最弱テイマーは魔物の王と無双する

ゆる弥

文字の大きさ
上 下
68 / 69

68.黒幕

しおりを挟む
 フロア一面に人がウジャウジャいる。

「うーわ。なんじゃこりゃ!」

 目を凝らすと奥に偉そうに立っている奴がいる。

「お前達何しに来た!? 俺の城をめちゃくちゃにしやがってぇぇぇ!」

「はっはっはっ! お前達が気に入らないから来たんだよ! お前の部下に襲われて困っててなぁ!」

「そりゃあご苦労だったな! でも、俺にはこんなに動かせる駒がいる!」

 よく見ると男は仮面をしていた。
 正体を知られたくないのだろうか。

「じゃあ、本体は弱いのか?」

『あれ? どこかで聞いたセリフだねぇ』

「はっ! 翔真さんじゃないですか!」

「あぁ。確かに……一斗さん、おねしゃす!」

「はーい!……雷・撃・波!」

ブーーーンッバリバリバリバリッ

 黒幕に向かって行く。
 その射線を駆け抜ける。

 切っ先を向け太刀を引き絞り突撃する。

「絶孔!」

 切っ先がピタリと止まる。

「グッ!」

 切っ先を押そうとするがビクともしない。

「教えてやるよ。お前もテイマーだろう? なんでそこまで強いのかは分からねぇが、俺は弱い魔物しかテイム出来ない。が、万に近い数の魔物を従えている。あとは、分かるだろ?」

「人魔一体の効果か……」

「はっはっはっ! そうだ! 一体の魔物のステータスは1でも万集めれば恩恵は巨大だ!」

「しかし、ステータスには制限が……」

「あぁ、まだだったのか……それは残念。レベル50になれば分かることがあるだろうが、お前はここで死ぬ」

 切っ先を掴んだまま引っ張られ、ぶん殴られる。

ドゴォォォォッ

 顔に来る激痛。
 その後は気が付くと宙を舞っていた。
 体制を整え着地する。

『翔真! 大丈夫? 力で負けた!?』

「どうなってるんですか?」

「わからねぇが、テイマーでステータスが上らしい……」

『コイツら倒せば……』

「アッハッハッハッハッ!」

 話し合っていると突如黒幕が騒ぎ出した。

「絶望したかぁ!? 絶望した顔を見るのが楽しいんだよぉ!」

「はっ!」

 鼻で笑ってやった。

「俺はなぁ、親が死んだと言われた時に絶望でどん底に落ちたんだよ! それからは蘇芳に出会い、いい事尽くしだ! こんな事で絶望してたまるかぁ! 俺達は最強だぁぁ」

 魔力を爆発させ身体に纏う。
 周りの従者が押し寄せてきた。

「ふーっ。かかってこい!」

『今回ばっかりは僕も手伝うよ』

 2人で横に並ぶ。

「一斗は後ろに控えてろ。1人も通さねぇ」

『さっ、やってやろう』

「『おぉぉぉぉぉぉぉ!』」

 魔力を乗せた右拳を振るう。
 2、3人巻き込んで吹き飛んでいく。
 どこぞのヤンキー漫画のように人が舞う。

「はっはっはっ! やってしまえお前達!」

 次々来る輩を全て打ち砕く。
 起き上がってくる者はいない。
 その意味を黒幕は理解していなかった。

 ワンフロアの人混み等20分も2人で殴り続ければ片付くのだ。

「さぁ、後はお前の周りのヤツだけだぞ?」

 すると、俺の後ろを指差して声を上げた。

「おい! 真仲! こいつら殺れ!」

 微動だにしない父さん。

「動けないなら無理矢理にでも!…………ん? なぜ接続出来ない!」

「お前の考えそうなことはわかるんだよ! 先に魔物だけ始末した!」

 驚いた表情になったが、頭を掻き出す。

「どいつもこいつもくそがぁぁぁぁ!」

 地団駄を踏み、こっちに向かってくる。

「直々に相手してやるよ! おらぁぁ!」

 殴りかかってきたのを何とか避ける。
 カウンターに震撃を放つ。
 が、聞かない。

「無駄ァァァァ!」

ドゴォォォ

 ボディーブローが効くじゃねぇか。
 くっそ!

