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65.月のリゾート

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 月のリゾートに着いてみると門構えから素晴らしい。
 中に入ってみると夜の月をイメージしているのだろうか。間接照明で月明かりのようなくらいの明かりしかない。

 受付に向かう。

「すみません。とりあえず1泊泊まりたんですが……」

「畏まりました。空いてるお部屋が月明かりのお部屋と、妖精達のお部屋が空いておりますがどちらになさおますか?」

「すみません。初めてなので、値段とどんな部屋なのか聞いていいですか?」

「これは、失礼したしました。月明かりのお部屋はこの旅館のコンセプトを最大限発揮したお部屋になっておりまして、間接照明で月明かりが再現されているのと専用のお風呂付きでございまして、月明かりがお楽しみいただける露天風呂となっております。価格はお一人様86万円となっております」

「へぇ。それは興味あるな」

『意外と安いね?』

「えぇ? や、安いですか?」

「もう一部屋も説明して頂いていいですか?」

 説明を促すと快く引き受けてくれた。

「はい。勿論でございます。妖精達のお部屋と言うのは、小さい一人部屋が3部屋や2部屋と転々と密集してる作りになっておりまして、真ん中は共有のスペースがあるという形のお部屋になっております。お風呂は付いてはおりませんが、1階にある大浴場がご利用いただけます」

「なるほど……あの、月明かりの部屋にしても大浴場って入っていいんですか?」

「はい。勿論でございます」

「それなら、月明かりの部屋でお願いします」

「ありがとうございます。では、こちらがカードキーになります。お部屋にご案内致します」

 廊下を歩いていく宿の人。
 1番奥の部屋の扉で止まり。

「こちらになります。ごゆっくりどうぞ」

 ドアを開けてくれて中に入る。
 優しい光が天井から降り注いでいて少し暗い感じであった。
 トイレ、洗面とあって扉を開けた先には広い空間が広がっていた。

「おおぉー! すげぇ広い!」

「凄いですね! これは流石にあの値段だけあるわ」

『一斗? そういう話は野暮だよ?』

「そうだぞ? ああぁぁぁぁ。疲れた」

 ソファーに沈みこんでダラケてしまう。

「凄いですよ! 冷蔵庫パンパンに入ってますよ!」

「お部屋の説明をさせて頂きますね?」

 入口から宿の人がやって来た。

「あっ! すみません! すっかり寛いじゃって……」

「いいんですよ。このお部屋は冷蔵庫の飲み物は飲み放題になっておりますし、足りなくなった場合や何かご要望がある場合はロビーに連絡頂ければお持ちします。その場合も料金はかかりません。お食事はこの部屋にお持ちして宜しいですか?」

