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68.浴衣行列

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「明日から年末休みだが、はっちゃけすぎて問題起こすなよぉ。特に、トラブルメーカーの黒襟とその仲間たち。年末祭りにも行くんだろう。問題起こすんじゃねぇぞぉ?」

 なんで僕たち限定でそんなこと言われなきゃいけないんだよ。いつも別にトラブルにあいたくてあってるんじゃないのに。

「せんせー。私達は、別にトラブルを引き寄せているわけではありませーん。よって、年末祭りは楽しみまーす」

 手を挙げてエリスさんがそう反論する。
 よく言ってくれたと思い、エリスさんにサムズアップする。
 それを返してくれる。

「まぁ、好きにしろぉ。いろんなローカル競技大会が開かれる。そういう祭りだ。勝ちすぎて文句言われねぇようにしろぉ」

「はーい」

「じゃあ、諸君。また年明けになぁ。いやぁ。飲んだくれてやるぜぇ」

 担任はそういいのこし、教室から出て行った。

「リオンくん、僕たちも年末祭りの準備といこうか」

「準備?」

「浴衣だよ。温度調整の魔法を付与してもらわないと寒いからね。作るのに少し時間がかかるみたいなんだ」

「あぁ。そうなんだ」

「このあと一緒に選びへいかない?」

「うん。行こう」

 エリスさんたちに買い物へ行ってくることを告げて教室を出た。エリスさんとカーラさんも浴衣を買いに行くらしい。だから、丁度よかったみたい。

 一旦、部屋へと戻って出かける準備をして寮を出た。僕は準備することないんだけど、バアルくんが私服に着替えたいというから戻ったんだ。

 王都の街は年末祭りに向けて賑わっていた。
 人も多いというのもあるが、出店が多い。
 なんだか街の人達がソワソワしているのを感じる。

 街の人たちも楽しみなんだね。
 そんな一大行事なんだ。

「浴衣の店はあっちだよ」

 バアルくんに案内された方へと行くとなんだか騒がしい。よく見ると浴衣の店に行列ができている。

「あちゃー。みんな考えることは一緒か」

「うーん。そうみたいだねぇ。これは長期戦になりそうだ」

 僕たちはその行列へと大人しく並んだ。女の子が多い気がするが、男もいるから問題は無いんだろう。ただ、男の浴衣を誰が見たいかって思うんだが。

「リオンくん? あんまり考えすぎるとハゲるよ?」

「関係なくない?」

「学院長になる人たちを思い浮かべてみなよ」

 学院に飾られている歴代の学院長たちを思い出してみる。一個前の人、二個前の人……。

「嘘でしょ……」

「ねっ? みんなハゲてるでしょ?」

「本当だ。考えすぎるのは止めよう」

 ※考えすぎてハゲるというのは迷信なようなものだと思いますので、この発言はスルーして貰えれば、幸いです。

 そんな話をして数分が過ぎたが、あまり進んでいない。一つ一つ手縫いする気だろうか? それってお祭り間に合う?

 素朴な疑問があった。
 順番が来るのに一時間ちょっとかかってようやく自分たちの番になった。

「ひとつ聞いていいですか?」

「はい! 何でしょう?」

 元気に聞いてくれたその女性は細みで、仄かに森の匂いを漂わせる人だった、なんか、肌が茶色いなぁ。もしかして普通の種族じゃないかもなぁ。

「あのー。年末祭りまであと一週間ですけど、この人数オーダーメイドで間に合いますか?」

「えぇ、大丈夫ですよ。シクシク……私が寝なきゃいい話だから」

「いやいや、寝てくださいよ!」

「だって寝たら作れないじゃないですかぁ」

「人数制限するとかしたらどうですか!?」

「私はそれだけはしたくないんです!」

 なんだか、熱意が違うみたいだね。なんか浴衣にかける愛情が異常というか、なんというか。生地から選べるのはとても嬉しいんだけど。

「な、なるほど……」

 僕は気圧されてしまう。

「って言うのは嘘です。私、地中から栄養を貰っていれば動き続けられる疲れ知らずなんです」

「地中から?」

「はい。私、木人族なんです」

 スカートをめくると足が地中へと入って根を張っていた。ちょっと足の感じが刺激が強かったけど、見なかったことにしよう。

「リオンくん、この事は内密に」

「うん。そうだね」

 バアルくんと協定を結んだ。じゃないと女の人のスカートの中を見たなんて知られたら、何を言われるか分かったものじゃない。

「珍しいですね」

「ふふふっ。よく言われます。それで、なんの生地がいいですか?」

「うーん。色々あるんですねぇ」

 広げられたサンプルの生地は百種類くらいあった。これは迷うねぇ。だから、みんな時間かかってたんだ。こりゃ仕方ないわ。

 僕は髪の色に合わせて深緑の竹の模様が入った浴衣を選んだ。バアル君はグレーの剣の模様の総柄。なかなかいいんじゃないかな。

「君、もしかして竜人族?」

 目を見開いて固まってしまった。この状態でバレることなかったんだけど、何でだろう?

「あっ、ごめんなさい。もしかして隠してた? その格好だもんね。ごめんなさい……」

「あの、なんでわかったんですか?」

「私、種族柄、人の空気を感じ取るのが得意なの。だから、その人にあったように作ったりするの。君は、壮大な雰囲気を感じたから、もしかしたらと思って」

「はははっ。なるほど。凄い。浴衣、楽しみにしてます。あっ、温度調整用の魔法の付与もお願いします」

「オッケー! みんな付けてるから大丈夫。では、お楽しみに!」

「よろしくお願いします!」

 会計を済ませて外へと出る。まだ、行列は増えていくばかりだ。大変だな。あのお姉さん。
 
 僕は、一週間後の受け取りで仕上がりに驚くこととなる。
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