 
「おぉ」とか「凄いっす」といってマジマジと見ていた。そして、それを背負っていた背負い袋に布に包んで綺麗に入れる。

「こうすることで、背負い袋の中も汚れないから何度でも使えるだろ?」

「流石です!」

「節約……大事」

 捌き方と入れ方を教えた所で更に奥に向かう。
 少し身をかがめて二層に入っていく前回は南回りだったから今回は北回りで行く。

 二層を北に進む。
 やはりゴブリンはいるものだな。
 少し進んだところにキョロキョロと見回りをしているであろうゴブリンが三体いた。

 見回りか?
 だとすると……また集落が出来ているかもな。
 ナイフを両手に持ち、音をたてずに走り出す。

 林をぬけて接敵。
 跳躍し、横に一回転し、勢いをつけたナイフをゴブリンの首に叩き込む。
 スパッと手応えがあった。

 即座に着地。
 両手のナイフを広げて二体の間を通過しつつ、ナイフを振り切る。
 あっという間にゴブリンが片付いた。

 魔石のみ回収して後は放っておく。
 そのうち魔物が食うそうだ。
 あんなの食ったら腹壊しそうだけどな。

 少し慎重に進む。
 見回りがいたということは、それに人員を割けるくらいの人数がいるということ。

 振り返ると暁の三人組に指示を出す。

「さっきのは見回りのゴブリンのようだ。この先にまた集落がある可能性がある。ギルドに応援を要請してくれ」

「分かりました!」

「念の為三人でいけ。なにかに遭遇してもその方が安全だろうからな」

「分かりました。テツさんは?」

 その時に思わずニヤリと口を歪めてしまった。
 慌てて取り繕う。

「あー。一応様子を見て、やれそうだったらやるかな?」

「今の顔、おっかないですよ?」

「恐かったっすー」

「鬼」

 なんてこと言うんだ。
 ちょっと一人で乗り込みとか久しぶりだなぁとか思っただけだ。
 決して戦闘狂ではないぞ。

「じゃあ、頼んだぞ」

「分かりました。…………一応呼んできますね」

 俺達行く必要あるのか?とか思ってそうだな。
 それとも一人で落とすところを見てみたいのか。どっちなんだか。

 振り返ると双方駆け出した。

 この辺りで見張りをしていたということは、集落はそんなに遠くないはずだ。
 しばらく走ると隣国側との堺くらいに差し掛かった。

 事情は分からないが、隣国側が処理すると思って対処してないのか?
 あっちも同じ理由かもしれないが。

 見えた。
 前回の村より発展しているように見える。
 しっかりと集落を囲む柵があり建物も木造だ。

 ちゃんと知恵があるやつがいるのか?
 グルリを様子を見ると奥に大きな小屋のようなものがある。
 ボスはそこに居るだろう。

 さぁ、害虫駆除を始める。

 闇に溶け込ん行く。
 小屋の裏から出て闇をナイフまで纏う。
 今度は最初から全力で当たる。

 裏からバガァァンッと小屋を破壊して中に入っていく。
 慌てた様子のゴブリンキングがいた。
 前のよりデカい。

「グガガァァァ」

 怒っているようだが、関係ない。
 懐に入り込み縦に回転する。
 二撃で片腕をとばす。

 さらに怒り狂っているが、片腕でただ暴れるだけ。ナイフに闇を溜める。
 二振りを勢いよく振り下ろした。
 バツの字に斬撃が飛んでいく。

 ズバッと四つに別れてゴロゴロと落ちる。
 魔石あるかなぁと探るとあったので回収した。
 物音を聞いたゴブリンが集まってくる。

 魔法に関して、素人だった為、フルルに聞いてみたのだ。
 どうすれば魔法が放てるのかと。
 そしたら、イメージがこの世界に認識されて、伴った魔力量を供給出来れば魔法は放てるという事だった。

 俺の魔力量は通常より多いそうだ。
 ということは、大体何でもできるのでは無いか?と考えた。
 闇で思いついたのがブラックホール。

 試してみる価値はあると思った。
 そして、手をむらの中心目掛けて翳し。
 ブラックホールをイメージする。

 体の中からみるみるうちに魔力が吸われていく感覚に陥る。
 闇の穴がぽっかりと空いた。

ゴォォォォオォォ

 周りのものを全て吸っていく。
 身を伏せて吸い込まれないように踏んばる。
 解除した後にはクレーターが残っていた。

「テツさん!? 大丈夫ですか!?…………これは!?」

「あぁ。すまないな。ちょっと魔法を行使したらこうなってしまった」

「何やったらこんなになるんですか!?」

「黙秘する」

 ブラックホールって話したところで分からんだろうしな。
 まぁ、誤魔化すしかあるまい。
 あっ。魔石取れなかったな。
 仕方がないな。これは使い方を考えないとな。
 
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