「お願いしまーす!」

「畏まりました。お風呂は源泉かけ流しの湯になっておりまして、何時でも入っていただけますので、是非ご利用ください」

「翔真さん! 何回でも入れますね!」

「だな! ……はしゃぐなよ!」

「構いません。では、以上になります。ごゆっくりお過ごしください。夕食ですが、19時になりますが、昼食はお済みですか?」

 今が13時40分と微妙な時間、そして解放者であると言うことから気にかけてくれたのだろう。有難い。

「実は昼食まだなんですけど、貰えたりしますか?」

「はい。可能でございます。こちらがメニューになっておりますが何になさいますか?」

 メニューを見るとラーメン等の中華や、パスタ、ハンバーグ等の洋食、焼き魚定食や、生姜焼き定食等の和食がある。

「えっ。何でもあって迷う……」

「どの料理もその道のプロのシェフが担当しておりますので、自信を持ってお出ししています」

「なるほど……」

 しばらく考えると。

「自分、渡り蟹のクリームパスタとサラダがいいです!」

「俺は、鮎御膳にしようかな」

『僕は焼きそばがいい!』

「あっ、コイツは焼きそばをお願いします!」

「畏まりました。少々お待ちください」

 下がっていく宿の人。
 宿の人って……名前分かんないもんな。

「ギルドが勧めるだけあるな?」

「でもさ、ここまで高い部屋に泊まると思って無いんじゃないですか?」

「だろうな。俺達が前に結構稼いだことは知らないだろうからな」

『なんか、そういうのってギルドで共有したらいいのにね?』

「たしかにな」

 そんな雑談をしていると料理が運ばれてきた。

「「『いただいます!』」」

 鮎御膳がこれは豪華だった。鮎の塩焼きや鮎ご飯、鮎の甘露煮等など。正しく鮎づくしであった。

 塩焼きを1口口に運ぶと押し寄せる鮎の香りと身の甘みそして塩味。最高に美味しい。

「「『うっまっ!』」」

 3人で顔を見合わせる。

「「『これ、マジで美味い!』」」

 声がハモる。
 それ程どの料理も美味しいということだろう。
 いや、ここでほんとに良かった。
 幸せだわ。

 あっという間に食べ終わってしまう。
 ソファーに横になる。
 蘇芳は窓際で椅子に座る。
 一斗はベットに飛び込んでいる。

コンコンッ!

「はっ!」

 と起きると辺りが暗くなっている。

 やべっ!
 気持ちよすぎて寝てた?
 周りを見ると目を擦っている蘇芳。
 一斗に、いたっては寝ている。

「夕食をお持ちしました!」

「はぁーい! ありがとうございます!」

 受け取りに行くと豪華な舟盛りと鮎の天ぷら、唐揚げ、海老天等など。
 沢山の料理が並ぶ。

 そう言われれば腹減ってきたわ。
 テーブルに次々と料理が並んでいく。

「飲みの物は何になさいますか?」

「ビ─────「『ビールで!』」」

「はぁ。ビール3つでお願いします」

「はい! 畏まりました」

 少し待つと持ってきてくれたようだ。
 乾杯しようかな?

「では! 月のリゾートにカンパーイ!」

「『カンパーイ!』」

 夕食に舌鼓を打つ。
 ホントにどれを食べても美味しいのだ。
 あっという間に食べ終わる。

 露天風呂に入ることにした。
 外を見ると普通の大浴場の露天風呂の広さくらいある。

 部屋の中で服を脱ぎ外に出る。
 恐る恐る足を入れてみる。
 ちょっと、暑いが平気だ。
 
 全身をつかり上を見ると木々の間から月明かりが見えている。

「凄いもんですねぇ」

「だなぁ。こりょいい眺めだわ」

『これ、最高じゃない? しばらく泊まりたい』
 
「あぁ。でも、あんまりゆっくりしていってもなぁって焦り始めてきたんだよなぁ」

「どうしてですか?」

「それがさ、最近謎のやつ現れねぇじゃん? なんか気味悪いかなって思ってな。どっかに潜んでると思うと……」

「たしかに! ……でも、この辺には居ないんじゃないですか?」

「そう上手く行くかな……」

『まぁ、少し英気を養ったら? 最近根詰めすぎじゃない?』

「そうだな。考えすぎかもな。少しゆっくりするか……」

 月明かりがすごく綺麗で身体の疲れを癒してくれる。湯の温度がちょうど良くてずっと入っていた。

「やべぇ。逆上せたかも」

『僕は逆上せるとかないけどあがろうかな』

「…………」

「一斗!?」

「はっ! 頭がぼーっとしてました」

「上がって冷たいもの飲もうぜ!」

 露天風呂から上がると冷蔵庫を開ける。

「ビールあるぞぉ! 何がいい?」

『僕焼酎がいいな』

「自分はワインがいいです!」

 それぞれで飲みたいものをいう。
 普通の旅館の冷蔵庫にはそんなにラインナップはない。しかし、この月のリゾートはあるのだ。

「すげぇ! 全部ある!」

『さすが! 麦焼酎だ! 氷ある?』

「ありますよ。自分は赤ワインがいいです!」

 それぞれ飲みたい飲み物を飲む。

「いやー。最高だなぁぁ」

「あっ、明日ギルド行くんですか?」

「なんで?」

「換金すんでませんよね?」

「おぉ。そうだな。まぁ、焦んなくてもいいんじゃね?」                                                                  

『まだここに居るってことだね!』 

「だなぁ。ここ天国だな」

 ベッドに飛び込むと即寝息をたててしまうのであった。                             
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