18 / 88
18.僕の師匠
しおりを挟む
襲撃があってからというものダンジョン探索の授業は一旦停止された。
そして、学院は緊急の長期休暇としたのだ。
戸惑いながらも休みを満喫しようとする者と、何者かの襲撃に抗おうとする者に別れた。
リオンとバアル、そしてエリスとカーラ。この四人はとある喫茶店に集まっていた。重苦しい雰囲気で。
「なんか、オレは助かって良かったんだろうか。助かったことでまたみんなが危険な目にあうんじゃないかと思うと……」
「残念だけど、その可能性はあるね」
たしかにその可能性は一定の確率である。また狙いに来るんじゃないか。そして、狙いに来るならいつ来るか。
僕としては休みの間にもう一回くらい接触してくる気がしている。恐らく、学院が完全に対策する前に一度仕掛けてくるんじゃないだろうか。
そうなってくると、僕がこの前撃退しちゃってるからあっちも対策を来てくるはず。その時に僕一人で皆を守れるかはわからない。というか自信がないだけなんだけどね。
「今回はリオンくんのおかげで助かった。まずは、有難う」
「ううん。友達が連れて行かれそうになったら助けるよぉ。いくら目立ちたくなくてもね」
正直な気持ちを打ち明けた。
目立ちたくない。でも、僕は友達を見捨てることは絶対にしない。
もちろんデームくんのことも諦めたわけではない。
仕送りが送れなくなるだろう。デームくんの家族は大丈夫だろうか。
デームくんの安否と、それが気になっている。
「ねぇ。私達に何かできないかな?」
「ウチ……何もできなかった」
みんな襲撃を受けた時に自分の無力さに気が付いたのかもしれない。
僕は前世の時に自分の無力さを嘆いたものだ。
何を言われても言われるばかり。
そのままこの世界へと来てしまった。
だけど、この世界で両親はとても温かく、愛情を持って育ててくれた。
丁寧に僕を強くなるように導いてくれた。
天才と言われているが、僕は父と母の教え方がよかったのだと思っている。
体術、剣術、刀術は父に、魔法は母から教えてもらった。
そして、そのすべてを実践で使えるように昇華させてくれた師匠が存在する。実はこの王都にいるんだ。まだあっていなかったが、これはいい機会だから皆と一緒にあってお願いしよう。
「自分で身を守るのが一番いいと思うんだ。僕も四六時中一緒にいれるわけではないから」
「うん。そうだよね。でも、私たちは……」
「弱いよね。でも、今はまだでしょ?」
「これから強くなると良い。お願いしようと思っている人がいるんだ」
僕のその答えに三人は目を丸くした。
初耳だと言いたげな顔。
そうだよ。僕言ってないもの。
「今から、しばらくの期間予定ある?」
三人は一斉に首を横に振った。
その後、カフェを出る。
行先は、王都のはずれにあるボロアパートだ。
僕が無言で歩いていくと三人は神妙な面持ちで僕の後をついてくる。これからお願いするあの人なら強くしてくれる。
朽ち果てそうな階段を上り、上った先の一つ隣の部屋をノックする。
「ちょっとお願いがあり、きましたー!」
少し待つが静かなままだ。
はぁ。あの人いつもだからなぁ。
まったく。少しは控えればいいものを。
玄関を開ける。鍵はしまっていない。中へ向かって再び声をかける。
「オロチさーん! いーまーせーんーかー!?」
「あ゛ーーーー! うるせぇ! 頭に響く!」
部屋の奥からは髪の長いボサボサのおじさんが歩いてきた。
「まーた、酒飲み過ぎたんですか?」
「うるせぇ! お前に関係ねぇだろ!」
「話があってきました。この前、襲撃を受けたんですよ。学院の先生が言うには超過激派組織、人外魔境ですって」
そこまで言うと目を細くしこちらを見つめた。
「何狙いかわかってんのか?」
「僕の友達のバアルくんです。学院の首席なので狙われたようです。次席は連れていかれました」
実はデームくんは次席だったりする。
「ほぉぉおん。奴らは遂に学院生にまで手を出し始めたわけだなぁ」
「何か知っているんですか?」
さすが師匠。もう奴らの情報を得ていたんだ。
「いや、しらん」
「なんなんですか? 知ってる感じ出しましたよね?」
「アイツらの狙いなんて知るか。大方、組織の人員を補給してるんだろうよ」
「なんでそんなことするんです?」
「あぁ? 俺様が人員削ってるからじゃねぇか?」
この人はそんなことをしていたのか。
それもギルドからの依頼なんだろうけど。
