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54.地方大会予選3

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 あの後、なんと順調に三回戦、四回戦と勝ち進んだ。

 これは遂に決勝である。
 みんなが注目する中、俺は悠斗達の所で力を貰っていた。

「疾風! お前は勝てる!」

「気合い入れなさい! 勝たなかったら承知しないわよ!」

「勝つ。絶対。」

 大きな声の応援が聞こえてくる。
 この声が。この仲間の声が。
 俺の体に力をくれる。

 中央へ行き。

 大きく深呼吸をして精神統一をする。
 目を閉じ無心になる。
 雑念を取り払う。

 目を開けると相手だけを視界に入れる。
 周りのギャラリーはもう見えていなかった。

「始め!」

『ハイッ!』

パァン

 開始早々、いきなり放たれた蹴りを落ち着いて弾く。

 相手は全国大会常連で地方大会の前回優勝者である。

 相手と牽制しあい動き回る。

『エイッ!』

スッ

 放たれた鋭い突きを避ける。

『エィッ!エィッ!』

 右左と突きが連続で放たれる。
 見極めて冷静に後ろへ躱す。

『エイッ!』

 素早い後回し蹴りが放たれる。

スパンッ

「やめ!」

「青 技あり!」

「始め!」

 くそっ! 取られた!

「フッッフッ!!」

 攻めるたてるが。

スゥッ

 後ろに避けられる。

『エィッ!』

 逆に相手の突きが俺の隙をみて放たれる。

スパッ

「やめ!」

「青 有効!」

「始め!」

 連続でポイントを与えてしまった。

 ふぅ。落ち着け。よく見るんだ。
 相手の動きをよく見ろ。
 そんなに早くはない。

 巧みに見えるが、十色程のスピードもなければ。十色さん程の重さもない攻撃だ。なんてことはない。

『エイッ!』

 上段蹴りが放たれる。

パンッ

 蹴りをガードして受ける。
 そう。このスピードでも冷静に受けられるんだ。今までの俺とは違う。
 
「フッ!!」

 俺も渾身の突きを放つが。

パンッ

『エィッ!』

 逆に突きを返されてしまう。

「やめ!」

「青 有効!」

「始め!」

 ははは。やられっぱなしじゃないか。やっぱり最後までは勝てないのか。

「疾風! お前は勝てる! 信じろ!」

 その時だった。
 俺の耳に親友の声が届いた。
 
 全ての不安を吹き飛ばすように。

 そうだ。何を弱音を吐いている。

 こんな俺を指導してくれたのはあの十蔵さんと十色さんだぞ。この声援を聞けよ。負けてられないだろう。

 十色さんの声が蘇る。

――――――――――――――――――――――

「私に蹴りを当てたんだ。負けは許されないよ」

――――――――――――――――――――――

 俺は。負けない!

『エイッ!』

スッ

 相手の突きを避ける。
 気配を感じるんだ。

 次に何が来る?

 今までの鍛錬を思い出せ。

『エイッ!』

サッ

「フッッセイッ!!」

 突きを放ったことで突っ込んできた相手へ、首筋と胴へ突きを放つ。

「やめ!」

「赤 有効!」

「始め!」

 次は速攻が来る。
 弾いて蹴りだ。

『エィッ!』

パンッ

「セェィッ!!」

スパァン

 上段回し蹴りが決まる。

「やめ!」

「赤 技あり!」

「始め!」

 両者下がって様子を伺う。
 攻める!

ダンッ

 鋭い踏み込みからの前蹴りを放つ。

スッ

 避けられるが、更につめる。
 ここで弱気になってはダメだ。

「セイッ!」

 突きを放つ。

パンッ

 受けられてしまう。
 再度距離をとる。
 一旦体勢を整える。

『エィッ!』

 離れたところを追うように、上段蹴りを狙ってきた。

「セェイ!」

 体を傾けて避け、首筋に突きを放つ。

スパァン スパァン

 両方相打ちになる。
 相手がバランスを崩して転ぶ。

ダンッ

 ここぞとばかりに跳躍する。
 倒れた相手に向け首に突きを放つ。

ビーーーーーー

「セイヤァ!!」

スパァン

「やめ!」

 ポイントで勝ってはいないが、時間のようだ。

「判定!」

バッ!!

 号令のもと、運命の旗が挙げられる。
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