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30.本当の友達

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「僕も皆が大切だよ。ただ、弱い人達も守ってあげたいと思っちゃう」

「リオンくん! それは独りよがりだよ! 僕たちのこともそんなふうに思ってるんだろう!?」

「えっ? そんなことは……」

 そういわれて、気が付いた。
 守るべき対象として三人も入っている。
 だから、すぐに否定することはできなかった。

「ほらなっ! オレ達が強くなっても、リオンくんは下に見ているんだ! そんなの仲間っていうのか!? オレは別行動させてもらう!」

「ちょっと! 待ちなよ! バアルくん!」

 バアルくんは立ち上がると林の中へと消えて行った。
 それを追ってエリスさんも林へと消えていく。

 残ったのは僕とカーラさん。

「ごめん。なんか怒らせちゃったね……」

「そうだね……」

 しばらく沈黙が続く。
 僕の何がいけなかったんだろうか。
 初めてできた友達と初めての喧嘩になってしまった。

 友達を守るっていうのがいけなかったんだろうか。守っちゃいけないのか?
 でも、僕は友達をほうっておくことは出来ない。

 どうしよう。
 何が悪かったのか全然分からない。
 何で怒ったのかが全く分からない。

 このまま嫌われてしまうのかな。
 せっかく仲良くなったのに離れ離れは寂しいなぁ。理由も分からないし。

 下に見てるって言っていた。
 たしかに、僕より戦闘においては弱いと思っている。それは、種族が違うから。

 これはひっくり返せない事実だから。
 でも、バアルくん達は僕の種族を知らない。それでいて、僕が守るっていうのは違うか。

 人族だとすると、剣術や魔法が上手なひとは居るだろう。ただ、それだけ。斬られたら傷つくし、魔法もダメージを受ける。

 その点、僕は普通の剣では斬れないし、魔法もダメージは軽くなる。火傷もほぼしたことが無い。

 そのくらい、竜人の鱗は強い。そう。強いのだ。他種族より圧倒的に。だから、孤立して里を作って暮らしているのだから。

 畏怖の対象になるから。しかも、ドラゴンと共存している。ドラゴンと聞くと普通は、まず討伐となるだろう。僕達の種族ではそうはならない。

 魔物でも知性がある者とは対話が必要だと思うのだ。それは、人も一緒だということだろうか。人も対話しなければ相手が何を考えているかはわからない。

 ましてや、僕は種族を隠している状態だ。それを打ち明ければ、畏怖の対象となり友達も僕から離れてしまうかもしれない。だから、種族のことは話さないと決めたんだ。友達を作るために。

 けれど、それで今友達から距離を置かれようとしている。それでいいのか?
 本当に?

「ねぇ……バアルくんはね、リオンくんに認めて欲しいんだと思う」

「どういう……こと?」

「あのね。一緒に肩を並べて戦いたいんだと思うの。そして、対等に見てほしいんだと思う」

「対等……」

 僕の中で対等とは一緒に戦うことだと思っていた。それじゃダメなのか?

「バアルくんは守られてばっかりは嫌なんだと思う。リオンくんより弱いから仕方ないんだけどね。頼って欲しいんだと思うよ?」

 いつも頼りにしているつもりだったけど、バアルくんはそうは思っていなかったということだろうか。

「実は、エリスちゃんも、リオンくんが目立ちたくないのにはなにか理由があるとは思ってるんだ……」

 僕は、本当は目立ちたくないんじゃないんだ。目立つのが恐いんだ。また、前世のあの時みたいに虐められるんじゃないか。そして、一人になるんじゃないかって。

 本当は一人でいいと思ってた。ひっそりと学院に通おうって。でも、バアルくんは声を掛けてくれて、そして、友達になってくれた。

 今の僕は、もう友達がいることの有難みを知ってしまっている。今からまた一人になるのは耐えられる気がしない。

「カーラさん、僕はどうしたらいいんだろう? 話したいんだけど、話すと離れていってしまうんじゃないかと思うんだ。そう思うと恐くて話せない……」

「リオンくんがどんな秘密を持っているのかは、私には想像できない。でも、私も、あの二人も話してくれるのを待っているのよ?」

「そうなんだね……」

 待ってくれているんだ。僕が話すのを。でも、僕がそれを話すことは……。

「ねぇ、リオンくんの隠していることを私達に話すことで、離れるのが恐いっていったよね?」

「うん。そう──」
 ──パシンッ

 乾いた音が僕の頬で鳴り響く。
 下を向いていた僕は目の前にいるカーラさんを見つめる。

「そんなに信用できないの? 私達のこと。友達っていうのは嘘だったの?」

 カーラさんは目を濡らしていた。

「リオンくんの秘密を話されたところで、私達は離れないよ? 離さないよ! 私達を、見くびらないで!」

 その必死よ叫びは僕の胸を貫いた。

 そういう事だよね。
 はははっ。
 信用してなかった。

 どこか胸の奥で、僕をいじめたヤツらと同じなんじゃないかって思ってた。

 そんな失礼な話ないよね。
 こんな格好の僕と一緒にいてくれるんだもんね。

 酷いのは僕の方じゃないか。
 友達のフリして、本当の友達になっていなかった。

 なんてことをしてしまったんだろう。
 まだ、やり直しがきくだろうか。

 僕は頭を下げた。

「カーラさん。本当にごめん。今、初めてわかった。皆を信用していなかったのは僕の方だ。二人を見つけて話をしよう。その時は、カーラさんも、僕の話きいてくれる?」

「うん! 勿論だよ!」

 目を拭き取りながら笑うその笑顔が僕の心をジンワリと温めてくれていた。

 二人を探しに行こう。
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