本当にすごいんだかなんなんだか。
あれは相当な手練れだった。
僕も得物がなければきつかったかもしれない。
「あのさ、リオンくん。誰かな? このお酒臭い人は?」
「あっ! 説明がまだだったね。この人は僕のお師匠様でオロチさんです!」
「「「宜しくお願いします」」」
バアルくんに聞かれたのでそのままを紹介してみる。
すると、オロチさんは顔をしかめた。
「なぁにがよろしくなんだよぉ? あぁ? リオン」
「僕の友達を鍛えてあげて欲しいんです!」
「お前は俺のやり方を知ってるだろう? こいつらがついていけるとおもうかぁ?」
「ついていけます! みんななら根性あるんで」
僕が信じてみようと思う。
「僕は人に教えるとかはできません」
「お前口下手だからな」
「はい! そこで、です」
「俺の登場だと」
「そういうことです。忙しいと思いますが。強くしてあげてもらえませんか?」
「はぁぁ。仕方ねぇなぁ」
「有難う御座います!」
ここからはオロチさんに任せよう。
「だたよぉ、毎日酒買ってこいよ?」
この人は本当にもう。
そして、学院は緊急の長期休暇としたのだ。
戸惑いながらも休みを満喫しようとする者と、何者かの襲撃に抗おうとする者に別れた。
リオンとバアル、そしてエリスとカーラ。この四人はとある喫茶店に集まっていた。重苦しい雰囲気で。
「なんか、オレは助かって良かったんだろうか。助かったことでまたみんなが危険な目にあうんじゃないかと思うと……」
「残念だけど、その可能性はあるね」
たしかにその可能性は一定の確率である。また狙いに来るんじゃないか。そして、狙いに来るならいつ来るか。
僕としては休みの間にもう一回くらい接触してくる気がしている。恐らく、学院が完全に対策する前に一度仕掛けてくるんじゃないだろうか。
そうなってくると、僕がこの前撃退しちゃってるからあっちも対策を来てくるはず。その時に僕一人で皆を守れるかはわからない。というか自信がないだけなんだけどね。
「今回はリオンくんのおかげで助かった。まずは、有難う」
「ううん。友達が連れて行かれそうになったら助けるよぉ。いくら目立ちたくなくてもね」
正直な気持ちを打ち明けた。
目立ちたくない。でも、僕は友達を見捨てることは絶対にしない。
もちろんデームくんのことも諦めたわけではない。
仕送りが送れなくなるだろう。デームくんの家族は大丈夫だろうか。
デームくんの安否と、それが気になっている。
「ねぇ。私達に何かできないかな?」
「ウチ……何もできなかった」
みんな襲撃を受けた時に自分の無力さに気が付いたのかもしれない。
僕は前世の時に自分の無力さを嘆いたものだ。
何を言われても言われるばかり。
そのままこの世界へと来てしまった。
だけど、この世界で両親はとても温かく、愛情を持って育ててくれた。
丁寧に僕を強くなるように導いてくれた。
天才と言われているが、僕は父と母の教え方がよかったのだと思っている。
体術、剣術、刀術は父に、魔法は母から教えてもらった。
そして、そのすべてを実践で使えるように昇華させてくれた師匠が存在する。実はこの王都にいるんだ。まだあっていなかったが、これはいい機会だから皆と一緒にあってお願いしよう。
「自分で身を守るのが一番いいと思うんだ。僕も四六時中一緒にいれるわけではないから」
「うん。そうだよね。でも、私たちは……」
「弱いよね。でも、今はまだでしょ?」
「これから強くなると良い。お願いしようと思っている人がいるんだ」
僕のその答えに三人は目を丸くした。
初耳だと言いたげな顔。
そうだよ。僕言ってないもの。
「今から、しばらくの期間予定ある?」
三人は一斉に首を横に振った。
その後、カフェを出る。
行先は、王都のはずれにあるボロアパートだ。
僕が無言で歩いていくと三人は神妙な面持ちで僕の後をついてくる。これからお願いするあの人なら強くしてくれる。
朽ち果てそうな階段を上り、上った先の一つ隣の部屋をノックする。
「ちょっとお願いがあり、きましたー!」
少し待つが静かなままだ。
はぁ。あの人いつもだからなぁ。
まったく。少しは控えればいいものを。
玄関を開ける。鍵はしまっていない。中へ向かって再び声をかける。
「オロチさーん! いーまーせーんーかー!?」
「あ゛ーーーー! うるせぇ! 頭に響く!」
部屋の奥からは髪の長いボサボサのおじさんが歩いてきた。
