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13.事情聴取

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バタンッ

 玄関が開け放たれた。
 息を切らしたジンさんが居た。

「アリーが攫われたんだろ!? 早く探しに────」

「もう、助けてきました」

 俺を引っ張って連れていこうとするジンさん。
 ギョッとした目でこちらを見る。

 そんな目で見られても。
 何言ってんだこいつ?っと言った感じか?

「なんて?」

「だから、もう助けてきました。今は部屋で休んでます」

「はぁぁぁぁ。よかったぁ」

 膝に手を着いて大きく息を吐く。
 心配したんだろう。
 かなり安堵した感じが見て取れる。

 少しして頭が回り始めたのだろう。
 ギロリとした、目で見つめてきた。

 その目を見た時、やはり冒険者とは戦士と同じなのだろうということが分かった。
 覚悟を決めた目。
 俺が始末をつけるという目。

「誰だ? 誰がアリーを……」

「コザーです。俺が殺りました」

 目をジィっと見つめてくる。
 しばらくの沈黙の後。

「嘘は言ってない様だな。しかしな、奴はC級冒険者だ。F級のテツが殺したと言ってもにわかには信じがたい」

 言ってることは最もだ。
 その通りだろう。
 冒険者ランクとはそのままその人の実力、戦力を指す。

 昨日冒険者になったばかりの俺の言うことなんぞ信じる事はできないだろう。
 しかしどうすれば。

「が、テツなら出来るだろう。俺も腐っても冒険者。人の実力は経験で測れる。テツの目を見てわかった。その歳でどれだけの修羅場を潜ってきた? お前の目は低ランク冒険者の目じゃねぇ」

 なんとか信じてくれたようだ。
 安心した。
 ジンさんは敵に回したくない。
 アリーが悲しむ。

「ジンさんに頼みがあります」

「なんでぇ? 改まって?」

「今から自警団の所に行くんです。留守をお願いできませんか?」

 俺の提案を聞き入れてくれる気がしていた。
 しかし、目をパチパチとさせている。
 ダメだったかな?

「なんで、俺に?」

 あぁ。そういう事か。
 俺も戦士だ。実力は測れる。

「実力的にお任せできるかなと」

 正直に言う。

「ハッハッハッ! そうか! 実力的か!」

 楽しそうに笑っている。
 何がそんなに楽しいのかは分からないが、悪いことではないと思いたい。

「正直に言うと俺はテツのことをただ強いという事しかわからねぇ。けど、俺の実力をテツが測れるってんなら俺はテツより格下だろう。それでも、俺でいいのか?」

 ジンさんが疑問を俺に投げかける。
 それこそおかしな質問だな。

「ん? なぜそんなこと聞くんです? 今の所、会った中で一番実力があるからですよ?」

 また目を見開いている。
 クックックッと笑いだした。
 嬉しそうに。

「いや、信頼してくれて嬉しいぜ。しかし、俺が一番か……そうか……」

 何か思いを噛み締めているようだ。
 俺にはなぜこんな所で燻っているのか分からないが、指導役か何かなのだろうか?

「留守は任せろ」

「頼みます」

 そう言うと家を出た。

 出ていった後の家の中では。

「おれがまだ一番なのか……いけねぇな」

「ジンさん、いい加減飲んだくれてないで、後輩の育成したら?」

「そうだな。テツのおかげで決心がついたぜ」

◇◆◇

 その頃、俺は自警団の詰所にいた。

「あなたが、アリーさんを救ったというのは本当ですか?」

「あぁ。そうだ。人も殺した」

 そう。俺は人を殺したくないと言いながらも殺してしまった。それは、償わなければいけない事だろう。

「コザー一味ですね? 我々も手をやいていたんですよ。ヘタに実力があるものだから中々捕らえることが出来なかったんですよ。そしたらこんな事になってしまって……我々の落ち度です」

 自警団側も責任を感じているようで、暗い雰囲気を感じる。
 いや、そうでは無い。
 俺が人を殺してしまったんだ。

「そうなのか? しかし、人を殺してしまったのは償わなければならない。罰は受ける」

 してはいけないことした。
 怒りに身を任せて、また人を殺してしまったんだ。今回は自らの意思で。殺したんだ。だから、後悔というのは微塵もない。
 アリーの為だ。
 どんな罰も受けよう。

「ん? 何を言ってるんです? 人攫いは重罪。捕まっても死刑です。そういった場合、現場で制裁を食わせても罪にはなりません」

「罪に……ならない?」

「はい。罰なんてもっての外。逆に報酬が出ます。ギルドで受け取ってください。あっ、現場の始末はこちらに任せてください! それが仕事ですから! じゃあ、お帰りくださっていいですよ」

 柔らかい笑顔でこちらを案内してくれた。
 こんな反応をされるとは思ってもみなかった。
 この世界は悪を裁くことを良しとし、その為なら人が死んでもお咎めがない厳しい世界なんだ。

 自警団の詰所を出る。
 アリーも助かった。
 けど、人は殺したんだ。
 その事実は変わらない。

 この世界では罪にはならないのだろう。
 けど、殺した者は俺が背負っていく。
 そうする事で俺はさらに強くなれる。
 そんな気がした。

 夕日が俺を照らす。
 家に帰ろう。
 俺の守った家に。

 家へ向かって歩き出した。
 道行く中マーニさんに声を掛けられた。

「テツくん! あんたよくアリーちゃんを助けてくれたね! 有難う!」

「はい。もう攫われないように対策が必要ですね」

「攫ったヤツらはどうしたんだい?」

「殺しました」

 胸が締め付けられる。
 罪の意識に縛られてる気がする。

「そうかい。なら安心だね! 良くやった! あんな奴ら地獄に落ちればいいのさ!」

 マーニさんにまで心を救われるとは。
 いい事ではないが、必要悪という事だろうか。
 そうとらえよう。

 家に着いた。
 扉を開けて中に入る。

「ただ……いま」

「「「お帰りー!」」」

 家って……いいな。
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