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5.女の子の依頼

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「ふあ~ぁぁ。よく寝たぁ」

 伸びをして起きたミリアは色々とはだけているが、見ないように顔を明後日の方向に向ける。

「ナイルも寝てたの?」

 コクリと頷く。

「スケルトンも寝たりするんだねぇ。いがぁーい! 今日は依頼を受けるぞぉ!」

 意気込んで準備を始めた。
 襲撃があったことには気づいてないみたいだな。
 よかった。

 宿を出る時に「こんな染みあったかな?」なんて話していたが、バレなかったようだ。

 早速ギルドに行くと静まり返っていた。
 なんでも、奴らが捕まって罰する為に調査をしていたら色んな悪事が出てきたとかなんとか。

 もう冒険者には復帰できないだろうとのこと。
 良かった良かった。
 もう会うこともないだろう。

「依頼を見よう!」

 初めて依頼を受けるミリアは何がいいかなぁとルンルンで選んでいる。

「お願いします! お母さんを助けて!」

「報酬がこれでは依頼を出せないんです。ごめんなさい。最低でも銅貨はないと……」

 なんだか少女がお困りのようだ。
 けど、依頼に出すには報酬が足りないと。
 まぁ、冒険者も生活がある。
 だれもうけな──────

「どうしたの? 私が受けるわ!」

「ミリアさん!?」

 ギルドの受付嬢は驚きを隠せない。
 そりゃそうだ。依頼受けるの初めてだもんな。

「アンさん。私が依頼を受けます!」

 あの受付嬢、アンっていう名前だったんだ。
 ってそうじゃない。
 なんだって? 依頼を受ける?
 なんの依頼かもわかんないのに!?

「お姉ちゃん、お母さんを助けてくれるの?」

「えぇ。まず、何からお母さんを助ければいいのかな?」

「あのね、段々石になっちゃう病気なの」

 なるほど。
 石化病か。
 そうなると……。

「お医者さんには見てもらった?」

「うん。でも、治らないって言われたの」

「どういう事?」

「せきかびょう? は、治すにはアンガー山の山頂に生えてるミストン花が必要なんだって。でも、山頂にはグリフォンがいて……それを取るにはお金が沢山必要なんだって……」

 そういう事か。
 前世の知識から行くと、グリフォンは恐らくAランク。
 Aランクに頼んでその花をとるとなると、金貨は必要だな。

 かなり割に合わないぞ?
 やめた方が──────

「大丈夫! 私のテイムモンスターは最強なんだよ? 心配しないで!」

「ホント? お姉ちゃん、助けてくれるの?」

「えぇ。もちろんよ! 任せなさい!」

 胸を張って自信満々に言い放つミリア。

「ミリアさん、石化病だと発症から、もっても一週間ですよ? 進行状況によっては五日もつかどうか」

 アンが冷静に今の状況をミリアに説明している。
 それをわかっていない訳では無いんだろう。
 でも、微塵も不安な顔は見せない。

「うん。急がないとね! あなたは、家でお母さんの看病をしてあげて? 元気づけてあげるんだよ!?」

「うん!」

「家はどこ? 薬が出来たらすぐに持っていくわ!」

「ここを出て左手のパン屋さんの隣!」

「わかったわ。じゃあ、準備して行ってくるわ」

「うん! お姉ちゃん、お願いします!」

「任せなさい!」

 胸をトンッと叩いてニコニコしている。
 不安は微塵もないのだろうか。
 凄いな。ミリア。

 子供がギルドを出ていくと。
 力が抜けたようにフニャフニャと床に膝を着いた。

「ねぇ。ナイル、グリフォンに勝てる? あんなこと言っちゃったよぉ。どうしよう」

 そうなっちゃうのか。
 カッコイイなと思ったのに。
 自信持てよ。

 ミリアの肩を叩き、サムズアップする。

「大丈夫ってこと!? ホントに!?」

 コクリと頷く。
 前世では俺は敵無しだった。
 グリフォンも討伐したことはあるし、どうにかなる……と思う。

 まぁ、後はこの体と剣がどこまでもつかなんだよなぁ。
 昨日の夜の身体強化が使えればいける気がする。

 後はそれまでになるべくスキルで体を頑丈にすることだな。
 この体のレベルを上げながらアンガー山を目指そう。

 「うぅぅぅ。ナイルありがとうぅぅ」

 俺にすがりついてくる。
 勢いで言っちゃうタイプなんだな。
 頭を思わずなでなでしてしまった。

「スケルトンには流石にグリフォンは荷が重いのでは?」

 アンが心配そうに聞いてくる。

「うちのナイルは強いので大丈夫です! ご心配ありがとうございます!」

 頭を下げるとギルドを出ていった。
 後を追う。

「まずは、回復薬を買おう。お金ないから一本しか買えないけど……ごめんね。ナイル……」

 コクリと頷く。

 別に無くてもいいんだけどな。
 ダメージを食らう気は無い。
 グリフォンがそんなに強かった覚えがないからなぁ。

「あとは、魔力回復薬を買っておこう。ナイルって、魔力で動いてるんでしょ?」

 コクリと頷いて感心する。
 俺でさえわからなかったのに、ミリアは知ってたのか。
 流石はテイマーだな。

「だよねぇ。テイムできるようにモンスターの勉強は頑張ってたんだぁ!」

 そういう事か。
 俺はミリアを頼りにしてるよ。
 だから、俺のことも頼ってくれていい。

 俺は、ミリアを最強のテイマーへと押し上げてやる。
 共に駆け上がろう。
 誰にもミリアは傷つけさせない。

「よしっ! 準備はオッケー! アンガー山へ出発! 時間が無いからね!」

 コクリと頷くと。
 街を出てアンガー山へ向かうのであった。
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