「まーた、酒飲み過ぎたんですか?」
「うるせぇ! お前に関係ねぇだろ!」
「話があってきました。この前、襲撃を受けたんですよ。学院の先生が言うには超過激派組織、人外魔境ですって」
そこまで言うと目を細くしこちらを見つめた。
「何狙いかわかってんのか?」
「僕の友達のバアルくんです。学院の首席なので狙われたようです。次席は連れていかれました」
実はデームくんは次席だったりする。
「ほぉぉおん。奴らは遂に学院生にまで手を出し始めたわけだなぁ」
「何か知っているんですか?」
さすが師匠。もう奴らの情報を得ていたんだ。
「いや、しらん」
「なんなんですか? 知ってる感じ出しましたよね?」
「アイツらの狙いなんて知るか。大方、組織の人員を補給してるんだろうよ」
「なんでそんなことするんです?」
「あぁ? 俺様が人員削ってるからじゃねぇか?」
この人はそんなことをしていたのか。
それもギルドからの依頼なんだろうけど。
本当にすごいんだかなんなんだか。
あれは相当な手練れだった。
僕も得物がなければきつかったかもしれない。
「あのさ、リオンくん。誰かな? このお酒臭い人は?」
「あっ! 説明がまだだったね。この人は僕のお師匠様でオロチさんです!」
「「「宜しくお願いします」」」
バアルくんに聞かれたのでそのままを紹介してみる。
すると、オロチさんは顔をしかめた。
「なぁにがよろしくなんだよぉ? あぁ? リオン」
「僕の友達を鍛えてあげて欲しいんです!」
「お前は俺のやり方を知ってるだろう? こいつらがついていけるとおもうかぁ?」
「ついていけます! みんななら根性あるんで」
僕が信じてみようと思う。
「僕は人に教えるとかはできません」
「お前口下手だからな」
「はい! そこで、です」
「俺の登場だと」
「そういうことです。忙しいと思いますが。強くしてあげてもらえませんか?」
「はぁぁ。仕方ねぇなぁ」
「有難う御座います!」
ここからはオロチさんに任せよう。
「だたよぉ、毎日酒買ってこいよ?」
この人は本当にもう。
323
お気に入りに追加
778
あなたにおすすめの小説
追放されたら無能スキルで無双する
ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。
見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。
僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。
咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。
僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!
異世界悪霊譚 ~無能な兄に殺され悪霊になってしまったけど、『吸収』で魔力とスキルを集めていたら世界が畏怖しているようです~
テツみン
ファンタジー
『鑑定——』
エリオット・ラングレー
種族 悪霊
HP 測定不能
MP 測定不能
スキル 「鑑定」、「無限収納」、「全属性魔法」、「思念伝達」、「幻影」、「念動力」……他、多数
アビリティ 「吸収」、「咆哮」、「誘眠」、「脱兎」、「猪突」、「貪食」……他、多数
次々と襲ってくる悪霊を『吸収』し、魔力とスキルを獲得した結果、エリオットは各国が恐れるほどの強大なチカラを持つ存在となっていた!
だけど、ステータス表をよーーーーっく見てほしい! そう、種族のところを!
彼も悪霊――つまり「死んでいた」のだ!
これは、無念の死を遂げたエリオット少年が悪霊となり、復讐を果たす――つもりが、なぜか王国の大惨事に巻き込まれ、救国の英雄となる話………悪霊なんだけどね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
憤怒のアーティファクト~伝説のおっさん、娘を探すために現役に復帰し無双する~
ゆる弥
ファンタジー
溺愛していた娘は五年前に探索者として家を出た。
毎日無事を祈っていたが、まさかこんな事になるとは。
消息不明になった娘は俺が探し出す。
現役時代、伝説の探索者であったおっさんの愛娘を捜索する旅が始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる