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11.食堂での攻防

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 午前の座学が終わったため、お昼の時間になった。

「皆お昼は?」

 気を使ってバアルくんが聞いてくれた。

「僕は、食堂かな……バイトしなきゃ」

「私もー! なんでバイト?」

「学費を出してもらったんだけど、生活費くらいは自分で稼ごうかなって」

「えらーい! 私は親から仕送り来るからいいんだぁ」

 エリスちゃんは可愛がられてそうだもんね。
 僕も可愛がられてはいるんだけど、なんだか、申し訳ないんだよね。

「リオンくんは偉いなぁ。オレも親から貰えるからいいやって思ってたんだけど」

 バアルくんは頭を掻きながらそう口にした。
 いや、いいと思うんだよね。
 なんだろう。なんか遠慮しちゃっている自分がいる。

「なんか自由に使えないというか。自分のお金ではないから……」

「んー。たしかにねぇ。でもさ、この学院に入ったってことは、将来はダイバー目指すんでしょ? 配信でいっぱい稼げばいいじゃん!」

「えっ? この学院てダイバーになるために入るんだっけ? 他の職業ダメなの?」

 暫くの二人の沈黙が流れる。

「ふふふっ」
 
「ぷっくくくっ」

「「アハハハハッ!」」

 二人に大笑いされてしまった。

「なんの為の学院だと思ってたの? おっかしー!」

「いや、父さんに行っておいた方がいいって言われて……」

「だから来たんだ! 素直か!」

 ダイバーになる為の学院だったのかぁ。だったら配信とかして稼ぐことになっちゃうじゃん。なぜここを勧めたのだ。父よ。

 目立つの嫌いだって知ってたのに。
 でも、だからこそかな。
 少し世間を見て来いってことなのかな。

「ダイバーって基本はダンジョン探索で稼ぐんだよね?」

「そうよ。宝箱狙うか、最下層までの攻略を目指すか、タイムを狙うか!」

「攻略はダンジョンコアを取る」

「そう! それでそのダンジョンは消えるわ。コアを換金。タイムは到達する速さを競う。それはお金が掛けられているわ」

 どこまでいっても目立つこと間違いなさそうだなぁ。

「今のってテストにも出たよね?」

「出たっけ?」

 僕は覚えていなかった。横にいたバアルくんを見ると笑い転げていた。

「ひぃー。面白すぎるー。リオンくん、難問しか解いてないから簡単な問題覚えてないんじゃないの? プッハハハッ!」

 あーそう言われればそんな問題もあったような、なかった様な。まぁ、いっか。

「何食べる?」

 僕が問うとエリスさんはサラダを指さした。

「私、あれとってくる!」

「オレはカリーにしようかな」

 カリーとかもあるんだ。凄いなぁ。勇者様様だ。

「僕は、パストにしようかな」

 なんでパスタはパスト。ラーメンはルーメンでちょっと似てるけど違う言葉なんだろう。それはいつも疑問なんだよね。

 調理場から受け取ると席を探す。
 手を振っているエリスさんがいた。
 なんか注目されてる。

 そりゃあれだけの美少女だもんね。
 注目されない方がおかしいか。
 違う席に座ろうかな「どこ行くの?」後ろからガッシリとバアルくんに掴まれた。

「いやー。なんか違う席の方が……」

「エリスさん、泣くよ?」

「うぅ……」

 こっちが泣きたいよ。
 こんなに目立つなんて。
 めちゃくちゃ見られてるじゃん。

 席に着くとエリスさんに睨まれた。
 うぅ。わかってるよ。ごめんて。

「なんで違う方、行こうとしたの!?」

「えっ? いやーなんか……目立ってたから……」

「ねぇ、もう言っちゃうけどさ、リオンくんさ、自分が一番目立ってんだからね!?」

「えっ?」

「えっ? じゃなくて! 自分が目立ってるの!」

「そんなわけないよ。こんな目立たない格好してるのに。さぁ食べよう」

「はぁ。ダメだこりゃ」

 そんなわけないじゃないか。
 僕があなた達より目立ってるなんてあるわけがないんだから。

「まぁ、まぁ、いいんじゃない? 自分では目立ってないって思ってるならさ?」

「いいけどさぁ、私達ばっかり目立ってるっていうのは、違うじゃん!」

 バアルくんが上手く収めてくれることを願おう。
 僕は、もうすすり始めたから終わるまでは止まらないよ。

「まぁ、でも、事実ではあるじゃん?」

「そうだけど……むー」

 口をムーとしてこちらを睨んでいるエリスさん。その顔も可愛いから眼福なんだけどね。
 その可愛い顔が目立たないわけがない。

 黙々とこちらを見ながらサラダを食べているエリスさん。なんだか恐いんですけど。何かされそうなそんな気が。

「ほっ!」

 エリスさんが手で僕の前髪を上げようとしたようだ。スウェーでかわす。そんなの通用しないよ。

「くそー。ダメか」

「プッ! エリスさん、流石にさ、リオンくん相手に力づくは無理があると思うよ?」

「んー。そうよねぇ。素顔見せてくれないしなぁ」

「だってオレは同じ部屋だけど、部屋から出てくる時、いつもこの格好だもんね。ブレない」

 だって。ちゃんとセットしてから部屋を出てるもんね。万が一見られたら大変だから。

「待つしかないかぁ」

「そう。オレたちは待つしかない」

 何を待ってるんだろう?
 僕空気になっちゃってたから分かんないや。
 このミートソースパスト美味しいなぁ。

 学院の食堂ってこんなに美味しいんだねぇ。
 カリーも期待できるな。
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