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25.待ち伏せ

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「リオンくんは木の上で何してたの?」

 これは答えに困るなぁ。サボってたって言ったとして、それがエリスさんとバアルくんの耳に入ったら面倒だ。

「あそこで休んでたんだ。敵に見つからなさそうでしょ? あそこだと」

「そうだね。ウチは、なんか空から音がして上を見てみたら、たまたまリオンくんを見つけたから……」

「そっか。じゃあ、ホントにタイミングが良かったんだ。ナイスバアルくんだね!」

 笑顔で頷くカーラさん。
 綺麗な顔をクシャとして笑うその笑顔は結構好きだったりする。

 守らないと。背中へとカーラさんを隠しながらバアルくんの居るであろう方向へと進む。

 左に違和感を察知した。

「ちょっと止まって」

 誰かが隠れている。
 こちらに攻撃の意思があるか?

「そこの人、攻撃するなら迎撃する。攻撃の意思がないなら、下がって」

 下がる気配がない。
 バレていないと思っているのだろうか。

「サンd「ふっ!」ゴフッ!」

 魔法を撃とうとしたようなので、その前に拳の衝撃波で迎撃した。

 恐らく無事だとは思うが、動けないだろう。
 気配が消えていった。
 場外へと出たようだ。

「リオンくん、ありがとう……」

「うん。危なかったね。行こう」

「うん……」

 背中に敵を通さないようにしっかりと五感を感じて行く。大蛇が木の上から襲ってきた。やはり二人になるとそれだけ、目立ってしまうということだろう。

 口を大きく開いて噛み付いてきた。頭の付け根を掴み手刀で切り離す。こいつの討伐部位は目玉だったはず。

 面倒なのでそのままマジックバッグへ詰め込む。
 
 さっきみた感じだとこの先だったと思うんだけどなぁ。

「ちょっと待ってね」

 大きなものが何かある。
 静かに向かうとティラノの死体だ。
 何者かがコイツを倒したのか。

 一年生でティラノを倒すのは難しいはず。ということは、バアルくんの可能性がある。もう彼は一年生の実力から突出していると思うからね。

 客観的にみてだけど。僕はまだまだ未熟だから。

「バアルくーん」

 少し大きめの声で呼びかける。
 横で動く気配がした。
 身構えて背中にカーラさんを隠す。

「あっ! 気がついてくれたんだ」

 現れたのはバアルくん。

「ホントにバアルくん?」

「そうだよ。そこを疑う?」

「バアルくんが好きな人は?」

「リオンくんとそんな恋バナしてないよ!」

「本人か……」

「どういう確認の仕方? まったく。カーラさんも一緒だったんだね?」

 カーラさんは僕から少し頭を出して手を振った。その仕草も可愛らしい。

「うん。たまたま一緒になってさ」

「ウチが声掛けたんだぁ。ホントに恐かったから安心したよぉ」

 手を胸の前で合わせて涙ぐんでいる。

「はははっ。リオンくんが先でよかったね。一番安心じゃん」

「うん。そうなの。本当に良かった!」

「なんか……複雑な気分だね。はははっ」

 バアルくんは乾いた笑みを浮かべながら合流した。

「バアルくん、前でいいかな?」

「どうして?」

「う、後ろからの奇襲を防ぐためだよ……」

 自分の目が泳いでいるのがわかってけど、素知らぬ振りをしていた。

「はぁ。わかったよ。僕が前を行くよ」

「ありがとう!」

 バアルくんは前を陣取り進むが、程なくして止まった。

「ねぇ、エリスさん、どこにいるんだろう?」

「さぁ?」

「どうやって探そう?」

 バアルくんに策があるのかと思ったんだけど、そういう訳ではないみたい。

 でも、さっきの合図に気がついて居るなら動かない方がいいかもね。

「動かないで待とうか?」

「さっきのオレの合図に気がついているかもしれないもんね!」

「うん。待とうか」

 少し見えづらいような草むらに潜んで待つことにした。

 だが、合図をして寄ってくるのは味方だけとは限らない。

 視界にうつる草むらがパッと舞った。
 そこへ現れたのは二人組のゴールドバッチ。
 二人の獣人族だ。

 剣を振り回している。
 自分の強さに自信があるのだろう。
 やたらめったら剣を振り回しながら歩いている。

 警戒してても仕方がない。
 来るなら来いといった感じ。
 こちらに向かってきている。

「どうしよ?」

 バアルくんが眉間に皺を寄せて小声で聞いてくる。まぁ、こうなったらね。
 
「仕方ないね。先手必勝」

 バアルくんは頷いて手をかざした。

「ダークランス」

 眼前に出現した闇の矢は二人の生徒へ向かっていく。一人は気がついて飛び退いたが、気がつくのが遅れた一人はまともにダメージを受けたみたいだ。

 脇腹と足を抑えている。
 もうちょっとで場外かな。

「誰だ!? くそっ! 待ち伏せかよ!」

 そうではないが、まぁいっか。

「バアルくん」

「オッケー」

 バアルくんは傷を負っている方の生徒に肉薄していく。剣で応戦するが、ギリギリで対処される。

 僕も、もう一人の生徒に肉薄する。

「お前! 噂の黒襟!」

「さようなら」

 即座に後ろを取り、首筋に一撃くらわせて気絶させる。すると、転送されていった。

 バアルくんの方も腕を切りつけて生徒を転送させているところだった。
 親指を上げてサムズアップ。
 僕も同じようにしながら再び草むらへと隠れる。

「ウチ、役に立たなくてごめんね……」

「カーラさんは大規模魔法が得意なんだよね?」

「貴重だからいなくなったら困るよ。僕達が守るから」

「えっ? あ、ありがとう」

 カーラさんはなんだか顔を赤くして俯いてしまった。大丈夫かな?

「リオンくん……君ってやつは……」

 バアルくんが首を振りながらため息をついている。何に呆れてるんだろう?

 それより、エリスさんと合流できるかな?
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