 口から血が出る。
 内蔵を傷つけたようだ。

「ほら! やっちまえ!」

 横にいたやつにトドメをささせようとする。
 剣を振りかぶってきた。

 そんなトロイのが当たるかよ!

「ウラァァァァ」

 バギャッッ

 襲ってきたやつを返り討ちにする。

――――――――――――
レベルアップ確認。
ステータスが上昇します。
最大レベル50に到達。
新たな能力を付与。
――――――――――――

 突如力が漲ってきた。
 魔力が爆発する。

 ブワァッと魔力が広がる。

「な、なんだその魔力は!?」

「なんだか分からねぇが、力が漲ってきたぜぇぇぇぇぇぇぇ」

「くそぉぉ!」

 殴りかかってきた拳を掴む。

「な、なぜだ! 俺の方がステータスが高いはず!」

「おれと、蘇芳を舐めんじゃねぇぇ!」

 全体重と魔力を乗せた拳を叩きつける。

「絶拳(ぜっけん)」

ズドォォォォォォォォォォンッッッ

 黒幕が全身から血を吹き出し倒れる。
 黒い魔物が身体中から出てくる。

「えぇぇ。気持ち悪い」

『ホントだぁぁ』

「これは気持ち悪いですねぇ」

 不思議に思っていた仮面を取る。
 …………だれ?

「えっ!? だれ?」

 見たことない人の顔であった。

「コイツは……」

「あぁ。父さん、知ってるの?」

「コイツは、テイマーだからと昔から馬鹿にされてた見たいでな。虐められてたのを見かけた時に母さんが助けてあげたんだ」

「ん? もしかして、だから捕まえて傍に置いてた……的な?」

「そうかもな。自分が優位に立ちたかったんだろうな」

「俺もテイマーだけどな……こんなに違うとは……俺は恵まれてたんだな」

「翔真がテイマーなんて知らなかったぞ!」

「そりゃ、いなかったからね!? っつうか、、早く助けに行こう!」

 奥の部屋に駆けて行き扉を開けようとすると鍵が閉まっていた。

「俺が壊すよ!」

ガチャ

 あれ?
 開いた?

「どうしたの? 騒がしいわねぇ」

「母さん!」

「ゆめ! 大丈夫か?」

「あら? 優真。……ん? 翔真!?」

 母さんが驚いているが、それ以上に驚いているのはこちらである。

「えっ? なんで? なんともない?」

「あの子は丁重に扱ってくれていたわよ?」

「そうだったのか……やはり助けたから……」

「そうかもね。いつも私にお礼を言ってくれていたわ」

 なにがしたかったんだ? アイツは……

「復讐……か?」

 父さんが思い立ったように言うと。

「そうかもしれないわね。皆を見返したかったんじゃないかしら?」

「いやー、しかし、翔真に助けられるとはな! テイマーなのにどうしてそんなに強いんだ?」

「それは、この! 蘇芳をテイムしたからです!」

「この方は魔物なのか?」

 コクコク頷く蘇芳。

「言葉が分かるのか?」

「俺は普通に会話できるけどね。あとは、許可した人となら心と言葉を共有できるんだよ。蘇芳は魔物の王なんだ」

「王だと?」

「そう。だから、魔物から俺への恩恵が凄いんだ。だから勝てたんだろうな……そういえば、最後の能力って……」

――――――――――
人魔一体
感覚共有
魔力共有
身体共有
魔物眼
限界突破
――――――――――

「あぁ。だからか……」

『僕もね、ステータス凄いことになってたけど、翔真もっと凄いんじゃない?』

「見ない!」

『なんで?』

「見ません! これ以上化け物扱いされたくない!」

「翔真さん、もしかしなくても、能力閉じても人外能力じゃないですか?」

 耳を塞ぐ。

「聞きたくない! 俺は人間なの!」

「「ははははっ!」」

 両親が腹を抱えて笑っている。

「翔真、良い仲間が出来て良かったな!」

「素敵な仲間ね?」

「うん。最強の仲間だよ? じゃあ、磐当領に帰ろう!」

「久しぶりに帰るか!」

「そうね!」

 まだいた残党を始末しながら塔を下る。
 うちの両親、ほんとに強かった。
 さすがRランク。

 こうして救出作戦は終わりを迎えたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...